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16章
カチコミ
しおりを挟む思っていた通りの反応をしてくれるアデトア君に緩む頬が抑えられない。
「とりあえず降りられる場所教えてくれるー?」
「あ、あぁ……城をそっち側に回れば大きなバルコニーがある!」
「りょーかーい! グレンお願い」
ホバリングしていたグレンはアデトア君が指差していた方に進路をとった。
お城を回り込み、指定されたと思わしきバルコニーへ。
そこにはすでに何人もの騎士が武器を構えて待っていた。
「やめろ! 手を出すな! 国を滅ぼしたいのか!」
騎士達の後ろの方から、アデトア君の声が聞こえてくる。
でも騎士達はこちらをガン見で武器を下ろそうとはしていない。大半は手足がガクブルしてらっしゃるけどね。
騎士達の様子が気にくわなかったのか……グレンは私達が乗った籠を下ろした後、咆哮を上げた。威圧のおまけ付きで。
それをモロにくらった騎士達は倒れる者、失神する者、頭を抱えて座り込む者とさまざま。
あらら……ダブルの意味で怒られないといいんだけど。
「グレン、威圧しないの。いつものグレンに戻って?」
〈フンッ。どちらが上かわからせただけだ。……これでいいか?〉
「うん、ありがとう」
アーロンさんやミリエフェちゃん達は大丈夫か振り返れば、穏やかそのままのフェムトクトさん以外の二人は興奮したように瞳を輝かせていた。
「すごいです! みなグレン様にひれ伏しています! さすがです!」
「ドラゴンと会えるなんぞ稀だからな! 貴重な体験だぞ!」
(あ、全然気にしてなかった。これは大丈夫だね。アーロンさんなんてドヤ顔だし……)
〈うむ!〉
(いや、グレンさん。得意気なところ悪いけど、ひれ伏してはいないよ……)
「セナ!」
心の中でツッコミを入れている間に、アデトア君が人混みをかき分けてきた。さっき見たまんま私が作った半目アライグマの仮面を被っている。身長が伸びている分、違和感がすごい。
やっぱ魔力の暴発はしないってなってもすぐには仮面ナシにはならなかったか……
「やっほ~! よっと」
「お、ま、え、なぁ……!」
お怒りのアデトア君はスタスタと歩いてきて、籠から降りた私の顔をガシッと掴んだ。顎側から掴んだ右手に、徐々に力が加えられていく。おかげで私の両頬は片手でムニィッと寄せられてしまった。
「あへほあひゅん……」
「や、柔らかっ――うおっ! 危ないだろ! 殺す気か!」
私の顔を掴んでいる腕目掛けてジルから闇魔法の刃が放たれ、アデトア君はズザザッと後退して回避した。
「これは警告です。セナ様の麗しい頬に触るなど……!」
「もう、ジル。ほっぺに麗しいなんてないから。大体、そんなことで怒らないの。ほっぺくらい触りたいなら触っていいから」
ゆっくりと近付いてきたジルの手を取り、ほっぺへと持っていく。頬に触れた瞬間、ジルの眉毛がピクりと動いた。
「す、すべすべ……ゴホンッ。セナ様、紹介はよろしいのですか?」
「あ、そうだね。アデトア君、アデトア君。奥からシュグタイルハン国の王様でアーロン・シュタインさん。その隣がナノスモ国の王様、フェムトクト・ナノスモさんと第一王女であるミリエフェ・ナノスモちゃん。フェムトクトさんとミリエフェちゃんは最近仲良くなったの」
私が名前を上げるとアーロンさんは手を上げ、フェムトクトさんとミリエフェちゃんはお辞儀をした。
事情を話していたから、三人は彼がお面姿でも驚いた様子はない。
「で、こちらがアデトア……………………アデトア君ってファミリーネームなんだっけ?」
「ヴィルシルだ! アデトア・ヴィルシル! なんで覚えていない!?」
「ごめんごめん。国名と一緒だったね。アーロンさんみたいに、たまに国名と違う人いるからさ。今本人が言っちゃったけど、アデトア・ヴィルシル君。ここヴィルシル国の第一王子で王太子。私のお友達だよ」
「アーロンだ。セナから話は聞いている。よろしくな」
「隣国ではありますが、お会いするのは初めてですな。フェムトクト・ナノスモです。お会いできるのを楽しみにしておりました」
