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第八章:ドドスでのエルフ料理?
8-7次なる甘味
しおりを挟むクレープは美味く作れることになった。
後は具材とかを吟味していくつか種類を作れば良い。
そして昨日の夜にウスターさんと話の中で出た氷菓子、ジェラートを作る為に私は今朝から材料の確認をしていた。
「そう言えばお姉ちゃん、ジェラートとアイスクリームって違うの?」
「うーん、基本は似ているけどジェラートの方がシャーベットに近いかな? 油性分も少ないからさっぱり気味だけどその分味は濃厚ね。一番の違いは空気が入ってるのが少ないって事かな?」
アイスクリームはもともと生クリームを冷やしたものらしい。
ジェラートは確かイタリアあたりで作られる氷菓子。
一番の違いは先ほど言った通り空気の含まれ具合かな?
アイスクリームよりはシャーベットに近いけど、今回のは正しく鉄板の上で氷結させるからジェラートと呼べるだろう。
問題はどれだけ空気を入れられるかだけど。
「リルちゃん、材料ってこれで良いの?」
「ああ、ありがとうございますメリーサさん。これで大丈夫です」
流石に生クリームとか獅子牛の乳とかが足らなくなったのでメリーサさんが買い足ししてくれた。
私はそれらを受け取ってまずは獅子牛の乳を温める。
こうして水分を少なくしておくと更に濃厚な味わいになるからだ。
「温めついでにここでお砂糖も入れてっと」
「わぁ、ホットミルク! お姉ちゃん飲みたい!!」
横で私が作業しているのを見ていたルラが寄って来る。
「だめだめ、つまみ食いはいけません。ウスターさんが冷やす台持ってきたらすぐにジェラート作るんだからそれまで我慢ね」
「ううぅ~ジェラートも食べたい~」
人差し指を口に入れながら恨めしそうに温めている獅子牛の乳を見ているルラ。
可哀そうだけど今は我慢ね。
私はある程度粗熱が下がったらそこへ生クリームも流し込む。
よく混ぜて少し粘度が感じられる。
「よしっと、これでもっと冷めたら卵黄とバニラエッセンス入れて準備完了っと!」
これでジェラートの元は出来た。
これをベースに果物の果汁を入れれば更にいろいろな味わいの物が出来るけどまずは一番基本のバニラジェラートだ。
待つ事しばし、常温くらいまでに温度も下がって来たので卵黄とバニラエッセンスをもぜて良く掻き回す。
「なんか良い匂い…… 美味しそうね?」
「ううぅ、我慢我慢……」
横でメリーサさんも加わってルラと一緒に覗き込んでいいる。
私は苦笑しながらスプーンで少しすくって二人の口に放り込む。
「はい、はいっと!」
「あむっ! うぅんっ!?」
「あむっ! あ、これってミルクセーキ!?」
そう言えばルラの言う通りミルクセーキでもあるのか。
寒い冬なんかこれ温めて飲むのもアリかも。
「リルちゃん、これってこのままでも飲めるわね!?」
「ミルクセーキ~」
「はいはい、でも今回はジェラートにするのだからここまでです。これ以上飲んじゃったらなくなっちゃいますよ?」
「「う”っ!」」
気持ちは分からなくもないけど目的が違う。
だからここは我慢のしどころ。
私はこれを少量すくいとり、ボウルに入れる。
「お姉ちゃん何するつもり?」
「うん、泡だて器でどのくらい泡立つか試してみようと思ってね」
液体の粘度は多少は上がっているだろう。
それに卵黄も入っているし糖度も高いから上手く行けば結構泡立つんじゃないだろうか?
そうすれば氷結した時に空気もたくさん含まれ口当たりも良くなる。
カシャカシャカシャ
ボールに入れて掻き回すとだんだん泡が立ってくる。
しかし流石に生クリームまではいかずどんなに頑張ってもそれほど泡立たなかった。
「うーん流石に無理か。でもまあ作る寸前に掻き回して入れるってのはやっておこう」
残念ながら生クリームの様にはいかなかった。
仕方ないのでミルクセーキのレシピだけ書き残してお昼ご飯にする。
「フルーツヨーグルト、クレープ、そしてジェラートかぁ。あと何作ろうかな?」
だんだんと女子御用達の甘味処が増えて来た。
と言うか私も食べたいものばかりだったけどこうして並べだしてみるとなかなかのものになっていないだろうか?
