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16章
ガチ勢はニワカには厳しい
しおりを挟む戻ったバルコニーは騎士が半数ほどに減っていた。
ただ、変わらず注目されているのに、男子グループと女子グループに分かれ、ラグまで敷いておしゃべりに夢中。ガルドさん達は護衛の役割りがあるからか立ってはいるものの、ちょっとヒマそう。
そんな中、ジュードさんだけがベビーカステラ作りに忙しそうに動いていた。
各グループの真ん中に置いてあるのはベビーカステラか……
「ただいま~」
「あら、おかえりなさい。いいところに帰ってきたわね」
何か問題でもあったのかと思ったら、ただ紅茶が足りなかっただけだそう。用意していた分はメンズの方に渡しちゃったんだって。
視線をそちらに向ければ、アーロンさんがベビーカステラを食べてはガブ飲みしていた。
確実に原因はアーロンさんじゃないか……
好きなだけ飲んでくれとプラスチックのボトルに入れたアイスティーを出し、ジィジ達にもご報告。
「んとね、振り込まれてはいた」
「だから言っ――!」
「五千ゼニ」
「……は?」
アデトア君は理解できないとばかりに呆けている。
その顔は昔SNSで流行った宇宙猫のよう。思わず噴き出しちゃったよ。
「プッ……五千ゼニだよ、五千ゼニ。銀貨五枚ね」
「……違う! そうじゃない! なんでそんな金額なのかと驚いたんだ!」
「さぁ? それは知らないよ。はい、これ。気になるなら確認どうぞ」
ギルドで出力してもらった紙束をパサパサ振ると、アデトア君に奪う勢いでぶん取られた。
そんなアデトア君を横目に見ながら、ニキーダが首を傾げる。
「連絡きてなかったわよね?」
「うん。だからサルースさんに聞いたの。そしたらね、『そんなはした金じゃなくて五十五億以上って話だっただろう? 分割でもなかったし、たった五千ぽっちで連絡なんかしないよ』って言われた」
「まぁ、普通は五十五億が五千になるとは思わんだろうな。待たせた詫び金ってことも考えられなくもないが……その後振り込まれていないなら故意の可能性が高そうだな」
「私もアーロンさんと同意見。調べるなら早い方がいいと思う。あと……街の門を通行止めにした方がいいかもね」
「門を……?」
不思議そうな顔を向けてくるアデトア君にニッコリと微笑みかける。するとすぐに何かに思い至ったのかバッと立ち上がり、騎士達に大声で指示し始めた。
「急ぎ王都の門という門を封鎖しろ! 何人たりとも出すな! 急げ!」
「え……」
「……お前達は古代龍と戦って勝ち目があると思うのか!!」
――グオオオオオオオ!
「責任は俺が取る! 早くしろ!」
「はぃぃぃぃぃぃ……!!」
反応が悪かった騎士達にアデトア君が怒りを露わに叫ぶ。それに合わせてグレンが人型のまま咆哮を上げると、蜘蛛の子を散らすように騎士達がいなくなった。
――三時間後。
私達は以前シュグタイルハン国のパーティーで会った、第二王子を筆頭としたヴィルシル国のお子様御一行と庭にいた。あのお偉いさんの子供達プラスして、レイン少年ね。
いや~、アデトア君も調べに行っちゃったからそのままバルコニーでお昼ご飯を食べてたんだけど……このままだとヤバいと思ったのか、子供同士で交流を~なんて理由をつけて庭に連れていかれたんだよ。
グレンが離れるのを拒否ったため私はグレンの膝の上、両隣にスタルティとミリエフェちゃんが座っている。
ジルは……何故か給仕をするメイドポジションに自ら納まった。外面仕様の能面なのにほのかに得意気なのが謎すぎる。
ジィジ達王様三人とニキーダ達は少し離れた場所にあるテーブル席。ガルドさん達の姿は見えないけど、気配では近くにいるみたい。他にも数人ほどいるから、騎士達と共に警護に付かされているっぽい。
〈セナ、おやつは? ジルベルト、麦茶〉
「はい、ただいま」
「用意してくれてるじゃん。紅茶とシュガーコーティングクッキー」
〈我はセナのがいい。何が入ってるかわからん〉
「なっ……!?」
「お待たせいたしました」
心外だと言わんばかりに顔を赤くした男の子を気にも留めず、ジルが私達四人に麦茶を用意していた。
「んもう、グレン。ワガママ言わないの。せっかく用意してくれたんだよ? 心配なら鑑定すればいいじゃん」
「まあ、まあ。気にしないで好きなものを食べて飲んでくれて構わないよ」
〈ほら〉
「ごめんね。何がいいの?」
〈白いプルプル〉
白いプルプル? そんなもの作ったっけ? 白玉団子のこと?
