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第十三章:魔法学園の日々

13-5ルラの気持ち

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「リル、それって本当なの?」

「しぃ~、ルラに聞こえますよ」


 私はヤリスにどうやらルラが好きな人が出来たらしいと言う事を伝えた。
 受講中こそこそとヤリスとそんな話をしていると、ヤリスもかなりのめり気味で言う。

「まさかルラが誰かを好きになるなんて…… せっかく胸を大きくする事を手伝うとか言って徐々に私のモノにしようとする計画が!」

「いや、姉の前で何不穏な計画暴露してるんですか。とにかく私としては全面的にルラの応援をしようと思います。ヤリスも手伝ってくださいね」

「え~、ルラもリルも私のモノにするなら良いけど、他の誰かにとられちゃうなんて嫌だなぁ…… そうだ、せめてリルだけでも私のモノになるなら協力してあげる!」

「なぜそうなるんですか? とにかく私もルラもヤリスのモノにはなりませんってば。そもそも女の子同士で何する気なんですか!?」

「何って、そりゃぁ……」

 この後受講中だと言うのに思わず私の悲鳴に近い声が上がり厳重に注意されるのであった。


 * * * * *


「なんか今日のお姉ちゃん変だよ? ヤリスも~」

「な、なんでもないわよ。それよりルラ、最近気になる人っているんでしょ?」

「はぁ~、あたしのルラがぁ~」

 放課後ソルミナ教授の研究室に向かいながらそんな話をしている私たち。
 今日こそはルラの意中の人が誰だか知りたい。

「最近気になる人?」

「そう、誰なの?」

 思わずのめり込みながら聞く私にルラはソルミナ教授の研究室の扉を開きながら「ん~」とか言っている。


「ルラさん、その話本当ですの!?」

「ぶっ!」


 扉を開けて中に入ろうとしたルラがアニシス様のあの大きな胸に顔から突っ込む。
 アニシス様はそのままルラを抱きしめてさらにあの凶器である大きな胸にルラの頭を抱え込む。


「あんまりですわ! 私、ルラさんの答えを待って夜もスィーフの皆さんだけで我慢していたと言うのに! 何故私を選んで下さらないの!?」

「むぐぐぐぐぐぅ」


 涙目でいやんいやんと首を振るアニシス様。
 その都度あの谷間にルラの顔が押し込まれルラがもがき始める。


「アニシス様、その子そのままじゃ窒息死しちまうよ?」

「あ~、いいなぁ、アニシス様の胸気持ちいいのに~」

「昨日も激しかったわね~」

「そう言えばこのエルフたちがアニシス様の所へ来たら私たちがアニシス様に可愛がってもらえなくなる?」


 後ろではスィーフの皆さん、ミリンディア、エレノア、ハーミリア、クロアさんがうらやましそうに見ている。
 って、それ所じゃない!


「アニシス様、ルラが窒息死します! 離して!!」


 私は慌ててルラをアニシス様から引っぺがす。

「ぷはっ! あ~苦しかった…… でも流石におっぱいの大きなアニシス様、確かにおっぱい大きく成れば一番になれるかも……」

「まあ、ルラさんそんなに私の胸が良かったですの? なら私の元へ来て下されば毎日して差し上げますわよ!!」

「アニシス様! やめてください、ルラが毎日窒息死しちゃいます!!」

 はぁはぁとルラを抱き寄せる私。
 指をくわえてうらやましそうにするアニシス様。


「あんたたち…… とにかく部屋に入りなさい。扉の所で痴話げんかされたら私の研究室への変な噂が立つわよ」

 ソルミナ教授は呆れた顔で奥からそう言って早く部屋に入れと言う。
 まあ確かにここで騒いでいたらよくはない。
 私たちは大人しく部屋に入るのだった。


 * * * 


「さて、ファイナス長老と兄さんがもうすぐここへ来るけど、エルフの胸を大きくする研究はとん挫したままです」


 ソルミナ教授はそう言って腕を組んだまま話を始める。
 そして黒板にカツカツとマーヤさんとアレッタさんの名前を書いて線を引き、その向こう側にマニーさんの名前を書く。

「分かっているのは異種族との子作りをしたエルフは皆胸が大きくなっていると言う事です!」

「ソルミナ教授、言い方ぁっ!」

 思わず先に突っこみを入れてしまった私。
 だって言い方があまりにもストレートすぎる。

「何リル? 事実なんだからわかりやすく言った方がいいでしょ?」

「いや、そうかもしれませんがそうすると同族同士じゃ望みが無くなるってことじゃないですか……」

 そりゃぁ、将来異種族で本気で好きになる人がいればそれでもいいだろうけど、今の私にはそんなのは無理だ。
 そもそも、子作りとか今の私には肉体的にも出来ないし、そんな先の話は……


「何一人で顔赤くしているのよ、リル? 耳まで真っ赤よ??」

「な、何でもありません!」


 どきっ! 


 ヤリスに指摘され慌てて将来の妄想を振り切る。
 何を妄想していたかは聞かないでっ!


