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団結する人々
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「カムラ様! ちょうど良かった! 美味い魚が入って――」
王宮から戻ってきたカムラは、冴えない表情をしていた。
集まってきた街の人々が、カムラを心配するように取り囲んでいる。
「何があったんですか? カムラ様」
「……たった今、婚約を破棄されてしまいました」
人々が驚いたように声を上げる。
心配させないようにと、カムラは無理矢理笑みを浮かべた。
「元々……。身分不相応の婚約でしたから、驚くことではありません」
「し、しかし……」
「なんてこったい。……あのクソ王子め」
落ち着いた様子のカムラに対して、街の人々は次々に怒りを露わにしていった。
「意味がわかんねぇよ。どうしてカムラ様が婚約を破棄されなきゃならないんだ」
「そうよね。どうせあの王子のことだから……。別の女の尻を追いかけ始めたんじゃないの?」
「み、皆さん。私は大丈夫ですから……。お気になさらず」
「気にせずにはいられるかい! 俺たちのカムラ様をコケにしやがって!」
「そうだそうだ!」
人々の声は、どんどん大きくなっていく。
「……そう言えば昨日、伯爵家の令嬢が王宮に向かうところを見たな。カムラ様、もしかしてクソ王子の浮気相手っていうのは――」
「……はい。その通りです」
「なんてことだ……」
「許せねぇ。あの王子にあの令嬢。こんな最悪なことがあるか?」
「えっと、その……」
「カムラ様! あたしに一つ提案があります!」
若娘が、大きな声を出しながら手を挙げた。
注目が集まると、少しだけ恥ずかしそうに俯いたが、すぐに調子を取り戻す。
「伯爵家の工場で働いてる人は……。毎日激務で大変そうなんです。きっと伯爵家への強い不満を持っているはず。……みんなで協力して、ストライキをするっていうのはどうでしょうか」
「おぉ! そりゃ名案だな!」
若娘の提案に、多くの人々が賛成した。
しかし、カムラはやはり乗り気ではない様子。
「そんなことをすれば……。一体どんな制裁を加えられるかわかりません。皆さんが危険な目に遭うようなことは、できれば避けていただきたいです」
「……伯爵家にも王子にも、街のみんなはず~っと不満を抱いてきたんだ。そこでさらに、俺たちに親切にしてくださってるカムラ様まで侮辱してきたんです。ここが頃合いだと、僕は思いますよ」
どうやら、人々の気持ちは一つらしい。
確かに皆が言うように、この国を取り締まる王家や、街の人々からの税金回収を任されている伯爵家を放置したままではいけないと、カムラはずっと考えてきた。
……ここが、その抵抗の時なのだろうか。
「……無理はしないこと。それだけ約束してください」
こうして、男爵令嬢カムラと街の人々の抵抗が始まったのだった。
王宮から戻ってきたカムラは、冴えない表情をしていた。
集まってきた街の人々が、カムラを心配するように取り囲んでいる。
「何があったんですか? カムラ様」
「……たった今、婚約を破棄されてしまいました」
人々が驚いたように声を上げる。
心配させないようにと、カムラは無理矢理笑みを浮かべた。
「元々……。身分不相応の婚約でしたから、驚くことではありません」
「し、しかし……」
「なんてこったい。……あのクソ王子め」
落ち着いた様子のカムラに対して、街の人々は次々に怒りを露わにしていった。
「意味がわかんねぇよ。どうしてカムラ様が婚約を破棄されなきゃならないんだ」
「そうよね。どうせあの王子のことだから……。別の女の尻を追いかけ始めたんじゃないの?」
「み、皆さん。私は大丈夫ですから……。お気になさらず」
「気にせずにはいられるかい! 俺たちのカムラ様をコケにしやがって!」
「そうだそうだ!」
人々の声は、どんどん大きくなっていく。
「……そう言えば昨日、伯爵家の令嬢が王宮に向かうところを見たな。カムラ様、もしかしてクソ王子の浮気相手っていうのは――」
「……はい。その通りです」
「なんてことだ……」
「許せねぇ。あの王子にあの令嬢。こんな最悪なことがあるか?」
「えっと、その……」
「カムラ様! あたしに一つ提案があります!」
若娘が、大きな声を出しながら手を挙げた。
注目が集まると、少しだけ恥ずかしそうに俯いたが、すぐに調子を取り戻す。
「伯爵家の工場で働いてる人は……。毎日激務で大変そうなんです。きっと伯爵家への強い不満を持っているはず。……みんなで協力して、ストライキをするっていうのはどうでしょうか」
「おぉ! そりゃ名案だな!」
若娘の提案に、多くの人々が賛成した。
しかし、カムラはやはり乗り気ではない様子。
「そんなことをすれば……。一体どんな制裁を加えられるかわかりません。皆さんが危険な目に遭うようなことは、できれば避けていただきたいです」
「……伯爵家にも王子にも、街のみんなはず~っと不満を抱いてきたんだ。そこでさらに、俺たちに親切にしてくださってるカムラ様まで侮辱してきたんです。ここが頃合いだと、僕は思いますよ」
どうやら、人々の気持ちは一つらしい。
確かに皆が言うように、この国を取り締まる王家や、街の人々からの税金回収を任されている伯爵家を放置したままではいけないと、カムラはずっと考えてきた。
……ここが、その抵抗の時なのだろうか。
「……無理はしないこと。それだけ約束してください」
こうして、男爵令嬢カムラと街の人々の抵抗が始まったのだった。
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