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7章
見捨てられた少年
混雑時間を避けて冒険者ギルドへ着くと、職員が十人以上も大集合した倉庫に案内された。職員は皆悲愴感を漂わせていて、全体的に重苦しい雰囲気だった。
「えっと……この状況は?」
「セナ様から素材の買い取りのためのギルド員です」
いや、それはわかってるんだよ。なんでこんなお通夜みたいな雰囲気なのかを聞きたかったの。
ギルマスはさも嬉しそうな笑顔で、職員達との差が激しい。
「ウチのギルドで買い取りたいのはコチラです」
「はあ……わかりました。出していきますね」
渡されたリストを見ながら素材を種類毎に出していく。
ダンジョンで手に入ったものが終わったら、大量のオークだ。
解体はBBQをしたときに面倒なので無限収納任せで全部やっておいたから楽チン。
土が剥き出しの地面に置くのは不衛生な気がして、氷のテーブルを作って上に乗せていく。
「「「「「えぇ!?」」」」」
「え?」
驚いた職員の声が揃って聞こえて、何かまずかったかと振り返る。
「まぁーーーー!! セナ様は解体までやってくれたのですか!?」
「えっと……グレンが昨日頑張ってくれました」
BBQ場の木を燃やすのを……とは言わないでおく。
グレンはキアーロ国の王都で無限収納で解体したのを知ってるので、〈セナのためだからな〉と話しを合わせてくれた。
ジルは知らないハズだけど、無表情の鉄仮面をキープしてくれている。
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
「私からもお礼を! セナ様はお詫びしてもしきれない程のご迷惑をおかけした私達ギルド員にもお優しいのですね……」
「セナ様は女神様のように慈悲深いのです」
ん? 何か大きな勘違いをされてる気がするぞ。
私は解体に時間がかかって待たされるのが嫌だったのと、無限収納の方がキレイに解体してくれるんじゃないかと打算的な考えでやっちゃっただけなんだけど……
そしてジルはまた信者化発言してるし……
〈出さないのか?〉
「えっ、あ、うん。出す」
否定するタイミングを逃してしまい、再び氷のテーブルの上にオークを部位毎に積み重ねていく。
リストに載っていたモノを全て出して「これで全部ですね」と振り返ると、先程の悲愴感とか打って変わってハジける笑顔の職員達がいた。
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
「あ、はい」
「ふふふっ。お気になさらず。鮮度や傷などを見てからの集計となりますので、少々お時間をいただきます。そうですね……午後には集計し、精算できると思います」
「わかりました」
「そしてコチラが陛下よりセナ様へのお手紙です」
アーロンさんからの手紙を受け取って、職員達の笑顔に見送られながらギルドを後にした。
「なんであんなにコロッと変わったんだろうね」
「おそらくですが、セナ様が解体していたからじゃないでしょうか?」
「えぇ? だって、たった二十体分だよ? 毎日それくらい解体してるでしょ?」
「そうですね……わかりかねますね」
「でしょー?」
〈今日はどうするんだ?〉
「とりあえずアーロンさんからの手紙が読みたいから宿に戻りたい」
職員室の態度の変わった原因がわからないまま宿に戻って、ベッドの上で手紙を開いた。
手紙は驚きの内容だった。
あの貴族の少年は護衛も付けず立ち入り禁止区域に勝手に入ったため、見つかり次第厳罰を与えられるそう。しかも、特に捜索はされず、ダンジョンの調査の際に見つかったら保護される程度。理由は……ダンジョンだとわかった上で入ったのなら腕に覚えがあるんだろう。とのことだった。そして「我が国には我が国のルールがある。セナが探しにいくことは禁ずる。そんなことより早く王都にきてくれ。暇だ」と締めくくられていた。
相手は子供なのに酷くない? やっぱり一昨日助けにいった方が良かったんじゃなかろうか……
『主様? 難しい顔してどうしたの?』
「あの少年捜索はされないんだって。ダンジョン調べるときに見つかったら保護。しかも見つかったら厳罰らしい」
〈良い心がけだな〉
『主様は心配なのね?』
「うん」
「僕も探しに行かなくてよろしいかと思います」
えぇ!? ジルはいつからそんな冷たい子になっちゃったの!? おばちゃんショックだよ!
《ジルベルト、ちゃんと説明しろ。主が悲しい顔をしているではないか》
「申し訳ございません。こういった場合、捜索され、罰がないとなると必ず真似する者が出てきます。ですので、助けられず、尚且つ罰を与えるとあえてすることで、今後ギルドへの負担を減らす抑制力としたいのだと思います」
「そっか……」
確かに一理ある。前例を作るということだろう。
でも……子供なのに……と思ってしまう私は、地球の感覚が抜けきれず甘い考え方なのかもしれない。
「うーん……やっぱり気になる! 一日経っちゃってるし、アーロンさんからも禁止って言われたけど……気になるものは気になる! グレンとジルは自由にしてていいよ」
私がベッドから下りると、二人共サッと立ち上がった。
二人共乗り気じゃなかったのに一緒に行ってくれるらしい。優しい!
◇
街の入り口に向かっている途中、ギルド近くでプルトンに止められた。
《(セナちゃん、あそこで引っ立てられてる子あの少年よ)》
「え? 見つかったの?」
少年と執事は特にケガをしている様子は見られず、私は胸を撫で下ろした。
彼らは冒険者の男性に連れられ、冒険者ギルドに入るらしい。
《(主よ、あれはストーカーだぞ? 見つかる前に離れた方がいい)》
「そうだね。宿出ちゃったから街の中散歩しようか?」
エルミスに促されて、ギルドからそそくさと離れ、街をプラプラと歩き始めた。
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