あと一週間で、聖女の夫になることができたのに……。残念でしたね。

冬吹せいら

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狂った令息

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「お前……。どうして顔の痣を消さない?」
「え……?」

今晩も、トレバー様の部屋に呼び出された。

毎晩毎晩。呼び出されては、至るところを殴られる。
これならば、体を奪われる方が、幾分かマシだった。
どうやら彼は、そういった行為よりも、人に暴力を加えることの方が、気持ちよく感じるらしい。

完全に外れだった……。とんでもない男。

最近は、国中に流れる噂のせいで、より一層、暴力のレベルが上がっていた。

多分、私の骨には、ヒビが入っていると思う。

そんな中、こんな質問をされたのだ。

「今すぐ消すんだ。そうでないと、国王に顔を見せに行けないだろう?」

……私の魔法の実力を、知っているくせに。
痣を消す……。すなわち、白魔法。

白魔法は高度過ぎて、学園でも数人程度しか、使うことができないのだ。
それこそ、ルイーザのような、優秀な生徒でないと、使いこなすことは難しい。

まさか、それを知っていて、あえてこんなことを?

「消せないなら……。お仕置が必要だな?」
「ひっ……。やめてください。アレはもう」
「アレ? どれのことだろうな……」

トレバー様の手には……。小さな棒が握られている。

「もしかして、これか?」
「嫌……」
「ほらよ」
「ああああああああ!!!!」

あの棒には、雷魔法が込められている。
肌に触れた瞬間、理解できないほどの痛みが、体中を駆け巡るのだ。

白目をむきながら、痙攣する。
そんな私を見て、トレバー様は、笑っている。

「っあああ……。あぁ……」
「今日も良い声で鳴くねぇ。さすがだよリアム」
「やめて……。もう嫌ぁ……」
「……いいか? 今度、国王に会いに行く時。その痣は、転んでできたものだと言うんだ」
「はい……。もちろんです」
「よし。じゃあ、あとニ十分だな。僕は他のメイドを虐めてくるから……。その間、この棒を、体に括り付けてあげるよ」

……嘘だ。
たった数秒でも、意識が飛ぶほどの痛みだったのに。

ニ十分なんて、本当に死んでしまう!

「心配しなくていい。死んだらより強い電流が流れて、心臓の動きを復活させる仕組みになってるんだ」
「そ、そんなの、聞いたことありません! 死んでしまったら、生き返ることなど!」
「僕もそう思っていたんだ。だけどね……。思ったよりも、世界は前に進んでる。死んですぐなら、生き返ることができるんだ」
「やめてください! なんでもします! どんな奉仕でもしますからぁ!」
「奉仕……? 汚いなぁ。それでも伯爵令嬢か? まだルイーザの方が、気品があったよ?」

あぁ。
もうダメだ。
私はこの人に、壊されてしまうんだ。

深い絶望の中……。
私の体に、いくつもの棒が、巻き付けられていった。
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