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第十三章:魔法学園の日々
13-10晩餐会
しおりを挟む「ジュメルがあたしたちの力を狙っているって、なんでですか?」
ファイナス長老の言葉に私は思わずそう聞いていた。
イージム大陸で関わったジュメルの連中は確かにエルフの魂とかは「賢者の石」を作るのに良い材料になるとか言っていたけど、私たちのスキル自体に目をつけていたとは。
「渡りのエルフや女神信教からの連絡を総合すると、リルとルラのそのスキルは異常です。話では黒龍からもその力は女神の力に劣らない、『あのお方』の力だと言われたそうですね?」
そう言われ先日の大魔導士杯を思い出す。
あの時暴走した精霊たちを押さえる為にチートスキル「消し去る」を使った。
そしてルラを通してあの駄女神がやって来た。
その時に言われたのが私の力がこの世界を滅ぼせるとか……
私はファイナス長老のその問に頷きながら聞く。
「ジュメルって一体何を企んでるんですか?」
ファイナス長老に向き直って改めて連中の意図を聞く。
するとファイナス長老は軽くため息を吐いてから言い出す。
「結論から言うとこの世界の破滅ですね。その時代時代で多少はその意図は変わっていますが、根底にあるのはこの世界の破滅です」
いや、破滅って。
それに何の得があるというのだろうか?
私が納得いかないような顔をしているとファイナス長老はゆっくりと語りだす。
「秘密結社ジュメル。歴史は古く魔法王国の時代ににさかのぼります。もともとは古い女神、ジュリ様を崇拝する者たちの一部がジュリ様の教えを歪曲し、解釈したのが発端でした。そして魔法王国の崩壊後時の有力者たちをも取り込んでいきその組織は根強く歴史の裏にはびこりました。約千年前にその力はピークに達し、異界の神をも呼び出しこの世界を破壊しつくそうとしました。それを止めたのが現在の女神、エルハイミさんなのです」
ファイナス長老のその言葉に私は大いに驚いた。
エルハイミさんってすごい事やっていたんだ!
だってどう見てもほんわかした感じで女神っぽく無いし、何処か抜けているような感じさえする。
大人バージョンのエルハイミさんが女神神殿に祀られていたけど、話によると何時もは私たちと同じくらいの年齢の姿で人々の前に出る時だけあの大人バージョンの姿になっていたとか。
「ジュメルってそんなに古くからいたんですか…… でも私はジュメルなんかに協力なんてしませんよ?」
「ジュメルって悪の組織でしょ? あたしがやっつける!」
私やルラは元より世界の破滅何て望んでいないし、ジュメルには思う所がある。
ジッダさんの仇は取ったけど、やはりジュメルは嫌いだし許せない。
良い人だと思っていたイリカだってジュメルだったし……
「しかし二人の力に目をつけているのは事実です。あなたたちにこの学園に来てユカに修行をしてもらう意味を忘れないでください。あなたたちのその力は下手をすると女神の力ですら超えるかもしれないのですから」
ファイナス長老はそう言て一旦静かに目を閉じる。
そしてユカ父さんとマーヤ母さんを見る。
「もっとも、ユカの所で修行をしていれば大丈夫だと思っていますからね。何せユカはあのエルハイミさんの師匠なのですから」
「ばい”っ!?」
私は思わずユカ父さんを見てしまった。
ユカ父さんがエルハイミさんの師匠!?
「懐かしいですね、彼女はあの頃はまだ未熟な少女でした」
ユカ父さんはそう言いながら湯呑のお茶をすする。
思わずマーヤ母さんも見るけど、にっこりと頷いて言う。
「そうねぇ、その頃私はエルフの村に引きこもっていたけどすべてはエルハイミさんのお陰だったのかもしれないわね。彼女はエルフの村の恩人でもあるしね」
「え”っ!?」
そ、そう言えば前にエルハイミさんもシェルさんもエルフの村を救った英雄であると聞いた事があったっけ。
すっかり忘れてたけど、ユカ父さんもマーヤ母さんもみんなエルハイミさんとは深い付き合いだったんだ……
「とにかく、今は新たに動き出したジュメルに対してガレント王国、連合軍と協力をしなければなりません。早急にスィーフの問題も解決しなければなりませんしね」
ファイナス長老はそう言ってお茶をすするのだった。
* * * * *
「ふぅ~ん、マーヤがお料理上手なのは知ってたけどリルもなかなかやるのね?」
「あの、ソルミナ教授つまみ食いはやめてください。も少しで出来あがりますから」
話しが終わって今は家にみんなを呼んで晩御飯を準備していた。
台所でマーヤ母さんと一緒に お料理を準備しているとソルミナ教授が覗きに来て早速つまみ食いをしている。
「はいはい、分かってますよ。味見よ、味見。それよりマーヤ、あれ少し分けてもらえない?」
「あら? ソルミナには不要なモノだって思っていたけどどうしたの?」
「そりゃぁ、今晩こそ兄さんを襲いに行くから元気にしておかなきゃね。 兄さんの食事ってどれ? 早速仕込むから」
こらこらこら。
一体何を仕込むつもりなの?
「うーんそうねぇ。最近ユカもリルとルラの事ばかりで相手してもらえてないから、私もユカの食事に混ぜようかな?」
「マ、マーヤ母さん一体何をする気なんですか!?」
思わずマーヤ母さんに聞くとにま~っと笑って奥から小さな小瓶を持ってくる。
「まだリルたちには早いけど、教えておいてあげる。これはエルフの秘薬でね、意中の人に飲ませるとそれはそれは元気になって翌朝まで眠らせてもらえない位になるモノなのよ!」
「なっ///////」
あの、それって媚薬……
淡白なエルフ族にそんな秘薬が有っただなんて!!
「本当は子供を作る時期に相手がその気になりやすいように使うのだけど、通常時に使ってもばっちりなのよね~。でもソルミナ本気なの?」
「勿論よ! 今晩こそ兄さんに女にしてもらうんだから! 待っててね兄さん、今晩こそは!」
ぐっとこぶしを握っているソルミナ教授。
いいのかこれで?
マーヤ母さんとソルミナ教授は嬉々としてそのエルフの秘薬を意中の人の食事に混ぜるのだった。
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