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5章

謁見【1】

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みんなと喋りながらブラン団長達のお迎えを待つ。

ブラン団長達が近付くのが気配で分かったのでポラルには影に控えてもらい精霊2人には姿を消してもらう。

挨拶をして宿を出ると目の前には豪華な馬車が。
これで王城に向かうらしい。

王城に着くと荷物検査に身体検査。
私もグレンも荷物はないのですぐ終わった。

ブラン団長達の案内でお城に入る。
お城の中は派手過ぎず、落ち着いた雰囲気。
ただ、お城の中にあるだけで置いてある壺や装飾品、飾ってある絵画など全てが高級品に見える。
例え簡単に作れそうな土器だとしてもきっと高級品なんだろう。

「…謁見の間の準備が整うまではこの部屋で待機だ」
ブラン団長が部屋のドアを開けながら言う。

部屋の中は控え室らしく、ソファとテーブルがあるだけの部屋。
絵画等も飾られているが、派手さはない。
ただ、ソファもテーブルもどっしりと重厚感があり高級感が溢れ出てる。

「…そんなに緊張しなくても大丈夫だ」

ブラン団長が言ってくれるけど、一般庶民の私からしたら高級品に囲まれて緊張しない訳がない。

「無理だよー。ものすごく落ち着かないもん。もう既に帰りたい」
苦笑いしながら答える。
パニックとかにはならないけど、今すぐに帰りたい。

クラオルとグレウスが心配して頬にスリスリしてくれている。


―――トントントントン

ノック音がするとフレディ副隊長がドアを開ける。

「お待たせ致しました。準備が整いましたので謁見の間にお願い致します」
と声だけ聞こえた。

思いっきり深呼吸して気合いを入れたらグレンに抱っこされた。

「わっ!歩けるよ?」

〈安心しろ。何かあればわれが処分してやる〉
ニヤリとしながらグレンが言う。

「だいぶ物騒な発言だね?でもそれ問題になりそうだから止めてね?」

〈じゃあ、われらが出発した後に配下達に来てもらうか?〉

「どっちみち物騒じゃん。とりあえずは大人しくしててね?」

〈ムッ。分かった〉

ブラン団長達はグレンの了承の言葉を聞いてホッと息を吐いていた。
不安だったらしい。

グレンの軽口で緊張がほぐれた状態で進み、謁見の間の扉の前に到着。

どデカい扉が開く瞬間私の頭の中には某有名RPGのオープニングの曲が流れた。


グレンに抱っこされた状態のままブラン団長達の後ろに付いて謁見の間を進み、玉座の前で止まる。

謁見の間の両サイドには貴族が並んでいて物凄く視線が痛い。

(ん!?もしかして鑑定されてる!?)
魔力がまとわりつくのを感じる。

(嫌な感じだな)
鑑定を跳ね返すイメージで結界を張る。
魔法が使えない魔道具とかが設置されているかと思ったけど、そんな事はなく普通に結界は張れた。

跳ね返すイメージで張ったからか、かけて来た人の情報がピコピコ表示される。
気配と情報から7人以上の諜報員が。
貴族自らかけてるやつもいる。


玉座に座っているのは30代半ばくらいの男の人。
メタボ体型で偉そうな雰囲気。
1人掛けの玉座の隣にはゴテゴテギラギラと着飾った50代くらいのおばさんが立っている。
化粧が物凄く濃い。

(想像してたのと違ったな。あの人に似てるのかと思ったんだけど)


「よく来た。その様な姿で流石冒険者だな」
若干笑いを含んだ声で玉座に座っているやつが言うと貴族から笑い声が上がる。

呼び出したくせに歓迎はされていないらしい。
(代理だよね?なんでこんなに偉そうなの?)


此度こたびは何やら活躍したらしいな。楽にせよ」

頭も下げていないし抱っこされたまま。
とりあえずグレンに降ろしてもらい、グレンの隣りに立つ。

想像していた謁見とだいぶ違う。
王様じゃないから頭を下げなくて良いんだろうか?
普通頭を下げて、名前を呼ばれておもてを上げよ?顔を上げよ?とか言われてから始まるんじゃないの?小説とかそうだったよね?
そもそも代理が謁見とかするものなのか…



「ほう。そいつがドラゴンか。褒美だな…かねと爵位でいいだろう。平民からすれば喉から手が出るほど嬉しいだろうからな」

(いらねぇ…)

「…話が違います!兄上!」
ブラン団長が焦った様に大声を上げる。
(あ。やっぱり王族だったんだ。それにしても似て無さすぎじゃない?)

