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7章
窯と炭と……
ギルドから宿に戻ると疲れからかデザートを作る元気はなく、宿でご飯を食べて早々に寝てしまった。
娘ギルマスを眠らせた際に、ウェヌスからお皿と炭ができたと聞いていたので、今日はウェヌスの指輪を使って精霊の国に飛んだ。
《お待ちしておりました。あのオークの大群は大丈夫でしたか?》
「うん。みんな一緒にいてくれたから大丈夫だったよ」
《エルミスとプルトンから、魔物大量発生のダンジョンは大変だったとお聞きしました。お手伝いできず申し訳ございません》
「全然だよ! あの人眠らせてくれただけで助かったし、ウェヌスもお仕事で忙しかったんでしょ? むしろ手伝えなくてごめんね」
ウェヌスは仕事としか言ってなかったけど、エルミスとプルトンに聞いたところ、精霊の国に穴が開いてしまい魔物が入り込んで大変だったらしい。
《いえいえ! たまに起こるのです。それにセナ様のおかげで大きな穴もすぐに塞げました》
「私何もしてないよ?」
《ふふっ。セナちゃんと契約してるからよ。契約してる私達は魔力とか全体的に底上げされてるの》
「へぇー! 契約ってすごいんだね」
《(セナちゃんが特別なんだけど……)まぁ、いいわ! さ、行きましょ!》
契約ってそんな作用もあったのか~。
◇
前回お願いしていた窯のところへ向かうと、“赤”が待っていてくれた。
《ちゃーっす! 確認してほしーっす》
「んん?」
《なんかまずいんすか?》
「これ、なんで焼き上がり方が違うの?」
見せてもらったのは陶器と磁器くらい差があり、陶器も釉薬が塗られているようなものもあった。
《んー。オレは言われた通り焼いただけなんす。わかんないっす》
《こっちがドロップ品でこっちが核から作ったやつじゃない?》
「おぉ! そっか! あれ? じゃあなんでこれとコレは色が違うのかな?」
《ん~、なんでかしら? 作った子に聞いてみたらいいわ!》
ドロップ品の【スライム泥】から作った食器が陶器で、クレイスライムの核から作ったのが磁器だった。
一緒に作った魔道具の子達を呼んでもらって、聞いてみるとすぐに判明した。
製作した子の属性の色に変わっていたらしい。
釉薬が塗られているように見えるモノは、前回製作中に核の泥水をぶちまけたことが原因だった。
なんとも面白くて不思議だ。
《このスミはどーすか?》
「うん! ちゃんと木炭だよ! でもこれとコレの違いは?」
《あぁ~。それはウェヌスが《いろいろな木を焼いてどれがいいか確かめてもらいなさい》って言ってたんで、試したんす。どれがいいんすか?》
ウツボを焼きたいから、理想は硬い備長炭。でもBBQをするなら柔らかい炭も欲しい。
「あれ? これって竹?」
《それはバブの木っす。節の木に似てるんすけど、外だとあんまり見かけないっすね》
《そちらは精霊の国では比較的見つかります。ご入用でしたら育てることも可能です》
「ホント?」
《はい。植物を担当している子に伝えておきます》
「ありがとう!」
炭を確かめると全部使えそうな木炭だった。
食器と炭は焼くのにどれくらいの時間がかかるのか聞いてみると、半日もあれば焼けるらしい。乾燥も魔法でできてしまうため、時間がかかる行程が必要ないんだそう。
「そしたらさ、お願いがあるんだけど……」
◇
精霊の子達にお仕事をお願いして、私は今お城のキッチンを借りている。
精霊の子達と一緒にご飯を食べようと、いろいろと仕込み中だ。
ウェヌスにはキヒターを呼んできて欲しいと頼み、プルトンは魔道具の子達のところ、エルミスは植物を育ててくれている子達のところ、ポラルはカイーコのところへ訪ねている。
「ふふふふふ」
『主様、怪しすぎるわ』
「いや~、もうすぐアレが手に入ると思うとテンションも上がるよね!」
『主が嬉しそうだと僕も嬉しいですっ』
「くぅぅぅ! グレウス可愛い! そんなグレウスには……はい、あーん」
『あーん。……美味しいですっ!』
両手でほっぺを押さえて美味しいと言うグレウスが愛くるしい!
なにこの子。天使かな? ウチの子可愛すぎない?
