すばくんの毎日 ～発達障害の子育てエッセイ～

一回だけ。

   夏のお盆の日。

   私は実家に家族と一緒に帰りました。
   私の亡くなった父は父は孫に溺愛をしています。
   初孫ということもあり、生まれたばかりの頃子供に会いに来てくれた時は子供をずっと抱っこしていて離さないぐらいの溺愛ぷりでした。

   そんな父は孫が来ると知るとおやつやジュースを大量に買ってきており、弟はライダーを子供の為に録画していました。
    二人揃って子供を凄く可愛がってくれてて、とくに子供は実家の弟が大好きでした。
   そんな中で夜ご飯の材料を買いに父と子供と私の三人で買い物に行った時、子供がガチャガチャの前に立ち止まったのです。

   瞳をキラキラさせながらガチャガチャを凝視していました。

   せっかくお出かけしてるのだし、一回ぐらいならいっか。
   そう思って声を掛けようとしたら、すでに父が、
「すばくん、どれがやりたいの？」
「これ！」
「じゃぁやろっか！」
「うん！」
   そう言って二人でガチャガチャを回していました。
   きっと父は可愛い孫が遊びに来てくれて嬉しかったのだと思います。
   ガチャガチャを楽しそうに回す子供を嬉しそうな目で見ていました。
   そしてガチャガチャを終えた子供は自分のお目当ての物が手に入って凄く嬉しそうでした。

「じーちゃん、ありがと」

    この時初めてちゃんとお礼まで言えて私も父もつい   感動してしまいました。
    お礼を言われた父は本当に嬉しそうで、
「よし！   すばくんあとも一回ガチャガチャしてもいいよ」
「でもね……一回だけだよ。ちゃんと守らなきゃダメだって……」
   この時初めて私から言われた事を守ろうとしてくれていました。
   本当に嬉しくって、この子に私があの時言った言葉はちゃんと伝わっていたんだと思うと心が温かくなりました。
「えらかったね。ちゃんとお約束守ってえらかったね。帰ったらおやつ食べて、ガチャしたオモチャで遊ぼっか」
   そうやって子供の目線の高さに合わせて、優しく言うと子供は嬉しそうに、
「うん！」
  と言ってくれました。
  この日の出来事は小さな出来事に過ぎませんが、私にとっては子供の成長を感じた出来事でした。