「貴様に兄上等と呼ばれたくはない!卑賎ひせんの血を継いでいる貴様は王族とは認めない!」

ブラン団長は悔しそうにコブシを握り締めている。

(良かったー。異母兄弟で。こいつがマジなお兄さんだったらショック過ぎるもん)

「ワタクシはそのヴァインタミアを気に入りました。ワタクシが可愛がってあげましょう」
玉座の隣りに立っているおばさんが言い出す。

(あ゛?クラオル達寄越せって?ふざけんなよ)

「爵位とかいりませんし、従魔を渡す気はありません」
腹は立っているがニッコリと断言する。

「不敬だぞ!」
右側に並んでいた貴族が叫ぶ。
すると「そうだ!そうだ!」と周りが便乗して騒ぎ始める。

不敬も何も初めから頭も下げていないし、こいつの名前も分からないこの状況がおかしくない?

「まぁぁ!さすが平民は礼儀を知りませんのね!」
おばさんが派手なおうぎをパタパタさせながら声高々に言う。

(いやいや。あんたらの方がおかしいよ)

「爵位は準男爵で充分だろう」
構わず進める玉座の人。

(話進めるのかよ!準男爵って男爵の下だよね?一番下の爵位じゃん)


「((ねぇ。これなんの茶番?))」
『((こいつら本当に王族なのかしら?頭が悪いどころじゃないわ))』
《((ここまでひどいなんてこの国すぐに終わるわね))》
《((このままだと、精霊も国から逃げるだろうな…》
念話を飛ばしてクラオル達と喋る。


〈((クククッ。あいつを鑑定してみろ。面白いぞ))〉

グレンに言われて鑑定してみると確かに面白い事が書いてあった。
特におばさん。相当な人らしい。
隠蔽する魔道具も付けていないから周りから鑑定し放題だ。
この内容は周知の事実なのかな?
じゃなかったらおかしいよね?

クラオル達と念話で話していると話が進んでいる。
(聞いてなかったや)

「カリダの領主達は無罪とする!」

「…なりません!無罪にしてしまえば国交問題に関わります!」
ブラン団長が玉座の人に意見する。

「貴様!誰に口を聞いている!?」

(はぁ…これじゃあブラン団長が可哀想だよ…)


「((グレン。この人達全員黙らせて))」

〈((分かった))〉


―〈グルルルル!黙れ人間共!〉―
グレンがドラゴン状態の時の話し方の様に空気を震わせて喋る。


みんな黙ったので、そのまま威圧してもらい黙らせた状態をキープさせる。
何人も貴族がぶっ倒れたけど放置。

「まず、このドラゴンもヴァインタミアも私の従魔です。私の家族を渡すわけないでしょう?そして爵位なんて余計な物いりません。
あなたは代理とはいえ王様には向かないですね。謁見にはやり方や順番があるでしょう?
そして国交問題。あなたは自分の都合で戦争でも起こしたいんですか?」

「なっ!なんだと!ボクちんに逆らうのか!?」

(ボクちん!?)

「貴様不敬にも程がある!ボクちんは父上直々に代理を頼まれたんだぞ!ボクちんの意見が正しいに決まっているじゃないか!」
大汗をかきながらも反論してくる。

(ボクちん!ヤバい!笑いたい!めっちゃ笑いたい!耐えろ。耐えるんだ。いくら王族でも30代半ばくらいなのに…ボクちん…ボクちんって…)

口元はピクピクして、体はプルプル。
頑張って笑わない様に耐えながら空気を鼻から吸って口から吐く。鼻から吸って口から吐く。
何回か繰り返しようやく落ち着く。
思い出したらまた笑いたくなっちゃうから考えない様に。

(頼むから今喋らないでね!今度は絶対吹き出しちゃう)


「ふぅー。はぁ…もういいかな?とびらの前にいる4人の人。いい加減入って来たらどうですか?」
私の言葉に全員がとびらに注目する。

とびらから入って来たのは…




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