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5章
商業ギルド
しおりを挟むジョルガスさんに見送られて冒険者ギルドから商業ギルドに向かう途中、食堂を発見してお試しに入ってみる。
タイミング良く2人席が空いた所に案内して貰い、案内してくれた ウェイターのお兄さんのオススメを2つ頼む。
お兄さんが持って来てくれたのは何やら黒いスープ。
鑑定してみると薬草とハーブのスープらしい。
早速ひと口いただきますと飲んでみる。
「ヴッ!」
(やっば!激マズ!酷過ぎる!)
病院でもらった粉薬と漢方薬を子供用風邪薬シロップで混ぜた感じ。
薬膳と言えば聞こえはいいけど、薬草の臭味とエグ味にクセのある甘みのコラボレーション。
「ゔぅ…」
あまりの不味さの衝撃に涙目になる。
グレンを見てみると普通に食べていてビックリする。
「グレン…これ食べられるの?」
〈美味くはないが食える〉
(マジか…グレンの味覚を疑うよ…)
〈食わないのか?〉
「私には無理そうだよ…食べたかったら食べていいよ…」
言いながらスープのお皿をグレンの方に寄せると、グレンが返事をしながら私のスープ皿を自分に引き寄せてくれたので食べてくれるみたい。
一緒に持ってこられたパンは大丈夫かと鑑定すると普通の白パンで安心した。
精霊の国で貰った世界樹の露で口直しをしてからパンのみを食べ、グレンが食べ終わるのを待ち、食堂を出てテンション低く商業ギルドに向かう。
(王都なのにあんな激マズの食堂があるなんて…絶対二度と行かない)
商業ギルドに着き、グレンに降ろしてもらって中に入るとギルマスのおばあちゃんのサルースさんがドアの前で待っていた。
「待っていたよ!」
「え」
「冒険者ギルドから連絡が来たからね」
「なるほど」
(ジョルガスさんが連絡してくれたのか)
「早速倉庫に行こうじゃないか」
私達の返答も聞かず私の腕を引っ張りながらズンズンと奥に歩いて行く。
(素材が欲しいのは分かるけど強引だなぁ…)
「ここだよ」
サルースさんが言いながらドアを開けて中に入ったので続いて入る。
部屋の中は体育館の様に広い部屋だった。
「さぁ!出しとくれ!」
テンション高く言われ、先程冒険者ギルドで売れなかった素材をどんどんと出していく。
ついでに蜘蛛の素材も。
「こいつは凄いね!」
サルースさんは鼻息荒く大興奮。
「とりあえずこれで全部。ムレナバイパーサーペントとマザーデススパイダーの素材」
「マザーデススパイダーだって!?こいつも倒したのかい!?」
「うん」
「まぁ…ムレナバイパーサーペントを倒せたならマザーデススパイダーも倒せるか…」
何やらブツブツと呟き始める。
「そうだね!おそらくうちも全部は買い取れないよ。なるべく早くどれにするか決める事にしよう。あんた達は2時間後にまた来ておくれ」
気を取り直した様にサルースさんに言われる。
「分かった」
とりあえず商業ギルドを出てプラプラと歩く。
「ねぇ。そういえばさ、パーティってドレス着なきゃダメかな?」
『そうね…おそらくドレスだと思うわ。でも主様ドレスもらったじゃない』
「うん。ブラン団長達からもらったね。ドレスだったらあの中のどれか着ればいいと思うんだけど、グレンってパーティとかに参加出来る服持ってるの?」
〈持っていないな。今着ている服以外は1着しかない。我も着なきゃダメなのか?〉
「多分ダメだと思う。服頼まないとだねー。染料くれたおばあちゃんの服屋さんに行こう!」
おばあちゃんの服屋さんに入ると前回同様ニコニコと迎えてくれた。
「おや。この間の子だねぇ。こんにちは」
「こんにちは!」
「今日はどうしたんだい?」
「あのね、パーティーとか出られる様にこの人用の服を作って貰いたいの」
「パーティーかい?」
「そうなの。出たくないけど王様のパーティーだから出なきゃいけなくて…作って貰えませんか?」
「王様のパーティーなんて凄いパーティーに着ていく服がウチのでいいのかい?」
「うん!おばあちゃんが作ってくれた服が良いの!」
「そうかい。光栄だよ。そうだねぇ…どんなデザインがいいんだい?」
「どんなデザインでも大丈夫なの?」
「もちろんさね。聞いて出来ない物もあるけどねぇ」
「わぁ!それとっても素敵!」
(ぐふふふ…これは理想のスーツをグレンに着させるチャンスじゃないの!私のためにぜひ着て貰いましょう!)
