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第十二章:留学

12-35大魔導士杯第二戦目その6

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「さてと、いよいよ私たちの出番ね!」

「うふふふふふ、これでリルさんたちのあられもない姿が見られますわね!!」


 いやなんでいきなり私たちが酷い目になる事前提なのよ!?

 ヤリスもアニシス様もやる気張るけどそれ以外の目論見も強く感じる。
 私は大きくため息を吐いてから言う。


「そんな事言ってるとこの勝負、負けちゃいますよ? ベストフォーに入らないとヤリスはまずいのでしょう、お姉さんが見に来ているんだから」

「うっ、そ、そうだった…… あまりにも眼福過ぎて忘れる所だった」

 眼福って……
 まあその辺は個人の問題なので突っ込まないでおくけど、ヤリスったらずっと覚醒した姿のままなんだからちゃんとしてもらいたい。
 少なくとも今の姿だと身体能力は大幅に上がっているらしいし、魔力量も私たちを軽く凌駕するらしい。
 残念ながら無詠唱魔法は出来ないらしいけど、呪文さえ唱えられれば連続で大魔法を使っても問題無いらしい。

 アニシス様もアニシス様でその卓越した魔法は高速詠唱を取得しているほか、かなりの種類の魔法も使えるらしい。
 簡単な精霊魔法も使える様で、はっきりは見えないけど精霊の気配は感じとれるそうだ。
 更に神聖魔法も使える様で、ほぼすべての魔法を使えるってのは天才的なんだそうだ。


「お姉ちゃん、行こう!」

「あ、うん、行こうか」

 ルラはルラで障害物レースくらいにしか考えていないからいつも通り元気だ。
 私と同じ型の黒にピンク色のリボンでふりふりのワンピース水着姿で屈託なく笑っている。

 そんなルラにちょっと癒されて私はステージを見る。
 そこには今回の対戦相手、ノルウェンチームが既に待っていた。


 ノルウェン王国はウェージム大陸の北西部にある小国だけど、魔晶石の採掘が世界最大でそれにより国力はそこそこある国らしい。
 魔法についても魔晶石を使った研究が進んでおり、噂ではいまだに機械人形がたくさん実稼働しているとか。

 あ、機械人形ってのはある程度自立できる機構を持った女性型の全身甲冑のゴーレムみたいなもので、以前は国防の要とかになっていたらしい。
 高級機種によっては完全に自立して動き回れ、魔力供与しないで動き回れるとか。

 現代では国防は「鋼鉄の鎧騎士」が主流となっているらしく、機械人形はほとんどが王族やお城の警備に回されているとか。


「私たちの相手はノルウェンチームですの?」

「みたいね、相手にとって不足は無い所ね!」


 アニシス様もヤリスも同じくステージの上にいるノルウェンチームを見てそう言う。
 相手側もこちらを見て闘志を燃やしている様だ。


『さ、それでは次の試合を始めます。三戦目は【ノルウェンチーム】対【エルフは私の嫁チーム】だぁ! 両チームとも準備は良いか? それでは三戦目、はじめっ!!』


 両チームとも舞台に上がると司会が軽くチーム紹介をしてから試合開始の合図をする。
 途端に両チームとも走り出し、第一障害の前までたどり着く。


「よっし、こんなの簡単に飛び越えられるわ!」

 ヤリスはそう言って思い切りジャンプをするとルラのチートスキル「最強」並みに上空高く飛び上がる。

 飛び上がるのだけど、あれってどう考えても飛び過ぎなのでは?
 隣ではアニシス様が【浮遊魔法】を高速詠唱して私たち含めて宙に浮かび上がらせている。


「ヤリス、張り切りすぎではないのですの?」

「た、多分そうですね……」

 飛び上がったヤリスを見ると高さはゆうに十数メートル、落下地点を目線で追えばどう見てもプールの中……


「のわぁっ! しまった飛び過ぎたぁっ!!」  


 あ、やっぱし。
 空中で騒ぎ立てるヤリスだったけど、何やら急いで呪文を唱えている様だ。
 唱えている様だけど、間に合わないで大きな水柱を立ててプールに落下する。


 ばっしゃーんっ!


「もう、ヤリスったらまだ始まったばかりですわよ!」

 そう言いながらもアニシス様は私たちを第一障害が終わった足場まで運び呪文を解除する。

 が、魔法を使い始めたヤリスはとんでもない事になっていた。


「こ、こらっ! 引っ付くなぁッ!! 駄目だってそこは、こ、こらぁ///////」


 ヤリスにしては珍しく焦ったような声を上げている。
 どうしたのか見るとあのちっちゃいクラーケンがヤリスにへばりついている。

「なんでヤリスにあんなのクラーケンが!?」

「落下中に呪文詠唱して魔力を高めていたのですわね? ノルウェンチームも第一障害を越えて来ましたわ。ここはヤリス自身に頑張ってもらって私たちは先に進みますわよ!」

「助けないんですか?」

「ヤリスなら魔力を切って覚醒者として力を振るえば大丈夫ですわよ」

 アニシス様はそう言って先を進む。
 確かに高速詠唱できなかったノルウェンチームも同じく浮遊魔法で障害を越えてきたのであまり差が無い。
 ここはヤリス自身に頑張ってもらって自力で脱出してもらおう。


「んもぅ、いいかげんにしろぉっ!」


 ヤリスはそう声を上げて魔力を切ってクラーケンを引っぺがし始める。
 が、それがまずかった。


「ひゃっ///////」


 無理矢理剥がしたので、何とヤリスのビキニの上がクラーケンと一緒に剥がされてしまった!!
 

 おおぉっ!


 何と言うお約束のハプニング。
 まさしく芸能人水泳大会のポロリイベント!

「くっ、返しなさいこのバカ! くっそぉ~」

 プールの中で、それでもすぐに片腕で胸元を隠したからほとんど見られていないとは思う。
 ヤリスは水着をすぐに取り返して呪文を唱える。


「消し去ってやる! 【爆裂核魔法】!!」


 ヤリスがそう言って手をかざすとその先に赤い光が収束して一気に小さくなりその瞬間上空に向かって高熱と爆風の光の柱が立ち上る。


 カッ!

 どがぁあああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁん!!


 その瞬間ヤリスの周りにあった海水とクラーケンたちが巻き上げられ上空高くへ吹き飛ばされ奇麗に塵と化す。
 まるでドラゴンのブレスのようなそれは上空へと放たれたお陰で周辺の空気も巻き上げる。


「おおぉ、凄いヤリスの魔法!」

「って、引っ張られるぅ!」

「リルさん掴まってですわ!!」


 先行していた私たちにまで影響があるそれは危うく私もプールに落ちる所だった。
 アニシス様に手を差し伸べられ何とかプールに落ちるのは回避したけど、ノルウェンチームに追いつかれてしまった。
 そしてヤリスは少々赤い顔して浮いている足場に戻って私たちに追いついて来た。


「くぅ~、見られちゃったかしら?」

「う~ん、ちょっとだけ~」

「ヤリス、うかつすぎですわ」

「取りあえず大事は無かったよね、ヤリス先に進みましょう!」



 合流したヤリスと一緒に私たちは第二の障害物へと向かうのだった。

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