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第十三章:魔法学園の日々

13-16ガルザイルの街

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 昨晩はアニシス様のお陰で大騒ぎだった。
 

「ふわぁ~これがガルザイルの街ですか!」

 翌朝、朝食の用意があると言われ広間に行く途中に窓から街並みが見えた。

 昨日は転移のゲートで移動してすぐに王様に謁見をしてからヤリスの部屋に呼ばれてそのまま晩餐会だったから外を見ている暇なんかなかった。
 昨晩もなんだかんだ言って部屋に戻ったのは結構と遅い時間で、湯あみをしてからすぐ寝てしまったので外の事なんか考えてもみなかった。

 なので今朝、朝食の為移動する途中に窓から見えたそれに思わず驚く私。


「リル、これだけ大きな街だから珍しいのは分かりますが、先に朝食をいただきましょう」

「あ、はい。すみませんファイナス長老、あまりにも大きな街だったもんで」

「でもほんと大きいよね~お姉ちゃん」

「流石にリルもルラもこれだけの街を見るのは初めてか? ガレント王国の首都ガルザイル。現存する街としては世界最大規模だろう。我々エルフにして見るとよくもここまで人の手で石の都を作り上げたモノだと感心するがな」

 廊下から外を見て驚いている私に一緒に朝食を取りに行くファイナス長老とソルガさんはそう言って先に進む事を促す。
 今までにレッドゲイルやドドスの街とかを見てきた私たちだったけど、ここまで大きな街は初めて見る。
 しかもこのお城って高い位置にあるからまるで展望台にでもいるようだ。


「何なら私が街を案内してあげましょか?」

「ヤリスが? 大丈夫ですか??」

「どう言う意味よ? ちゃんと案内してあげるから朝ごはん食べたら城下街へ行って見ましょ!」

 ヤリスにそう言われ私とルラは朝ごはんの後街に行って見ることにした。


「あら、おはようございますですわ、皆様」

 ヤリスとそんな話をしていたらアニシス様たちも着た。
 アニシスアマの隣にはアイシス様も一緒にいた。
 
「おはようございます、ファイナス市長と皆さん。昨日はよくお休みになられましたか?」

「ええ、お陰様でよく眠れましたよアニシス王女」

 ファイナス長老はそう言ってにっこりと笑う。
 それを見てアイシス様もにこりと笑うけどヤリスが何故かピリピリしていた。

「ガレント王国のお食事はどれも美味しいので今朝も楽しみですわ」

「いつも通りよ、アニシス」

 そんな中アニシス様とアイシス様はいつも通り会話をしている。
 なんなんだろうね?

 そんなこんなでみんなで朝食をとる。


「時にヤリス、リルさんとルラさんを連れて城下街に行くのですか?」

「ひゃ、ひゃいっ! お姉さま!!」

 アイシス様にそう聞かれただけでヤリスは思わずその場で立ち上がりそうになるくらいに驚き答える。
 するとアイシス様は少し考えてから言う。

「まあ、昨日のうちにお父様へは学園長からの手紙も渡したし、挨拶も済んでいるからいいでしょう。今回は大魔導士杯の優勝という功労もありますからね。リルさんたちを案内してあげなさい」

「は、はいっ!!」

 背筋をピンと伸ばして額に脂汗をにじませそう答えるヤリス。
 何なんだろうね?


「あらうらやましいですわね、私もご一緒したいのですが今日はちょっと野暮用が出来ましたわ」

 アニシス様はそう言って食後のお茶をすする。
 一応アニシス様もティナの国の重要人物でお姫様。
 やたらとアイシス様と仲は良くてもこの国にはお客さんとして来ている。
 
 私とルラはヤリスのクラスメートで友人及び大魔導士杯の協力者としてガレント王国では歓迎されたけど、なんかやたらと視線を感じる。
 エルフだってのもあるだろうけど、ヤリスの友人ってのがやっぱりお城の人には珍しいのだろうね。