『主様。作って貰うってパーティーに間に合うの?いつパーティーか聞いていないじゃない』
「はっ!そうか…そうだね…せっかくグレンにカッコイイスーツ着てもらえるチャンスだったのに…」
「どうしたんだい?」
「パーティーがいつあるか聞いてないの」
「なるほどねぇ。そうさねぇ…フルオーダーになると1週間ほどかかるからねぇ…今ある物に手を加えたら2、3日で仕上げられるけど…」
「そっかぁ…そうだ!両方作って貰う事って出来ますか?」
「構わないよ」
「ぜひ両方お願いします!デザインは今日考えるので明日持って来ます」
「そうかい。なら今うちにあるやつを持ってくるからちょいと待ってておくれ」
「はーい!」
おばあちゃんが持って来てくれたのはシンプルな物から貴族が喜んで着そうな物まで色々なデザインの10着。
グレンの体格を見て持って来てくれたらしい。
10着の中からグレンに似合いそうな物を1着選ぶ。
個室に入りグレンに試着して貰うと上着はちょうどいいのに、グレンの足が長くて丈が足りない。
羨ましいと思いながらも丈を長く出来るのか心配していたら大丈夫だと言われてホッとする。
おばあちゃんに頼んで上着も少しいじって貰える事になった。
ついでにグレンのサイズを測って貰う。
グレンのスーツ姿を見ているとナポレオンコートも似合いそうだし、軍服みたいなのも着て欲しくなる。
(萌えが…妄想の萌えが広がる!)
サイズを測り終えるとちょうどいい時間。
おばあちゃんにスーツをお願いして商業ギルドに向かう。
今度はドアの前にいなかったのでそのまま奥へ進み倉庫に行く。
「戻って来たね。買い取るのが決まったよ。こっち側のはしまってくれて大丈夫だよ」
サルースさんに言われた方を無限収納にしまう。
今回もほとんど回収となった。
「さて、じゃあ応接室で話そうかね」
サルースさんの案内で応接室に移動する。
「これが今回ウチで買い取りたい物だよ」
サルースさんから紙を受け取って確認する。
「サルースさん。回収に入ってなかったムレナバイパーサーペントの血が入ってません」
「なんだって!?」
そう。血が入っていない。
無限収納の優秀な解体でなぜか瓶に入った状態になっていた血はさっき回収した時にはなかったのに買い取りの一覧表には載っていない。
(はぁ…また厄介事か…)
「今回血は買い取れないって決まったのに!嘘じゃないね?」
「回収したやつ全部出して確認しますか?」
「いや。大丈夫だよ。誰だいちょろまかした奴は!ちょっと待ってな!」
サルースさんは鼻息荒く部屋を出て行ってしまった。
「はぁ…また面倒な事になったな…」
ため息をつきながら買い取り一覧表を見る。
冒険者ギルドとほとんど変わらない金額か、少し高い買い取り金額になっている。
少し高い金額のは内臓と鱗。
おそらく武器や防具や錬金で使う素材。
クラオルとグレウスをモフモフしながらみんなで喋って待っているとサルースさんが戻ってきた。
ロープでぐるぐる巻きになった若い男性を引きずって。
(おばあちゃんのどこにそんな力が…)
「悪いねぇ。とっ捕まえたよ!このギルドで職員が盗難なんてね。これはこちらの完全なる失態だよ。この血もこちらがちゃんと買い取る様に追加で書き加えた物を今作ってるから待っておくれ」
「はーい」
私が返事をするとサルースさんが男性を引きずって出ていく。
再び戻ってきた時にはサルースさんとゲハイトさん2人で来た。
ゲハイトさんが重そうな袋を3つ持っている。
「待たせたね。今回の事は悪かったよ。ちゃんとあの血も買い取るよ。こっちの紙を確認しておくれ」
サルースさんから紙を受け取って確認する。
何故かさっきの紙より全体的に買い取り価格が上がっている。
「ハッハッハ。不思議そうだね。今回のお詫びさ。その金額で大丈夫かい?」
「うん。大丈夫」
「大変申し訳ありませんでした。詳細は調べてから報告させていただきます」
ゲハイトさんが頭を下げてくれる。
グレンをチラチラ見ていて、前回の威圧がトラウマ化しているみたい。
「はーい」
「じゃあ、これが総額だよ」
サルースさんの指示でゲハイトさんが渡してくれたお金の詰まった袋を受け取る。
ゲハイトさんが持っていた重そうな袋がお金の袋だった。
もうお金の心配は一切いらなさそう。
サルースさんとゲハイトさんに見送られて商業ギルドを出て泊まっている宿屋に向かう。
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