「ミリエフェ・ナノスモです」
初対面の王族はそうすると決まりがあるのか、ごく自然に四人は握手をしていた。
「……で、お前は! 来るなら来ると連絡をしろ!」
「ん? 連絡してなかったのか?」
「ちゃんとしたよ~。チェックされてたら私の名前だとハジかれそうだから、ジィジのお手紙に一緒に入れてもらったもん」
アーロンさんに聞かれ、説明すればジィジが同調するように頷いた。
――〝今度みんなで遊びに行くね!〟
簡潔でわかりやすく一文にまとめたモノではあるけど、立派な手紙だ。
「……あれか! あれをお前は手紙と言うのか!? 一言しか書かれていなかっただろうが! 普通は〝いついつ頃お伺いしたいです。ご都合はいかがでしょうか?〟って書くんだよ!」
「ハッハッハ! アデトアだったな、セナの場合は連絡がくるだけマシだと思っていた方がいいぞ。オレは今回、執務室に来たと思ったら〝三日で二週間分の仕事をしろ〟だったからな」
「なっ……!?」
アーロンさんのせいでアデトア君に信じられないものを見るような目を向けられた。
そんな目をされるのは心外だ。
お仕事が溜まっていたのはアーロンさん自身のおサボりが原因のハズ。それに私がアポ取りのお手紙なんか出したら「何かあったんじゃないか」って大騒ぎしそうじゃないか。
そう言えば、アーロンさんは「間違いないな」と笑った。
「これでもちゃんとその人に合わせてるんだよ? アデトア君は私からの手紙が改まった口調と書式のがよかった? 次から〝アデトア様とお会いしたいです〟って送ろうか?」
「え…………いや……気持ち悪くて別人なのかと疑うな……うん、そのままでいい」
「ちょっと! 気持ち悪いって失礼じゃない!?」
「ふふっ。セナ様がおっしゃっていた通り、セナ様と仲がよろしいんですね。羨ましい限りです…………本当に」
「――っ!」
ミリエフェちゃんが微笑んだとき、アデトア君がブルッと震えた。
具合が悪いならヒールでもかけてあげようかと思ったんだけど、特に調子が悪いワケではないらしい。
「セナ様、国王がいらっしゃったようです」
ワイワイと騒いでいる中、ジルの発言でそちらに顔を向ければ、知らないおじさん二人に挟まれた王様がいた。
一人は神経質そうな男性。胡散臭そうにこちらを見ている。機嫌はよくなさそうだ。
もう一人はフルプレートアーマーを着込み、フルフェイスタイプの兜を被っているため表情が窺えなかった。ただ、武器は構えていないものの、ピリピリとしたオーラだから警戒しているのがわかる。
雰囲気からして文官と武官……宰相と騎士団長あたりだろうか?
「あ、王様、久しぶりだねぇ」
「あぁ……久しぶり、だな。本日は何用かな?」
「アデトア君と遊ぼうと思ってさ。あ、理由はもう一つあるよ~。……そっちは心当たりがあるんじゃない?」
「心、当たり?」
「うん。ここで言ってもいいの?」
「どのような理由があれど、このように我が国を混乱に陥れるなど到底許容できるものではないですな。一体どのような育て方をされたのやら」
やれやれと言わんばかりに神経質そうな男性が食い気味に口を開いた。
(ふーん。アーロンさんやジィジがいるのにそんな態度するのか。私はいいけど、ジィジとニキーダをバカにされるのは腹立つんだよね)
王様が一瞬ギョッとしていたから、予想外の発言だったのかも。
ジルとグレンを念話で宥めつつ、王様が口を開くより先に自分のターンに持っていく。
「王様達がこの街に戻ってから三ヶ月以上経ってるよね? それなのに『戻り次第払う』って言っていた、約束したハズのお金はいっこうに振り込まれないし、私には何の連絡もないからどうしたのかなって。お手紙より直接話した方が早いでしょ? だから請求した通り、五十五億九千九百万ゼニ、キッチリ払ってもらおうと思って」
そうニッコリと笑いかけた私の声は、静まり返ったバルコニーによく響いた。
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