161 / 533
7章
窯と炭と……
しおりを挟むギルドから宿に戻ると疲れからかデザートを作る元気はなく、宿でご飯を食べて早々に寝てしまった。
娘ギルマスを眠らせた際に、ウェヌスからお皿と炭ができたと聞いていたので、今日はウェヌスの指輪を使って精霊の国に飛んだ。
《お待ちしておりました。あのオークの大群は大丈夫でしたか?》
「うん。みんな一緒にいてくれたから大丈夫だったよ」
《エルミスとプルトンから、魔物大量発生のダンジョンは大変だったとお聞きしました。お手伝いできず申し訳ございません》
「全然だよ! あの人眠らせてくれただけで助かったし、ウェヌスもお仕事で忙しかったんでしょ? むしろ手伝えなくてごめんね」
ウェヌスは仕事としか言ってなかったけど、エルミスとプルトンに聞いたところ、精霊の国に穴が開いてしまい魔物が入り込んで大変だったらしい。
《いえいえ! たまに起こるのです。それにセナ様のおかげで大きな穴もすぐに塞げました》
「私何もしてないよ?」
《ふふっ。セナちゃんと契約してるからよ。契約してる私達は魔力とか全体的に底上げされてるの》
「へぇー! 契約ってすごいんだね」
《(セナちゃんが特別なんだけど……)まぁ、いいわ! さ、行きましょ!》
契約ってそんな作用もあったのか~。
◇
前回お願いしていた窯のところへ向かうと、“赤”が待っていてくれた。
《ちゃーっす! 確認してほしーっす》
「んん?」
《なんかまずいんすか?》
「これ、なんで焼き上がり方が違うの?」
見せてもらったのは陶器と磁器くらい差があり、陶器も釉薬が塗られているようなものもあった。
《んー。オレは言われた通り焼いただけなんす。わかんないっす》
《こっちがドロップ品でこっちが核から作ったやつじゃない?》
「おぉ! そっか! あれ? じゃあなんでこれとコレは色が違うのかな?」
《ん~、なんでかしら? 作った子に聞いてみたらいいわ!》
ドロップ品の【スライム泥】から作った食器が陶器で、クレイスライムの核から作ったのが磁器だった。
一緒に作った魔道具の子達を呼んでもらって、聞いてみるとすぐに判明した。
製作した子の属性の色に変わっていたらしい。
釉薬が塗られているように見えるモノは、前回製作中に核の泥水をぶちまけたことが原因だった。
なんとも面白くて不思議だ。
《このスミはどーすか?》
「うん! ちゃんと木炭だよ! でもこれとコレの違いは?」
《あぁ~。それはウェヌスが《いろいろな木を焼いてどれがいいか確かめてもらいなさい》って言ってたんで、試したんす。どれがいいんすか?》
ウツボを焼きたいから、理想は硬い備長炭。でもBBQをするなら柔らかい炭も欲しい。
「あれ? これって竹?」
《それはバブの木っす。節の木に似てるんすけど、外だとあんまり見かけないっすね》
《そちらは精霊の国では比較的見つかります。ご入用でしたら育てることも可能です》
「ホント?」
《はい。植物を担当している子に伝えておきます》
「ありがとう!」
炭を確かめると全部使えそうな木炭だった。
食器と炭は焼くのにどれくらいの時間がかかるのか聞いてみると、半日もあれば焼けるらしい。乾燥も魔法でできてしまうため、時間がかかる行程が必要ないんだそう。
「そしたらさ、お願いがあるんだけど……」
◇
精霊の子達にお仕事をお願いして、私は今お城のキッチンを借りている。
精霊の子達と一緒にご飯を食べようと、いろいろと仕込み中だ。
ウェヌスにはキヒターを呼んできて欲しいと頼み、プルトンは魔道具の子達のところ、エルミスは植物を育ててくれている子達のところ、ポラルはカイーコのところへ訪ねている。
「ふふふふふ」
『主様、怪しすぎるわ』
「いや~、もうすぐアレが手に入ると思うとテンションも上がるよね!」
『主が嬉しそうだと僕も嬉しいですっ』
「くぅぅぅ! グレウス可愛い! そんなグレウスには……はい、あーん」
『あーん。……美味しいですっ!』
両手でほっぺを押さえて美味しいと言うグレウスが愛くるしい!
なにこの子。天使かな? ウチの子可愛すぎない?
