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しおりを挟む『ご主人ーーーーーーーーーーー!!!!!』
突然、隣の部屋から叫び声が聞こえた。
「カリーッ!!!!!?!!!?!!」
................思えばあの時、何故俺はその叫び声をカリーのものだと思ったのだろうか。
俺は今、俺のベッドの上でガツガツと魚を食べる、猫耳としっぽをもつ小柄な少年の様子をただただぼーーっと眺めている。
『ごっ、ごしゅっ、ごしゅじん~~~~!!!!!!!!お、俺、人間、人間になった~~~~~!!!?!!?』
寝室の扉を勢いよく開けた時、その少年と目が合った。くりくりとした大きい目は少しツっていて、髪の毛と猫耳としっぽはカリーの色味そのままだった。
彼の発言と、その見た目から、おそらく。おそらく彼はカリーなのだろうと推測できる。
出来るのだが................
それを飲み込めるかは、また別の問題ではないだろうか。
あの件の睡眠薬が、人化するほどの作用をもつとは............まさかそこまでのものとは思うまい。早めに回収し始めてよかった.........っと、これは現実逃避だな。
少年は大量にあった魚をペロリと平らげ、今は手を舐めていた。................毛繕いのつもりだろうか。
しばらく舐めていた彼だが、満足したのか、毛がないことに今更気づいたのかはわからないが、毛繕い(?)をやめ、ベッドから降り、こちらに四つん這いで近づいてきた。
「ご主人~。ご馳走様。今日もおいしかったよ。」
「あ、あぁ。それは良かったな。」
「うん!」
いい笑顔でお返事をしたカリー(仮)はそのまま、俺の膝の上にぽすんっと座った。
「っっ!!?!! な、何して.........」
「.......? 何って、ここは俺の寝床だろ?おなかいっぱいでまた眠くなってきたんだ。いつもみたいに撫でてくれていいんだぞ。」
「あ、あぁ...............。」
そう言って、気持ちよさそうに目を閉じてしまった。
............まだ俺の頭は回っていない。とりあえず望まれた通りに頭を撫でてやる。
グルグルグルグル
撫でる手に擦り寄り、喉を鳴らす様子は、まさにカリーだった。
「カリー....................」
そこで俺はやっと、やっと、カリーが生きていることを認識できた。
人間の睡眠薬が、動物に、それも小さな猫にどのくらいの影響を与えるのかを考えると怖かった。急にカリーの息が止まってしまうのではないかと思うと、夜も寝られなくなった。............最悪の結末も、覚悟しなくてはいけない状況だった。
カリーは、生きている。よくわからない作用で人間の身体にはなったが、カリーはカリーだ。俺の膝の上で眠る、可愛い、可愛い、俺のカリー。
戻ってきた、以前より重くなった膝の温かさに涙が出てくる。よかった。よかった............。
なぁ、カリー。猫なお前も、人間なお前も、お前であることに変わりはないんだよな。
今度は絶対守るから。危険な目には、もう絶対、合わせないから。
ずっと一緒にいてくれよ。
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