〈前に食べただろ。フルーツがたくさん入ったゼリーみたいなやつだ〉
「あぁ、牛乳……じゃなくて〝ミルクかん〟ね」
ここで出して大丈夫なのかな? と若干不安を感じつつ、指定されたものをカットしてグレンに渡す。そのとき、ミリエフェちゃんが瞳を輝かせていることに気が付いた。
「ミリエフェちゃんも食べる?」
「はわわっ……! よろしいならぜひ!」
「ふふっ。大丈夫だよ。……あーっと………………フラーマ殿下達も食べます?」
「いただこうかな」
危ない、危ない。名前覚えてなかった。気を利かせたジルが念話で教えてくれて助かったわ。
王子達が食べるのは嫌だったのか……グレンが鼻を鳴らしたから、グレンには追加で盛り付けるハメになった。
「はわぁ……美味しいです!! そして美しい……さすがセナ様です!」
〈うむ! セナしか作れないからな〉
「まぁ! とても貴重なものなのですね……」
「さっぱりして美味しいよ。これはセナ嬢の手作りなのかい?」
「そうですね。別に貴重ではないですけど」
これはレシピ登録してないからお店では出せないんだよな~と思っていたら、王子達は無難に褒めてくれているだけで、予想外にレシピのことを聞かれることはなかった。
ツッコんだ話はしないように言われているのか、思い付かないだけなのか……なんにしてもアーロンさんとは違うね。
さっきまでトゲトゲしいオーラを放っていた男の子も、ミルクかんを食べ終わるころには平常くらいまで落ち着いたみたい。
私はジルやガルドさん達と念話しつつたまに相槌を打つ程度で、王子達との会話はミリエフェちゃんとスタルティにおまかせしていたんだけど……
「セナ嬢の明日の予定はどうなっているのかな? どこか行きたい場所や見たいところとかあればレインが――」
「セナ様はわたくし達と予定があります! そ、そうですよね?」
「え、あ、うん」
「うふふふ……セナ様とのお出かけ、楽しみですぅ」
幸せそうな微笑みを私に向けてくるミリエフェちゃんに対して、レイン少年が悔しそうに睨みつけている。
他のメンバーは苦笑を浮かべてるし……なんか……不穏じゃない?
「し、知らない街は不安だろ……」
「いえ。以前〝初めての街の散策は発見がいっぱいあって楽しいよ。ミリエフェちゃんに似合いそうなスカーフ見つけたから送るね〟とお手紙をいただきましたし、ジルベルト様やグレン様、ガルド様方がいて不安なんてありません。セナ様が好いておられる頼もしい方々ですから」
拗ねるように呟かれたレイン少年のセリフは、ミリエフェちゃんによって即刻否定された。
あぁ……うん。説明調なのが気になるところではあるけど、その手紙送った記憶があるわ。
その後もレイン少年に当たりの強いミリエフェちゃんのおかげでレイン少年はどんどん俯いていき、話題を変えるフォローに苦労することになった。
こっそりスタルティに「ミリエフェちゃんどうしたんだろうね……」って言ったら、「確実にジルベルトタイプだな」なんて恐ろしいことを言われた。
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