クラオルにも「あーん」と、食べさせて二人の可愛さに癒されて悶える。
〈これ全部焼くのか?〉
「そうだけど、疲れちゃった?」
〈いや、ずっと同じ作業で飽きてきた……〉
「うーん。じゃあどこか遊びいってくる?」
《あ! いた! セナちゃん、ちょっとグレンを借りてもいいかしら?》
「大丈夫だよ」
私が許可を出すと、プルトンがグレンの耳を引っ張って無理矢理連れていった。
ジルには大量のお肉をスライスしてもらっているため、グレンが担当していた作業は『しょうがないわね』と、クラオルが蔓を使ってやってくれることになった。
◇
プルトンから《両方バッチリよ!》と連絡がきて、みんなに念話で声をかけた。私も準備は万端。
ウェヌスに迎えにきてもらい、みんなで目的地へ向かう。
目的地に着くと、満面の笑みを浮かべるキヒターと、不機嫌そうなグレンが迎えてくれた。
《女神様!》
「キヒター! ってグレンはどうしたの?」
〈我が使われるなど……〉
《あら、いいでしょ? セナちゃんが喜んでくれるわよ!》
聞けば、広場を作るのに増えすぎた節の木が邪魔だったから、グレンに焼いてもらったらしい。
「ふふっ。そっか。ありがとう」
〈ふむ。セナが喜んでいるから許してやろう〉
グレンが隣りにしゃがみこんで頭を向けてきたので、撫でてあげた。
すぐに機嫌が直っちゃうグレンはチョロい。こういうところが可愛いんだよねぇ。
《セナちゃんの言う通りに作ったけど、ここは何に使うの?》
「ふっふっふ。作ってもらったここは、BBQ場だよ!」
《〈ばーべきゅーじょー?〉》
BBQがわかっていないらしいので、焼肉みたいなもんだと説明した。本場のBBQとは違って、実際に焼きながら食べちゃうから野外炭火焼肉と変わらないと思うしね。
ウェヌスが国にいるほぼ全ての精霊の子達を呼んでグループ分けしてくれたところへ、作ってもらった炭とお肉とその他もろもろを配って歩く。
お肉はもちろん狩った大量のオーク!
私が全部作るのは時間がかかっちゃうため、みんなで一緒に楽しもうという尤もらしい理由を上げて、自分達で焼いてもらう。
炭の良さもわかってくれると思うんだ!
やり方を説明して炭に火を付けてもらう。
声を張り上げなくても風の子が声を届けてくれて、火の子が着火してくれるため「火がつかない!」なんてこともない。
下ごしらえをしたお肉を網の上に並べて焼いていくと、辺りにはお肉が焼けるいい匂いが広がっていく。
焼けたら実食!
〈美味しいぞ!〉
《ふむ。前回とは少し味付けも違うのだな》
「さすがエルミス! この前買ったスパイス使ったんだよ!」
《美味しいわ~! 香ばしい香りが食欲を刺激して、それに負けないピリッとしたスパイスでどんどん食べちゃうっ!》
《えぇ、こちらのソースも酸味と辛みがちょうど良く、味も染みています》
久しぶりにプルトンとウェヌスがグルメリポーターを発揮し始めた。
精霊の子達もとても気に入ってくれたらしく、BBQ場は盛り上がって笑顔が溢れている。
『主様嬉しそうね』
「うん。やっぱりみんなが笑顔だと嬉しくなるよね。いつも手伝ってくれてるから、少しでも気分転換になってくれたらいいな」
クラオルが『主様らしいわ』と笑った。
しばらくするとみんなおなかいっぱいになってきたらしく、地面に座り込む子もでてきた。
いっぱい食べるかと思ってオーク十体分準備したのに二体も消費されていない。そのうちのオーク一体分に届きそうなくらいグレンとジルベルト君のいる私のところが消費している。
二人はまだまだ食べそうだけど、精霊の子達は満足してくれたみたいなので目玉第二弾!
焼いていないお肉や野菜を回収したら「好きな方を食べてね」と、テーブルの上に炊飯機で作ったカラメルなしプリンと大量に作ったワッフルをデデーン!と出した。
精霊の子達も甘いものに目がないのか、おなかいっぱいと言っていた子達もモグモグと食べてくれている。
〈ズルいぞ!〉
「ちゃんと二人の分は別にあるからお肉好きなだけ食べていいよ。これはこの子達のだから食べちゃダメだよ?」
〈わかった! 食べるからな!〉
「はいはい。安心して食べて」
結局グレンとジルベルト君二人でオーク一体をまるまる食べきり、その後宣言通りデザートも食べていた。
この前の宿のご飯はまだ序の口だったのか……胃袋はブラックホールかなにかなのかな? 私は見ているだけでおなかいっぱいだよ。
1,261
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
2026/01/20追記
『魔王様、溺愛しすぎです!』のコミカライズ情報、解禁となりました!
TOブックス様から出版、1巻が4/10発売予定です。
キャラクターデザインに『蒼巳生姜(@syo_u_ron)』先生! 以前表紙絵をお願いした方です(*ノωノ)
漫画家は『大和アカ(@asanyama)』先生です° ✧ (*´ `*) ✧ °
連載については改めて発表させていただきますね_( _*´ ꒳ `*)_
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2026/01/20 1巻発売日(4/10)発表!
※2025/12/25 コミカライズ決定!
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。