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第一章 出逢い
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そして、夜会が開催される日がやってきた。
王城までは遠いので出立は早く、そのために準備する時間も早くなる。
といっても女性ではないので、朝から湯浴みをして身綺麗にするくらいだ。
ユクシーは自分の部屋にある夜会用の服一揃えを見てため息をつく。
予めユクシーが夜会に行くことが決定されていたなら、そう教えて欲しかった。
リオネルのお供をさせられるからだと考えていたが、まさか招待状をもらうとは思ってもみなかった。
「リオネル様は青色の地に金糸の装飾のお召し物になりますので、ユクシー様はこちらをどうぞ」
リオネルの付けたアトが散らばる裸を晒すわけにはいかないので、シャツだけ着た状態で着替えを手伝ってくれる侍女の作業を見守る。
ユクシーに用意されたのは新緑に金の刺繍が入った服だった。
「チーフはリオネル様と同じ色とのことでこちらをお使い下さい」
夜会のパートナーはどこかに同じ色を取り入れる。
リオネルはユクシーのために黄色のチーフを用意したくれたらしい。
黄色いチーフにはリオネルを示す紋章が刺繍されており、まるでユクシーがリオネルのものだと主張しているようだ。
侍女に手伝ってもらい滅多にしない盛装の準備を進める。
いつもより装飾が豪華なのは、王城の夜会だからかリオネルの側にいても見劣りしないためなのか。
「ユクシー、できたか?」
コンとドアが叩かれ、リオネルが部屋に入ってくる。
「もう行ける…よ…」
髪を整えたリオネルを見てユクシーは固まる。
「どうかしたか?」
まだ上着を着ていないから、体に沿ったベストがリオネルの筋肉美を引き立てている。
髪も整えられ、アクセサリーを付けたリオネルは、カッコイイという言葉しか出ない。
口を開けて見惚れているユクシーに、リオネルはちょっと照れくさそうだ。
「こういう格好したユクシーは本当きキレイだから、夜会に連れて行きたくないな」
「そういうリオネルは、とってもカッコイイです」
「そう言ってもらえると照れるな」
まさに王子様といった洗練された所作で、リオネルがユクシーの上着を手に持つ。
ユクシーはリオネルに甘えて、上着に袖を通す。
きっちりと上着のボタンを締めると、リオネルがチーフを手に取り自ら入れてくれる。
「俺の使っていたモノで悪いけど。でも、ユクシーにもらって欲しい」
「頂けるのですか?」
「ああ。夜会では側にいられないけど、俺がユクシーの傍らにいるんだって思わせて欲しい」
「……嬉しい」
ユクシーはリオネルの想いの詰まったチーフを優しく撫でる。
ユクシーもリオネルがしたように彼の上着を持って着せてあげる。
そこにはすでに揃いのチーフが入っている。
「行こうか」
リオネルが手を出す。
ユクシーはそれに自分の手を重ねると、リオネルがエスコートしてくれる。
「いってらっしゃいませ」
カールを始めとした使用人達が揃って見送ってくれる中、ユクシーはリオネルと共に馬車へと乗り込んだ。
控えめな装飾ではあるが、王家の馬車なので椅子の座り心地も抜群だ。
馬車は郊外から街へと向かって走っていく。
「緊張しているのか?」
「そりゃあ…王城での夜会なんてデビュタント以来ですから」
夏の夜会は数日に渡って開かれる。
今日は国賓や上位貴族達が招かれる夜会。
明日は今年社交界デビューする子女達が王に謁見する催しとなっている。
ユクシーはデビュタントの夜会以外王家の夜会に招かれることなんてない。
「陛下への挨拶だけしたら帰ります」
「俺のところには来てくれないのか?」
「だって……」
いくら訳あり王子だからって、王子というだけでも結婚したいと狙っている令嬢もいるだろうし、リオネルはカッコイイのだからすぐに囲まれてしまうだろう。
「ユクシー、こっち向いて」
ユクシーの隣に座ったリオネルがユクシーの頬に手を添える。
ユクシーの顔を固定したリオネルは、何度もユクシーの唇を啄む。
「俺が好きなのも側にいてほしいのも、ユクシーだけだ。それを忘れないで欲しい」
握りしめていたユクシーの手を口元に持っていく。
リオネルはユクシーの指に口付けする。
「そんなに……?」
ユクシーの頬が紅く色付いている。
「王都に行くんだから、街に出て、ここに付けるものを贈ろう」
ユクシーがリオネルのものだと主張できるものを。
「それまでは、このチーフで勘弁して欲しい」
ユクシーは声も出せずに、コクコクと首を上下に振るのだった。
馬車は速度を落とし、街中を走っている。
二人は王城に着くまでずっと手を繋いでいた。
もしかしたら、リオネルとこうして二人きりで愛を囁くのはこれで最後かもしれない。
心の片隅にある嫌な予想はユクシーの胸の中にだけしまっておけばいい。
ただ、一緒にいられる未来のために、ユクシーはやるべきことをするだけだ。
リオネルと出会って一ヶ月。
多分、彼を学園のあの場所で最初に見た時から恋に落ちていたような気がする。
孤独で寂しい王子様。
まさか、彼からユクシーにも恋情を向けられるとは思ってなかった。
何でこんなことにって考えても。答えは出ない。
だだ、惹かれてしまったのだ。
だから、兄に王太子に何を言われるのか怖くて仕方ない。
でも、リオネルにはユクシーが笑っているところだけを見ていてほしかった。