「とにかく、子作りしていないで胸が大きくなった事例は確認できるだけで一人しかいないわ」

「え? それでも他にそんな人がいるんですか?」

 誰それ?
 そう言った行為をしないで胸が大きく成るだなんて、それってまだ可能性があるって事よね?
 
 しかしソルミナ教授はすぐにその人の話をしないで唸っている。
 一体どうしたと言うのだろうか?

「事例ではあるんだけど、シェルの場合お相手が『育乳の女神』とも言われているエルハイミさんだからなぁ……」

「またエルハイミさんですか!?」

 ああ、だめだこれは。
 いくらエルハイミさんが女神で「育乳の女神様」とか言われててもあの人にお願いするのって無理だ。

 それにあの人たち確かジルの村とか言う場所に行ったままのはず。
 もう一年以上たつと言うのに……


「でもソルミナ教授、シェル様は確かにエルフでも胸が大きいですけど私たち人族にしてみれば普通だったような気がしますけど?」

「そうですわね、シェル様のあの神々しいお胸も拝見してみたいですけど、それほど大きかった印象はありませんわね?」


「そりゃぁ、あの子まだ処女だし」


 言い方ぁっ!!
 ストレートすぎるって、ソルミナ教授!!

 思わず真っ赤になってしまう私にヤリスもアニシス様も平然としている。

「問題はそれでも何らかの効果があるってことよ。そして最後にマニー義姉さん。同じエルフどうしでもあの大きさになると言う事は、きっと子作りも含めて何か要因があるはず!」

 ぐっとこぶしを握るソルミナ教授。
 いや、情熱は分かるのだけどもう少し言い方に気を付けてもらいたい。


「うーん、エルフの人以外に胸をマッサージしてもらうのが良いの? 子作りって何?」

「ルラはあっち行こうね、こういった話はまだ早いから」

 ルラを回れ右させて向こうへ行かせようとすると珍しくルラは抵抗をした。

「やだよ、あたし胸を大きくしたいんだから! でもヤリスに胸揉まれても大きくならないよソルミナ教授?」

「うーん、それは好きな人じゃないからかもね。シェルの胸が大きくなったのはエルハイミさんの事大好きで、それで胸揉まれているからだからだと思うのよ。兄さんは胸の大きな人が好きだからマニー義姉さんも散々されちゃっているだろうしね。通常エルフの女性って胸が小さいから男性のエルフもあまりエルフの女性の胸に興味を示さないからね」

 カツカツと黒板に胸が大きくなる要因を書き込むソルミナ教授。

 だとすると、好きな人に胸を散々あーしてこーしてされちゃうと大きくなるって事?
 しかも必要以上に??


「そうなんだ、じゃあお姉ちゃんあたしの胸揉んで!」

「はぁっ?」


 ルラがいきなり変な事言い出した。
 私の聞き違いで無ければルラの胸を揉めって聞こえたけど……

「だって好きな人に胸揉まれると大きくなるんでしょ? 胸が大きく成れば一番強いから、ずっとお姉ちゃんと一緒にいられるし、あたしのスキル使わなくても強くなれるのでしょ?」

「え、あ、えーと……」

 ルラには好きな人が出来たはず。
 その人はもてるっぽいから、胸を大きくしてその人に告白すれば可能性が上がるはず。
 だから一番になりたいってルラは言っていたはず。

 でも今の話をまとめると、胸が大きく成れば強く成れる、それも一番強くとルラは言う。


「あの、ルラさん。ちょっと聞きたいんだけどルラが好きな人って誰?」

「お姉ちゃんだよ?」

「胸を大きくしたいって、なんで?」

「だってお姉ちゃんは胸が大きいと一番上だって言ったじゃん。確かにアニシス様のあの胸は顔うずめると動けなくなるし、体の力が抜けるからおっぱいって大きい方が武器にもなるよね!」

 いや、あの凶器は色々と武器にはなる。
 とくに精神的にダメージが大きいのは私たちエルフ族にはよくわかる所だ。
 
 しかし、ルラの今までの胸を大きくしたいっていうのは、おっぱいカースト制の頂点を「強さ」の頂点と勘違いしていると?


「ちょっとルラ、あんたの好きな人ってリルなの? 姉妹なのに?」

「こ、これはですわ!!」


 ヤリスもアニシス様も何故かほんのりと赤い顔をしている。
 そしてルラに聞く。


「「もしかして、ルラってリルを愛しているの(ですの)!?」」


「うーん愛しているのかな? とにかくあたしはお姉ちゃんが好き~♪」
 
 あっけらかんとそう言うルラ。
 いや、あの、そういう好きは意味がもの凄く違うんじゃないだろうか?

 しかしそう受け取らない人たちもいる。


「き、近親相〇だわ! いけない愛だわ!!」

「エ、エルフの美少女姉妹が組んづほつれづ…… ぐふっ、もうそれを想像しただけで鼻血モノですわぁっ!!」


 駄目だ、この人達早く何とかしないと……


 こうしてルラの恋愛は大いなる誤解であったことがわかるのであった。














 ……後でマーヤ母さんにその事を話したらもの凄く残念そうにしていたのだった。

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