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第二部 10章
マースールー迷宮たる所以【15】
ダンジョンのことはわかった。私は小猿にも聞きたいことがある。
「ねぇ、小猿くん。グレンが怒ったとき、私をグレンから遠ざけたのは何で?」
『キュキュ~』
『ケガしたら大変だからって』
「でも試練でしょ? 戦ってたのに?」
『ヴィエルディーオ様の気配を感じたから、主様とは戦いたくなかったらしいわ』
クラオルが小猿の通訳をしてくれる。
魔女おばあちゃんの気配?
私が首を傾げると、おばあちゃんが撫でていた手で私の胸元を指さした。
「ん? もしかして指輪?」
『キュキュ!』
合っていたらしく、嬉しそうに小猿が跳ねている。
「刀で腕を切り落とそうとしたのに……」
『久しぶりにヴィエルディーオ様の気配を感じて嬉しかったらしいわ。それに主様の仲間を思う気持ちは強くて優しいって』
「そりゃ大事な家族だもん……腕大丈夫?」
小猿に聞いてみると、マッチョポーズをとって大丈夫アピールをしてくる。おばあちゃんもケガはすぐ治ると言ってるから大丈夫っぽい。
おばあちゃんにクラオルがガイ兄と連絡が取れなくなったのはなぜか聞いてみた。答えは神殿エリアに入ったせいらしい。
神殿はおばあちゃんの魔力が溢れているから、外と隔たりがあるんだそう。で、私達を見ていたパパ達は神殿エリアに入った私達を覗けなくなったため、神界で大騒ぎ。だからおばあちゃんがココに呼んだ。ってことだった。
おばあちゃんは説明しながら終始笑っていて、ガルドさん達と話しているガイ兄以外のアクエスパパ、エアリルパパ、イグ姐はそんなおばあちゃんにジト目を送っていた。
ガイ兄はまだまだお話中のため、グレンのリクエストで私達はおやつタイム。おばあちゃんが出してくれたテーブルセットの上にパンやパウンドケーキを出すと、パパ達の機嫌がみるみる直っていく。
「相変わらずセナの料理は美味いのぅ!」
「私が話しているのにずるくないかな?」
ガルドさん達との話が終わったらしいガイ兄が呆れたようにパパ達に話しかけたけど、パパ達はパウンドケーキに夢中で聞いちゃいない。
「ガイ兄のもちゃんとあるよ」
「さすがセナさんだね。エアリル達とは違う。ありがとう」
ガイ兄の方を見ようともしないパパ達を一瞥した後、私に微笑みながらケーキを受け取った。
テーブルに着いたガルドさん達にも渡すと「おぉー!」と四人とも顔を綻ばせて嬉しそう。
ガルドさん達はガイ兄とそこそこ長い時間話していたからか、緊張が解れていつも通りに戻っていて安心した。
サングリアのようなワイン漬けにしていたドライフルーツで作ったパウンドケーキは小猿も気に入ったらしく、夢中で食べている。
食べながらパナーテル様は大丈夫なのか聞いてみたら、イグ姐の機嫌が一気に悪くなり、ワインゼリーとワインシャーベットも出すハメになった。
それ以上は聞けなかったけど、カリダの街のあの教会事件から仲直りしていないっぽい。
パナーテル様用のお土産をパパ達に頼もうと思ったら、おばあちゃんにまで「気を遣わなくていい」と言われてしまい、お土産のスイーツはみんなのおなかの中へ。
確かにあの事件はシスターさんがいい人じゃなかったら危険だったけど、ハブは可哀想。私がそう言うと、「セナはわかっていない」とアクエスパパに怒られた。なんでも、一度奴隷に落とされたら、そこから這い上がるのは難しいらしい。例え、私みたいに魔法がチート級に長けていたとしても。エアリルパパいわく、「自分が加護を与えた人物を考えもなしに窮地に追いやるようなことは、神としてしてはいけないこと」なんだって。特に私の場合、パパ達全員の加護持っているのにパパ達の許可を取らなかったことが大問題なんだそう。私に不備が一切ないから余計に。
パナーテル様にはぜひお仕事を頑張ってもらってパパ達と仲直りして欲しい。私が会いたいかと聞かれたら微妙ではあるけど……
このダンジョンに入るために街を出てから一度もパパ達にご飯を渡していなかったからか、パパ達からご飯も求められた結果、この空間に二泊もすることになった。
その間ガルドさん達はパパ達とよく話していて、私はこのダンジョンのことをアーロンさんにどう報告をするかグレン達やおばあちゃんと相談。
小猿がなぜか私に懐いて離れたがらなかったため、従魔契約ではないけど繋がりを持つことになった。私が望めば召喚できるらしい……それに私のコテージの空間にも遊びに来られるようにと、おばあちゃんが小猿に腕輪を渡していた。ダンジョンと繋げると万が一にも他人が来ちゃうかもしれないから腕輪なんだって。
ガルドさん達をコテージに呼ぶ許可をもらい、パパ達のお仕事ストレスが解消された三日目のお昼すぎ、私達は戻ることに。仕事を手伝えと言うパパ達を笑いながら神界に強制送還したおばあちゃんに見送られて、私達は一度ダンジョンへ。
ダンジョンで小猿と別れ、石碑があった部屋から転移装置で入り口まで戻った。
戻った私達を見たグーさんは涙を流しながら喜んでくれた。私達が戻ってこないんじゃないかと、かなり不安だったみたい。
心配性なグーさんに「疲れが取れるまで休んでってください!」と押し切られ、グーさん宅にも泊まることに。
私がちょっといろいろと作っている間、グレン達は暇だからと森の魔物を狩ってあげていて、さらにそれをジュードさんが調理。グーさんは「ご馳走様だ!」と大喜びだった。
グーさん用のポーションを大量生産、倉庫を時間経過しないように改造、冷蔵庫のような冷却庫も製作。
そんな日々を送ること一週間。
「いっぱいありがとうございました! 魔道具やご飯など……この御恩は忘れません! 本当にお手紙書いてもいいんですか?」
「うん! もちろん! 私達もお手紙書くね」
こちらを窺うように聞いてきたグーさんにニッコリと笑いながら返すと、パァーっと笑顔を弾けさせた。
ブンブンと手を振るグーさんに見送ってもらい、私達は馬車に乗り込んだ。
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