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6章
素直な人達
しおりを挟む気を取り直して倉庫に向かうと、倉庫には大量の大豆が。
「わぁー! 大豆だー!! 最高ー!」
私は大興奮しながらもすぐに鑑定して選別していく。村長も門番さんもお兄さんも引いていようと気にしない! 食材の方が大事!
あらかた鑑定して選別したあと、気になっていたことを聞いてみた。
「ねぇ、大豆はあるけど枝豆はないの?」
「……えっ、エダマメですか? こちらはソイ豆と言いますが……」
「そっか……枝豆の状態では収穫してないのか……」
「ソイ豆ではダメなのか?」
私が肩を落とすとお兄さんが聞いてきた。
「ううん。ダメではないよ。ただ、今畑になってる状態のやつが欲しかったの」
「そういえば美味そうって言ってたな……」
「あれをか!? あの状態のは食えねぇだろうが! 死ぬぞ!」
私が言った言葉を覚えていたらしい門番さんが呟くと、お兄さんが大げさに驚いた。
「現物見ないとなんとも言えないけど、美味しいよ?」
「「「……」」」
信じられないものを見る目を向けられたけど、枝豆はどう考えても美味しいから私は引くつもりはない。
「あ! グレンが戻ってくるから一回村長の家に戻ろう」
私の発言で村長の家に戻ると、出て行った窓からグレンが青年を担いで戻ってきた。
〈こやつはリトルヤーシリ相手に腰を抜かしてたぞ〉
「「「リトルヤーシリ……」」」
リトルヤーシリはスケイルヤーシリとは違い、ただの小さいトカゲだ。小さいとは言っても平均30センチくらいはあるって本には書いてあったけど。
「腰を抜かすって、よく森まで行けたね……」
〈面倒だから気絶させて持ってきた〉
「ありがとう」
「んん……ん?」
私達が話していると青年が目を覚ました。状況がイマイチ理解できていないらしく、キョロキョロと周りを確認してお兄さんを見つけると目を丸くさせた。
「ケ、ケガは!? 起きても大丈夫なんですか!?」
「おう! この嬢ちゃんがポーションくれて治ったぜ!」
「…………よっ、よがっだァァァァ!」
青年はお兄さんの体をペチペチ触ってケガが治っていることを確認すると、泣き始めてしまった。大号泣と言っても過言ではないくらいにお兄さんの腰あたりに縋りついて。
「おいおい。赤ん坊じゃねぇんだから落ち着け」
お兄さんが苦笑いしながらも青年の肩をポンポンと叩いてあげていると、少し落ち着いてくれた。
青年は人見知りではあるけど、適度な距離を保ってくれる村人達が好きなのに自分のせいで毒に侵されてしまい、どうにか解毒できないかと無毒草を探しに行ったらしい。
「ごめんなさい。僕のせいでごめんなさい……」
「村のためになんとかしようとしたんだろ? 実際その毒薬で追っ払えたようなもんだし、俺は別に気にしないが……」
ひたすら謝り続ける青年にお兄さんは苦笑いをこぼし、村長達は考えあぐねている様子。
「ねぇ、村人全員集めて真実を話したら?」
「「「え」」」
「他にもあの毒薬買ってる人がいるかもしれないし、この先また似たような毒薬を買わないようにって抑止力にもなると思うよ」
「僕もそれがいいと思います……みんなに黙っているのは辛いし……みんなに謝らないと……」
青年が私の案に乗り、急遽村長宅前に村人を集めることに決まった。
お兄さんと門番さんが村人を呼びに行き、私達は村長宅前で村人が集まるのを待つ。
全員が集まったところで村長が説明して、青年が謝った。毒に侵されていた人達は予想していたのか疑問が解けた感じだったけど、若い女性数人は怒りを滲ませていた。
「戦っていない人が怒るのはちょっと違うと思うんだよね。この人は村を助けたい一心で商人から買った薬を使った。確かにそのせいで毒に侵されたけど、魔物を追い払えたのも事実だよ。リトルヤーシリに腰抜かしちゃうくらいなのに、無毒草を一人で森に探しに行ってた。あなた達はその間何してた?」
昨日プルトンから報告を受けた時に出てきた女性の特徴を持った人物だと思われる女性を真っ直ぐ見つめて問いかけた。プルトンから聞いたのは、この村の男性に対する愚痴。弱い、ダサい、使えないとイライラしながら物に当たっていたらしい。
「村を守るために立ち向かってケガをしたとしても、誰かのために一生懸命になれる人はカッコイイと思う。お姉さんは違うの?」
「そうね……私は怒れる立場じゃないわ」
私が問いかけた女性を筆頭に、怒っていた女性達は私の言葉に怒りを収めてくれた。怒りの矛先有耶無耶作戦は成功したっぽい。
素直な女性で助かった! 言い返してくる口達者な女性だったら勝てる気がしないもん。
「私は今回のことを教訓に商人や冒険者から怪しい薬を買わないことにした方がいいと思うよ」
「そんなにヤバい毒薬だったのか?」
「そっか……見てない人もいるのか。じゃあ見せた方が早いね。ちょっと下がってもらえる?」
村人に下がってもらって、空いたスペースにアーマーウルフを出した。見世物みたいにしちゃって申し訳ないけど、この先同じ目に合う魔物を減らすために我慢してもらいたい。
「「「ヒィッ!」」」
「これが腐蝕毒に侵されたアーマーウルフだよ。腐蝕毒は体を腐らせてゾンビ化させる毒薬」
私の説明を聞いているのかいないのか、みんなアーマーウルフに目が釘付けだ。表情は怯えや嫌悪だから、目を逸らしたいけど逸らせない状態らしい。
「埋めたはずなのにどうして……」
「アーマーウルフは毛皮が素材なのに剥がないで埋めたって聞いて、不思議に思ってさ。昨日の夜追っ払ったっていうアーマーウルフを探したの。三匹だったけど見る?」
「いっ、いえ! 退治していただきありがとうございます! もうしまっていただけると……」
村長の疑問に答えてからアーマーウルフをしまうと、ホッと息を吐かれた。
「皆さん、わかってもらえた? 怪しげな薬はロクなことにならなさそうでしょ? でも強い魔物が出たらどうするんだ!って思う人もいると思うの。それなら村のみんなの力を底上げすればいいと思うんだよね」
「底上げ……ですか?」
「そう! みんなが戦えるようになったら狩りもしやすくなると思うし、狩れる魔物も増えると思うよ。そしたらお肉いっぱい食べられるね」
私の言葉で男性陣はやる気を上げたけど、女性陣は乗り気ではないらしい。ここはもう一押し必要そう。
「お姉さん達の身を守る護身術にもなると思うし、適度な運動は体つきも締まるよ。新陳代謝が上がってお肌も綺麗になるから年齢より下に見られるようになるかもしれないね」
「「「まぁ!」」」
おばさま方を中心に女性も乗り気になってくれた。
(みんな素直すぎでしょ! チョロい! チョロいぞー! チョロすぎて心配になるくらいだわ)
「村人を助けていただいただけではなく、魔物を退治まで。さらに村をまとめていただき本当にありがとうございます」
「村の問題に口出すべきじゃないとは思ったんだけど……ごめんね?」
「とんでもない! 以前よりも村がひとつになった気がします」
「大丈夫ならいいんだけど……」
さて、流されるまま村の問題に首突っ込んじゃったけど、解決したし私の目的の物をゲットしたい。
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