記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
​「……ここは?」
​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。

​私は一体、誰なのだろう?
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