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第三部 12章
ご飯は人を笑顔にする
しおりを挟むガルドさんの「セナを助けてくれた人達にお礼を言わないとな」との一言で、天狐達に紹介することになったんだけど……これはどうなんだろうか……
ガルドさん達と天狐達は、それぞれおばあちゃんが用意してくれたテーブル席で向かい合い、私はお誕生席でグレンの膝の上に座らされている。
両者の見つめ合いでちょっと気まずい中、私が天狐達を紹介した。
「えっと、まず私が送られた先にいた天狐……さん。天狐さんの友達の元国王様であるジィ……ジャレッド・ジュラルさん。そのジャレッドさんが私に付けてくれたメイドのア……リシアさん」
「セナと一緒に行動していた【黒煙】パーティのガルドだ。そして、ジュード、モルト、コルト。セナのパーティのグレン、ジルベルト……他の従魔の名前はセナに聞いてくれ。記憶を失ったセナを助けてくれて大変ありがたい」
「うむ」
頭を下げたガルドさん達にジィジ……ジャレッドさんは頷いただけだった。
それで冒頭よ!
何なのこの「娘さんを僕に下さい!」って挨拶しにきたけど、厳格な父親との間に流れる雰囲気みたいなのは! 沈黙よ、沈黙!
私は結婚なんかしてなかったし、経験なんてしたことないけど、こんな感じじゃないの!?
〈……セナ……我は久しぶりにセナのご飯が食べたい〉
「えぇ!? 今? このタイミングで?」
〈ダメなのか?〉
相変わらずマイペースなグレンに、どうしようかと考える。
この気まずさの中よく食べる気になるよね……いや……もしかしたらこの雰囲気を打破できるかもしれない。
「わかった。じゃあ、みんなでご飯にしよう! みんなで食べた方が美味しいからね! 作ってあるやつになるから……」
無限収納をスクロールして、ここにいる全員が食べられるものを探す。
ちょうど作り置きしてたからパンはいっぱいあるけど、全員同じは難しい。いつものメンバー分は大丈夫なんだけど……
「うどんでもいい?」
〈む……肉ではないのか?〉
「あ! ならピザは? ピザなら生地があるから焼くだけでみんな食べられるよ。お肉のピザじゃダメ?」
〈いいぞ! ピザはセナしか作れないからな!〉
「じゃあ、そうしよう! 量が多いから、ジュードさん手伝ってもらってもいい?」
「もちろんー!」
話しを聞いていたおばあちゃんがオーブン付きのキッチンを出してくれたので、二人でピザ作り。
途中、アチャも手伝いを申し出てくれたから、トッピングをお願いした。
ふと、顔を上げるとテーブルでガルドさん達とジィジが探り合っていて、奥のソファでパパ達がくつろいでいるような位置取りに笑ってしまった。
もうこれ、大きな戸建てじゃん。ダイニングテーブルとリビングのソファみたいな。そのまわりでネラース達がじゃれ合っていた。
ちなみにパナーテル様と眷属は〝ご挨拶〟が始まる前におばあちゃんによって強制送還されたからここにはいない。
「できたよー! まずは定番のマルゲリータね。で、鳥の照り焼きピザ、プルコギピザ、アンチョビピザ、シーフードピザだよ!」
ドンドンドンとそれぞれのテーブルに載せていく。
〈セナ! 我はコメが欲しい!〉
「コメって?」
ピザを前にグレンは今日もピザをおかずに白米を食べたいらしい。
嬉しそうなグレンに天狐が首を傾げた。
「えっとね……シラコメだよ。忌避感があると思うから、天狐達はこっちのパンどうぞ」
「シラコメ!? あれ食べるの!?」
「うん。炊けば美味しいんだけど、無理しなくて大丈夫だよ?」
「あ、あの……わたしも試してみたいのですが……」
「アリシアちゃん正気!?」
「だって……こんなに美味しそうな料理初めてです。作っているときもとてもいい香りだったので、グレンさん? が言うなら、美味しいのかなって……」
ジィジと天狐にバッ! と見られたアチャは顔を赤くしなからモジモジと答えた。
「……己も試そう」
「えぇ!? ジャレッド、あなたまで……」