クラオルにも「あーん」と、食べさせて二人の可愛さに癒されて悶える。
〈これ全部焼くのか?〉
「そうだけど、疲れちゃった?」
〈いや、ずっと同じ作業で飽きてきた……〉
「うーん。じゃあどこか遊びいってくる?」
《あ! いた! セナちゃん、ちょっとグレンを借りてもいいかしら?》
「大丈夫だよ」
私が許可を出すと、プルトンがグレンの耳を引っ張って無理矢理連れていった。
ジルには大量のお肉をスライスしてもらっているため、グレンが担当していた作業は『しょうがないわね』と、クラオルが蔓を使ってやってくれることになった。
◇
プルトンから《両方バッチリよ!》と連絡がきて、みんなに念話で声をかけた。私も準備は万端。
ウェヌスに迎えにきてもらい、みんなで目的地へ向かう。
目的地に着くと、満面の笑みを浮かべるキヒターと、不機嫌そうなグレンが迎えてくれた。
《女神様!》
「キヒター! ってグレンはどうしたの?」
〈我が使われるなど……〉
《あら、いいでしょ? セナちゃんが喜んでくれるわよ!》
聞けば、広場を作るのに増えすぎた節の木が邪魔だったから、グレンに焼いてもらったらしい。
「ふふっ。そっか。ありがとう」
〈ふむ。セナが喜んでいるから許してやろう〉
グレンが隣りにしゃがみこんで頭を向けてきたので、撫でてあげた。
すぐに機嫌が直っちゃうグレンはチョロい。こういうところが可愛いんだよねぇ。
《セナちゃんの言う通りに作ったけど、ここは何に使うの?》
「ふっふっふ。作ってもらったここは、BBQ場だよ!」
《〈ばーべきゅーじょー?〉》
BBQがわかっていないらしいので、焼肉みたいなもんだと説明した。本場のBBQとは違って、実際に焼きながら食べちゃうから野外炭火焼肉と変わらないと思うしね。
ウェヌスが国にいるほぼ全ての精霊の子達を呼んでグループ分けしてくれたところへ、作ってもらった炭とお肉とその他もろもろを配って歩く。
お肉はもちろん狩った大量のオーク!
私が全部作るのは時間がかかっちゃうため、みんなで一緒に楽しもうという尤もらしい理由を上げて、自分達で焼いてもらう。
炭の良さもわかってくれると思うんだ!
やり方を説明して炭に火を付けてもらう。
声を張り上げなくても風の子が声を届けてくれて、火の子が着火してくれるため「火がつかない!」なんてこともない。
下ごしらえをしたお肉を網の上に並べて焼いていくと、辺りにはお肉が焼けるいい匂いが広がっていく。
焼けたら実食!
〈美味しいぞ!〉
《ふむ。前回とは少し味付けも違うのだな》
「さすがエルミス! この前買ったスパイス使ったんだよ!」
《美味しいわ~! 香ばしい香りが食欲を刺激して、それに負けないピリッとしたスパイスでどんどん食べちゃうっ!》
《えぇ、こちらのソースも酸味と辛みがちょうど良く、味も染みています》
久しぶりにプルトンとウェヌスがグルメリポーターを発揮し始めた。
精霊の子達もとても気に入ってくれたらしく、BBQ場は盛り上がって笑顔が溢れている。
『主様嬉しそうね』
「うん。やっぱりみんなが笑顔だと嬉しくなるよね。いつも手伝ってくれてるから、少しでも気分転換になってくれたらいいな」
クラオルが『主様らしいわ』と笑った。
しばらくするとみんなおなかいっぱいになってきたらしく、地面に座り込む子もでてきた。
いっぱい食べるかと思ってオーク十体分準備したのに二体も消費されていない。そのうちのオーク一体分に届きそうなくらいグレンとジルベルト君のいる私のところが消費している。
二人はまだまだ食べそうだけど、精霊の子達は満足してくれたみたいなので目玉第二弾!
焼いていないお肉や野菜を回収したら「好きな方を食べてね」と、テーブルの上に炊飯機で作ったカラメルなしプリンと大量に作ったワッフルをデデーン!と出した。
精霊の子達も甘いものに目がないのか、おなかいっぱいと言っていた子達もモグモグと食べてくれている。
〈ズルいぞ!〉
「ちゃんと二人の分は別にあるからお肉好きなだけ食べていいよ。これはこの子達のだから食べちゃダメだよ?」
〈わかった! 食べるからな!〉
「はいはい。安心して食べて」
結局グレンとジルベルト君二人でオーク一体をまるまる食べきり、その後宣言通りデザートも食べていた。
この前の宿のご飯はまだ序の口だったのか……胃袋はブラックホールかなにかなのかな? 私は見ているだけでおなかいっぱいだよ。
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