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エピローグ
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その後の物語は、大して語ることなどありません。
ランドルフ伯爵家は滅び、その領土はもちろん、我がテスタロト家が引き受けました。
彼らが無駄に建設した建物を取り壊すのには骨が折れましたが、資材がたくさん手に入ったので、良かったと思いましょう。
今日も私は、ただ一人……。
庭で紅茶を楽しんでおります。
「……お嬢様」
メイドが話しかけてきました。
「あら。一緒に紅茶でもいかが?」
「いえ……」
何やら、困ったような……。
……さも、暗い話をこれからしますよ。と言ったような顔をしています。
「……なにかしら」
「マリナ様が、泥棒で捕まったそうです」
「まぁ。泥棒?」
「えぇ。……とある貴族の家で、口にするのもはばかられるような職を与えられていたそうですが、それに嫌気がさして、金品を盗み、逃げ出したのだとか――」
「馬鹿な方ですね……。……そこでなら、満足な食事も手に入れられたでしょうに。牢に入っても、同じことをするだけ。……いやむしろ、もっと酷い有様でしょうか。まともな食事をとることも許されないでしょう」
メイドが緊張した様子だったので、私は微笑みかけました。
「そうはならないように、私は清く正しく生きねばなりませんね」
「アリア様は、もう……。十分そうあると思われます」
「あら。嬉しいことを言ってくれるじゃない」
「……」
「……どうしたの?」
「その、もう一つ」
「今日はニュースが多いのね。……ローイ様のことだなんて、言わないでほしいわ」
「……ローイ様が、捕まりました」
ある意味お似合いの二人かもしれません。
まさか、同じ日に捕らえられるなんて。
「ローイ様は、どこで?」
「ここより馬車で六日ほどかかる土地にて、人を襲ったとか、なんとか……」
「あんな男にも、勇気があったのですね」
その勇気を持ってすれば……。
我が領土に火を放つことも、可能だったかもしれません。
まぁ、全ては終わったことですが。
「やっぱりあなた、一緒に紅茶を飲みましょう?」
「いえ、私は……」
「良いのよ。何てったって今日は――記念日じゃない」
「記念日、ですか」
「えぇ。テスタロト家に喧嘩を売った、両家の子供たちの人生が、終わった日――」
「情報が入って来たのが、今日というだけで……。実際には、ズレが生じておりますが」
「もう。細かいことは良いのよ。ほら、飲んで?」
「……ありがとうございます」
あの日も、紅茶を飲んでいたことを思い出しました。
きっと、これから先――。何度もこんなことが起きてしまうのでしょう。
伯爵家の令嬢として、毅然とした態度で挑まねば……。
そんな決意を抱きながら、飲む紅茶は、ちょっぴり苦く感じました――。
ランドルフ伯爵家は滅び、その領土はもちろん、我がテスタロト家が引き受けました。
彼らが無駄に建設した建物を取り壊すのには骨が折れましたが、資材がたくさん手に入ったので、良かったと思いましょう。
今日も私は、ただ一人……。
庭で紅茶を楽しんでおります。
「……お嬢様」
メイドが話しかけてきました。
「あら。一緒に紅茶でもいかが?」
「いえ……」
何やら、困ったような……。
……さも、暗い話をこれからしますよ。と言ったような顔をしています。
「……なにかしら」
「マリナ様が、泥棒で捕まったそうです」
「まぁ。泥棒?」
「えぇ。……とある貴族の家で、口にするのもはばかられるような職を与えられていたそうですが、それに嫌気がさして、金品を盗み、逃げ出したのだとか――」
「馬鹿な方ですね……。……そこでなら、満足な食事も手に入れられたでしょうに。牢に入っても、同じことをするだけ。……いやむしろ、もっと酷い有様でしょうか。まともな食事をとることも許されないでしょう」
メイドが緊張した様子だったので、私は微笑みかけました。
「そうはならないように、私は清く正しく生きねばなりませんね」
「アリア様は、もう……。十分そうあると思われます」
「あら。嬉しいことを言ってくれるじゃない」
「……」
「……どうしたの?」
「その、もう一つ」
「今日はニュースが多いのね。……ローイ様のことだなんて、言わないでほしいわ」
「……ローイ様が、捕まりました」
ある意味お似合いの二人かもしれません。
まさか、同じ日に捕らえられるなんて。
「ローイ様は、どこで?」
「ここより馬車で六日ほどかかる土地にて、人を襲ったとか、なんとか……」
「あんな男にも、勇気があったのですね」
その勇気を持ってすれば……。
我が領土に火を放つことも、可能だったかもしれません。
まぁ、全ては終わったことですが。
「やっぱりあなた、一緒に紅茶を飲みましょう?」
「いえ、私は……」
「良いのよ。何てったって今日は――記念日じゃない」
「記念日、ですか」
「えぇ。テスタロト家に喧嘩を売った、両家の子供たちの人生が、終わった日――」
「情報が入って来たのが、今日というだけで……。実際には、ズレが生じておりますが」
「もう。細かいことは良いのよ。ほら、飲んで?」
「……ありがとうございます」
あの日も、紅茶を飲んでいたことを思い出しました。
きっと、これから先――。何度もこんなことが起きてしまうのでしょう。
伯爵家の令嬢として、毅然とした態度で挑まねば……。
そんな決意を抱きながら、飲む紅茶は、ちょっぴり苦く感じました――。
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