そして、馬車は王族などが乗り降りする降車場へと到着した。
王城までは遠いので出立は早く、そのために準備する時間も早くなる。
といっても女性ではないので、朝から湯浴みをして身綺麗にするくらいだ。
ユクシーは自分の部屋にある夜会用の服一揃えを見てため息をつく。
予めユクシーが夜会に行くことが決定されていたなら、そう教えて欲しかった。
リオネルのお供をさせられるからだと考えていたが、まさか招待状をもらうとは思ってもみなかった。
「リオネル様は青色の地に金糸の装飾のお召し物になりますので、ユクシー様はこちらをどうぞ」
リオネルの付けたアトが散らばる裸を晒すわけにはいかないので、シャツだけ着た状態で着替えを手伝ってくれる侍女の作業を見守る。
ユクシーに用意されたのは新緑に金の刺繍が入った服だった。
「チーフはリオネル様と同じ色とのことでこちらをお使い下さい」
夜会のパートナーはどこかに同じ色を取り入れる。
リオネルはユクシーのために黄色のチーフを用意したくれたらしい。
黄色いチーフにはリオネルを示す紋章が刺繍されており、まるでユクシーがリオネルのものだと主張しているようだ。
侍女に手伝ってもらい滅多にしない盛装の準備を進める。
いつもより装飾が豪華なのは、王城の夜会だからかリオネルの側にいても見劣りしないためなのか。
「ユクシー、できたか?」
コンとドアが叩かれ、リオネルが部屋に入ってくる。
「もう行ける…よ…」
髪を整えたリオネルを見てユクシーは固まる。
「どうかしたか?」
まだ上着を着ていないから、体に沿ったベストがリオネルの筋肉美を引き立てている。
髪も整えられ、アクセサリーを付けたリオネルは、カッコイイという言葉しか出ない。
口を開けて見惚れているユクシーに、リオネルはちょっと照れくさそうだ。
「こういう格好したユクシーは本当きキレイだから、夜会に連れて行きたくないな」
「そういうリオネルは、とってもカッコイイです」
「そう言ってもらえると照れるな」
まさに王子様といった洗練された所作で、リオネルがユクシーの上着を手に持つ。
ユクシーはリオネルに甘えて、上着に袖を通す。
きっちりと上着のボタンを締めると、リオネルがチーフを手に取り自ら入れてくれる。
「俺の使っていたモノで悪いけど。でも、ユクシーにもらって欲しい」
「頂けるのですか?」
「ああ。夜会では側にいられないけど、俺がユクシーの傍らにいるんだって思わせて欲しい」
「……嬉しい」
ユクシーはリオネルの想いの詰まったチーフを優しく撫でる。
ユクシーもリオネルがしたように彼の上着を持って着せてあげる。
そこにはすでに揃いのチーフが入っている。
「行こうか」
リオネルが手を出す。
ユクシーはそれに自分の手を重ねると、リオネルがエスコートしてくれる。
「いってらっしゃいませ」
カールを始めとした使用人達が揃って見送ってくれる中、ユクシーはリオネルと共に馬車へと乗り込んだ。
控えめな装飾ではあるが、王家の馬車なので椅子の座り心地も抜群だ。
馬車は郊外から街へと向かって走っていく。
「緊張しているのか?」
「そりゃあ…王城での夜会なんてデビュタント以来ですから」
夏の夜会は数日に渡って開かれる。
今日は国賓や上位貴族達が招かれる夜会。
明日は今年社交界デビューする子女達が王に謁見する催しとなっている。
ユクシーはデビュタントの夜会以外王家の夜会に招かれることなんてない。
「陛下への挨拶だけしたら帰ります」
「俺のところには来てくれないのか?」
「だって……」
いくら訳あり王子だからって、王子というだけでも結婚したいと狙っている令嬢もいるだろうし、リオネルはカッコイイのだからすぐに囲まれてしまうだろう。
「ユクシー、こっち向いて」
ユクシーの隣に座ったリオネルがユクシーの頬に手を添える。
ユクシーの顔を固定したリオネルは、何度もユクシーの唇を啄む。
「俺が好きなのも側にいてほしいのも、ユクシーだけだ。それを忘れないで欲しい」
握りしめていたユクシーの手を口元に持っていく。
リオネルはユクシーの指に口付けする。
「そんなに……?」
ユクシーの頬が紅く色付いている。
「王都に行くんだから、街に出て、ここに付けるものを贈ろう」
ユクシーがリオネルのものだと主張できるものを。
「それまでは、このチーフで勘弁して欲しい」
ユクシーは声も出せずに、コクコクと首を上下に振るのだった。
馬車は速度を落とし、街中を走っている。
二人は王城に着くまでずっと手を繋いでいた。
もしかしたら、リオネルとこうして二人きりで愛を囁くのはこれで最後かもしれない。
心の片隅にある嫌な予想はユクシーの胸の中にだけしまっておけばいい。
ただ、一緒にいられる未来のために、ユクシーはやるべきことをするだけだ。
リオネルと出会って一ヶ月。
多分、彼を学園のあの場所で最初に見た時から恋に落ちていたような気がする。
孤独で寂しい王子様。
まさか、彼からユクシーにも恋情を向けられるとは思ってなかった。
何でこんなことにって考えても。答えは出ない。
だだ、惹かれてしまったのだ。
だから、兄に王太子に何を言われるのか怖くて仕方ない。
でも、リオネルにはユクシーが笑っているところだけを見ていてほしかった。
そして、馬車は王族などが乗り降りする降車場へと到着した。
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