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 「フランツ、この大きな船には個室があるのよね?早く行きましょうよ。朝早かったから疲れたわ」

 「あ?ああ。個室ね・・・。連れて行ってやるよ」

 何だがフランツの表情が冷たく感じるわ。機嫌が悪いのかしら?船の下の方に降りて行くにつれ、上の華やかさとはかけ離れてきた。光が入らず暗くなってきたのだ。するとフランツは。見張りがいる1つの扉の前に行き、扉を開け、カレンを中に押し込んだ。床に倒れてしまうが、その床には誰がうずくまっていた。顔を上げると暗くて良く分からないが10人位の同じ歳頃の少女達がいる。中には泣いている子もいる。

 「フランツ、手荒に扱って怪我させたらどうするんだよ。あの子は上玉だろ?」

 外の男がフランツに声をかける。

 「フン、アレくらいなら大丈夫だろ?さ、飯でも食ってくるわ」

 フランツはその場を去り、扉は閉められ薄暗い部屋に他の少女と共に閉じ込められてしまった。



 「何コレ、どういう事っ!?」

 思わず呟いてしまう。

 すると、そばにいた少女が抑揚のない声で答えてくれた。

 「私達は隣国で売られるんだって。多分変態ジジイの慰みモノになるんだよ」

 ソレを聞き、泣いていた少女は更に大きく泣いてしまった。

 「ま、まさか」

 「人身売買だよ」

 最悪っ!!最悪の事態じゃないっ!!

 こんな事なら歳の離れたオジさんに嫁いだ方がまだマシだった!?

 「に、逃げる方法は?」

 「すでに試してるわよ、無いわよ」

 その時、船は無情にも動き出してしまった。



 薄暗い部屋の中には扉が1つあり、そこがトイレだった。小さい窓があるが人が出れる大きさでは無い。食事は硬いパンと水が1日2回のみだ。もちろんシャワーは無く、狭い部屋に10人も押し込められて暑い。

 光がほとんどない部屋では時間の感覚も日にちの感覚も全く無い。

 当初は隣国に行くと言っていたが本当だろうか?

 最初に泊まった港でカレンと何人かが下された。皆、緑の瞳だった。

 「ココは緑の瞳の娘が高く売れるからな」

 港からほど近い家に連れて行かれ、シャワーを浴び身綺麗にさせられた。そして白いシンプルなワンピースに着替えさせられる。

 その家では久しぶりに暖かいが具の少ないスープと今までよりは硬くないパンが与えられた。

 食べ終わると、すぐに別の部屋に連れて行かれる。長椅子があり、皆同じ方向を向いて座るように言われる。前を見ると窓がある。そして何人かの人もいるようだ。

 ああ、外にいるオヤジに買われるのか。と冷めた心で思ってしまう。ソフィアに結婚を擦りつけた罰だわ。


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