  
「アニシス様忙しいの? ざんねん~」

「本当に残念ですわ、その代わりにティナの国に来たら大歓迎いたしますわよ! 私のお部屋にも遊びに来ていただきたいですしね!!」


 にっこりとそう言うアニシス様だけど、アニシス様の部屋に行くのはなんか怖い。

 私は引き付く笑いをして明確な返事をするのをごまかすのだった。


 * * * * *


「ほらほら、乗って乗って!」

「街に行くのにわざわざ馬車ですか?」


 朝食後にヤリスが準備した馬車に乗って城下街を見て回る事となった。
 私としてはもっと街の様子を肌で感じたかったので歩いて散策したかったのだけど、ヤリスは一応王女なのでふらふらと出歩くことは出来ないらしい。

 なので大人しくヤリスに言われるまま一緒に馬車に乗る。
 そしてお城を出て街の大通りへ向かう。


「ガレント王国はこの首都ガルザイルを中心に衛星都市がいくつもあって国を支えているのよ。特に聖地ユーベルトは女神様の生誕の地として有名でそこでは遊戯ゲームやカードの発祥の地でもあるのよ!」

「女神様の生誕の地って、エルハイミさんの?」

 ヤリスは女神様であるエルハイミさんをやたらと崇拝している。
 まあ女神信教は世界中で信仰されているからエルハイミさんを崇拝している人はたくさんいるんだけどね。

「そうよ! 本当はリルたちも連れて行きたかったけど日数的にちょっと無理だから今回は行けないわね。あ、見えて来た。この通りがガルザイルのメイン通りで、この先に行くと連合軍の駐屯地があるのよ」

 ヤリスの説明で外を見ると確かに石田畳の大きな通りが見えて来た。
 お城の正門から少し行った場所だけど、これなら馬車とか何台も並んで通れそうだ。

「へぇ~、広い通りだね! レッドゲイルやドドスの街でも見たことないや」

「そりゃそうよ、なんたってこの通りはシェル様が決めて作った通りなんだから!」

「ちょと待ってヤリス。今シェルさんって言わなかった?」

 シェルさんの名前が出た時点でこの通りの出来た由来がちょっと不穏に聞こえる。
 だってお城の前からこの通りまでは一直線なのに途中からやたらと広がっている。

「言ったわよ? なんでも当時シェル様が馬鹿にして来た『鋼鉄の鎧騎士』をぶっ飛ばした時に周りの建物も壊してここに一直線の道が出来たって言い伝えられているわ。シェル様を馬鹿にしたむくいよね、それ以来シェル様を馬鹿にするとどうなるかを忘れさせないためにここを大通りにしたって事よ」

 シェルさん、やっぱりここでも何かやらかしたんですね?
 
 私は諦めのため息を吐いてから通りを眺める。
 するとヤリスは指さしながら言う。


「取りあえず連合軍の駐屯地まで行って見ましょう!」

「はいはい、分かりましたよ……」


 大通りを通りながら私たちは連合軍の駐屯地へと向かうのだった。


 * * * * *


 ガルザイルの郊外には連合軍の駐屯地があるそうだ。
 連合軍とはその昔秘密結社ジュメルに対抗する為に各国が自国の軍隊を派遣して一大組織を作り上げ、ジュメルに対抗していた名残だそうだ。

 ……ジュメルってそんなに大きな組織だったのかな?

 どうも今までかかわったジュメルの連中が面倒でどうしようもない連中だったイメージがあるので、狂った組織の連中位に思っていて可能な限り関わり合いを持ちたくなかった。
 しかし馬車の中でヤリスの説明を聞くと裏の世界で色々と暗躍していて、この時代でも何かしでかそうとしているらしい。
 もっとも、その都度シェルさんたちが動いて事無きを得ているとか。

 うーん、あのシェルさんがねぇ……
 ちょっと信じられないけど、ヤリスは目を輝かせそう言っている。
 信仰の強い人に何を言っても無駄だとは思っている。

 なので生半可な返事をしながら外を見ると大々的な場所に着いた。

「着いたわよ、ここが連合軍の駐屯地よ! 世界に問題があるとここから連合軍が派遣されるようになっているのよ!!」

 そう言ってヤリスは元気よく馬車から降りる。
 それにくっついて行って私もルラも馬車を降りると……


 どッガーンっ!!


 施設の向こう、闘技場のような場所から大きな音と土煙が上がったのだった。
  
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