王子様に重めに愛されてます

朔月ひろむ

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第一章 出逢い

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今日だけと言いながら、その日の夜もリオネルに抱かれて一夜を過ごすことになってしまう。
昼は言われた通りに勉強し、夜はベッドを共にする。
そんの日々を数日繰り返してしまった。
「リオネル、今日はもうダメです」
明日は王城に行き、夜会に出席しなければならない。
さすがに今夜リオネルに抱かれては、明日一日過ごす体力がない。
それに首筋に散らばったリオネルの付けたアトもどのくらい消えるだろうか。
「……まあ、しょうがないよな」
リオネルは不服そうだ。
この顔に絆されて、リオネルが手を伸ばしてくるのを許したからユクシーは連日リオネルのベッドで寝ることになつたのだ。
今日こそは、そんな爛れた生活はしてはいけない。
それにユクシーはまだリオネルときちんと話し合えていない。
王城からの使者が来てから、ユクシーがリオネルときちんと話しをしようとする度にリオネルに手を出されて有耶無耶にされてきた。
見たくない現実からリオネルが逃げている証拠だ。
ユクシーだって、現実を直視したくなくて今日までズルズルと引き伸ばしてしまった。
でもタイムリミットはもうすぐだ。
「リオネル…明日からのことなんですが」
今日は明日の夜会の列席者に関する知識の復習とリオネルのダンスレッスンだけだ。
本当はユクシーもダンスレッスンをしなければいけないのだけれども、連夜の行為でとてもじゃないが踊れる状態ではない。
「僕は恐らく、兄から今後はどうするか問われると思います」
「どうする…って?」
リオネルが硬い表情になる。
きっとリオネルは、その立場から信頼した人間がコロコロと変わる状況に子供の頃から置かれ、ユクシーが彼の側から離れる可能性が怖くてしょうがないのだろう。
「僕達の関係です」
キッパリと言い切ったユクシーに、リオネルは怯えを見せる。
「リオネルは僕をどうしたいですか?」
「俺がユクシーを…?」
リオネルは世俗に疎い。
男の恋人や愛人の立場なんかほとんど理解していないだろう。
「リオネルは僕に愛妾の立場を望みますか?」
ユクシーがリオネルの恋人として表立って認められるにはそれしかない。
リオネルは愛妾を持つことは許されるだろう。
でもユクシーがリオネルの愛妾となれば、ただリオネルが帰ってくるのを一人寂しく待っておくしかない。
リオネルは学園を卒業して騎士の道に進む。
そうなれば、一年は実地訓練で自由がほとんどない生活を送る。
その後は恐らく王都で軍の幹部候補の道を歩むだろう。
そうなれば城に私室を持つ生活となる。
王子から城の私室に愛妾を住まわすことも可能だが、ユクシーはそこに囲うというのだろうか。
「僕に貴方の愛妾になれとお望みですか?」
もしリオネルがユクシーに愛妾にと望むなら、きっとユクシーは彼と共に歩めない。
ユクシーの母親のように、たまに夫が訪れるだけで働くことも茶会に出かけることも制限されてしまう生活なんて無理だ。

「ユクシーを愛妾に…なんて…」
愛妾という言葉がリオネルにはショックだったのだろう。
彼の母親は側妃としての称号は与えられているが、愛妾と変わりない非公式な存在だ。
「なんでそんなこと言うんだよ!?俺がユクシーを愛妾にするわけないだろ!!」
「怒らないで下さい。確認したかったんです」
愛妾という立場は、自分達の母親を見れば幸せとは言えないものだ。
そんなこと、ユクシーだってリオネルだってわかっている。
「でも…そうなのか。俺の側にいるっていうことは…」
突きつけられた現実にリオネルが項垂れる。 
「気落ちしないで下さい。ただ、リオネルの気持ちを知りたかった」
リオネルが愛妾として側にいて欲しいと思うなら、ユクシーは何もできない。
リオネルがユクシーを愛妾に望まないところから、話を始めなければ。
「僕が愛妾以外でリオネルの側にいる方法はあるんです」
ケイセルが手紙を寄越した時は、恐らく二人の関係はわかっていなかったはずである。
それでも今後のことを匂わせてきたのは、すでにこの先のユクシーの進路をある程度選択肢を絞っているに違いない。
「でもそれは家と相談しなければならないことです。僕がどうするかはリオネルの気持ちを聞いてから決めたかった」
リオネルが愛妾を望むのか、学園でのような世話役を望むのか。
ただ、普通の恋人同士として過ごすには立場が違い過ぎる。
ユクシーがこの任を解かれてしまえば、ユクシーからリオネルに会うことは難しくなる。

「僕は…リオネル以上に社交界から遠ざかっていた人間です」
社交界で必要な知識は教えられても、実際の駆け引きを教えてはあげられない。
夜会に出席しなくてもいい身分だからと、社交をせずに今までやってきた。
「逃げたから研究者になったんです」
兄も友人もユクシーの進路には難色を示していた。
だからそんな兄のためにも、ユクシーはリオネルの家庭教師を引き受けた。
「僕は…リオネル…あなたのためにも自分のためにも逃げるのはやめようと思っています」
「ユクシー…」
「僕があなたの側にいられるように…頑張ります」
「ユクシーはすごいな。俺はまだ何をしたらいいかもわからない」
「僕は年上ですから…」
リオネルがユクシーを引き寄せる。
「ちょっと!?」
ユクシーはリオネルの膝な上に座されてしまう。
慌てて降りようとするユクシーの胸元に、リオネルが顔をうずめた。
「……格好つかないな、ほんと」
リオネルはユクシーとの甘い日々が何事もなく続くと思っていた。
そうではないとケイセルの手紙で突き付けられ、そんな未来を拒否するようにユクシーを腕の中へと閉じ込めた。
強引に体を組み敷いたのに、ユクシーはリオネルのワガママのような側にいて欲しいという願いを叶えるために考えてくれていたのだ。
ユクシーどこかに閉じ込めて、誰にも会わせずに囲う欲望がない訳じゃない。
でも、それはリオネルに勉強を教えてくれるユクシーを裏切る行為だ。
ユクシーとリオネル、二人だけで過ごせるのはきっと夏季休暇の間だけ。
その後には、リオネル自身進むべき道がある。

「ユクシーを養えるくらいに働くよ」
「なんですか、それ…」 
「そのくらい頑張って、ユクシーが側にいても文句を言われないようにするってこと」
「僕、リオネルに養われちゃうんですか?」
「そりゃ、ユクシーは俺の嫁だからな」
顔をあげてドヤ顔をするリオネルの額をユクシーははたくのだった。

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