「お米自体には味付けはしてないから、忌避感さえ大丈夫なら平気だと思うよ」
〈セナ!〉
「はいはい。ちょっと待ってね」
天狐と話している最中にグレンに急かされ、急いでご飯をよそう。
前にガルドさん達も食べてたし、パパ達もチラチラと見てくるからとみんなに配る。結局、天狐と私と小さなクラオル達以外は食べることになった。
前にいっぱい炊いておいてよかった……
「では、いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」
私達の食前の言葉に驚いていた天狐達もみんなが食べ始めたのを見て、ピザに手を伸ばす。
「……うまい」
「な、何よこれ!」
「ん~! 美味しいです!!」
ジィジ達も気に入ってくれたみたい。
私も久しぶりのピザは美味しく感じる。
先ほどまでの気まずさはなくなり、ジュードさんは「こっちも絶品だよー」とジィジ達に違うピザを勧めている。
『うふふ。主様嬉しそうね』
「うん。食の好みが一致してよかった。それに……みんなに会えたんだなって実感するね」
〈む! もうなくなった……セナ! おかわりは!?〉
グレンの催促に私とクラオルは笑い合い、ピザを出した。
◇
食べ終わり、食後のお茶をジルに淹れてもらう。
「はぁ~……美味しかった! シラコメも思ってたのと全然違って美味しいなんて! セナちゃんって料理上手だったのね。あのスープは驚かされたけど、納得したわ」
「スープ?」
「セナちゃんが一度、雪族の村で作ってくれたのよ。辛味酒入りで薄紫色だったわ……って、そんな目で見ないでちょうだい。色はあれだけど、すごく美味しかったんだから」
〈セナ、新しい酒か?〉
「うん。多分あれはウォッカはウォッカでも辛口のウォッカだと思うんだよね。あのときは記憶がなかったから勘で入れたんだけど、大丈夫でよかった」
「勘……まぁ、美味しかったからいいわ」
ちょっと天狐にジト目を送られた私は苦笑い。匂い的に大丈夫だと思ったんだけど、勘が癇に障ったらしい。
「……セナは…………セナにとって己はまだジィジなのか?」
「んん? えっと……そう呼んでもよければ?」
どういう意味なのかわからないまま答えると、ジィジはどこかホッとした様子だった。
ジャレッド・ジュラルを略して呼ぼうとしてジィジになっちゃっただけなんだけど……言わない方がよさげかな?
「さっき言ってたけどアタシがママ?」
「それだとわたしはお姉ちゃんでしょうか?」
「うん。私にとってはそうなんだけど……ごめんね」
「あら? なんで謝るの?」
「記憶取り戻したとき気まずそうだったから嫌かなぁって……」
「それは! ……あの女神が自分がママっていうから……女神がママなのに自分がママなんておこがましいじゃない……」
天狐が少し恥ずかしそうに言うから、可愛さに笑みが零れる。
「私にとってママはパナーテル様じゃなくて天狐だし、お姉ちゃんはアチャだよ」
「……そう!」
「嬉しいです!」
天狐は嬉しそう。
我慢しているけど、笑ってしまう……みたいな。口元がニヨニヨしている。
アチャもアチャで「メイドですけど……えへへ」と笑顔だ。
あの中身が丸っきり子供だったときと変わりすぎて嫌われちゃったのかと思ってたけど、大丈夫っぽい。
よかった! 大好きな三人だからね!
「……セナは冒険者になるのか?」
「うん。そのつもりだよ。色んなところ行きたいし。ちょっとゆっくりしてからかな?」
「……そうか……すぐ、行くのか?」
「あ! それはね……もうちょっとお城にお邪魔させてもらってもいい? ちょっとやりたいことがあるの。ね? おばあちゃん」
「ヒャーヒャッヒャ! アレを断つんじゃな?」
「アレとは?」
不思議そうなジィジ達に説明をして、計画を練る。
ガルドさん達はまだガイ兄のお使いの途中のため不参加。
クラオル達や精霊達はもちろん、グレンやジルも協力してくれることになった。
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