「後もう一品くらいは欲しいかな?」
そんな事を考えながらお昼ご飯のケバブをかじる私だったのだ。
* * * * *
「出来たぞい。さあリルの嬢ちゃん早速そのジェラートとやらを作ろうではないかの?」
昨日の今日で夕方にはウスターさんが冷やし台を作って持って来ていた。
いや、予想はしていたんで既にジェラートの元は作っておいたけどこの人エルハイミさんたちの「鋼鉄の翼」ちゃんと作っているのだろうか?
「今回のは液体を入れる様じゃから縁を上げておいといたぞ? こぼれてしまっては元も子もないからの」
「あ、そっか最初は液体だから気をつけないとこぼれちゃうのか」
言われて初めて気づいた。
今までクレープの事ばかり気にしてたからこう言った細かい所は気付かなかった。
流石有名な職人さん。
こちらの意図を的確にくみ取り素晴らしい道具を作ってくれる。
「ありがとうございます、その事失念してました」
「まあええわい。それよりこれじゃがの使い方はクレープの焼き台と同じじゃが消費魔力がやや大きく成ってしまったわい。お前さんらエルフであれば問題無いが人族ではどうかの?」
そう言ってやはりクレープ焼き台と同じくらいの冷やし台を取り出す。
私はそれを受け取り奇麗に洗ってからもう一度ここへ持ってくる。
「さてと、それじゃぁ始めましょうか!」
私はそう言いながらボールにジェラートの元を取って泡だて器で掻き回す。
程々泡が出たら冷やし台のオーブに手をかざし、魔力供給と温度時間を設定する。
とりあえず設定時間は十分程度。
「おおぉ?」
確かに引き抜かれる魔力が焼き台より大きい。
これってメリーサさんに耐えられるだろうか?
「取りあえずその事は後に置いといてっと」
私はジェラートの元を流し込みへらでそれを掻き回し始める。
ちょうどお好み焼きを焼く時のヘラみたいなのがあったのでそれで薄く引き伸ばし、削り取るように掻き回す。
すると金属面に接していた部分が凍り始めている。
「よっし、それじゃどんどん掻き回してっと!」
削り練り上げを何回も繰り返していくうちに液体物は固形物に変わって行く。
練り上げられたそれはシャーベットよりはアイスクリームに近い感じ。
想定していた通りになったので私はそれをガラスの器に盛りつける。
この間大体八分くらい。
「はい、出来ました、ジェラートの完成です!」
ガラスの器に盛られたそれは間違いなくジェラートだった。
私は皆にスプーンを手渡しすくってみる。
少し柔らかめではあるけどしっかりと固まっていて粘り気も出ている。
まさしくジェラートって感じ。
「ほう、これがの。どれ」
ぱくっ!
「!!」
ウスターさんは口に入れた途端目を見開く。
「何と言う濃厚な味わい! それでいて口の中でさっと溶けるこの感じはまるで雪の様じゃ!!」
言いながらもう一口ジェラートを口に運ぶ。
それを見て私たちもジェラートを口へ。
ぱくっ!
「んっ!」
「うわぁアイスだ!!」
「はうっ! これ甘くて冷たくて美味しいぃっ!
予定通りにジェラートとなっていて濃厚なミルクの味にさっぱりとした甘み、バニラエッセンスの香りがとても合う。
シャーベットよりはアイス寄りに近いのでくちどけもまろやか。
空気をそれでも可能な限り含んだのは正解だった。
「これは旨い! もっと食わせてくれんかの?」
「今作りますけど、これって確かに消費する魔力が多いですね? 後で体に影響が出ない位にメリーサさんも試してください」
私はそう言いながらもう一度ジェラートを作る。
そして結局材料がなくなるまで作る羽目になるのだけど結構と魔力を吸い取られた。
「うーん、魔力消費が大きいからこれって考え所ね?」
「いやいや、それでもこの味なら限定商品として取り扱いましょう。私とお母さん、お父さんの魔力で安全に何個まで作れるか後で試してみましょ!」
あ~、亭主さんまで数に入れられている。
まあ「鉄板亭」の看板メニューになるのだから仕方ないね。
私は疲れたので自分の分で取っておいたジェラートをほおばりながらそんな事を考えるのだった。
応援ありがとうございます!
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