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第十三章:魔法学園の日々

13-33陸の魚料理

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 一般的に陸地の魚は骨が多い。
 フナやワカサギなんか見たいに小さな魚は骨が多くても丸ごと食べられる料理にするのであまり気にならない。

 しかし、体長三十センチを超えて来る魚は違う。


「初めてやってみるけど、どうしたものかな?」

 さばき切って開きになって燻製用に準備された鯉のような魚をいくつかもらってきて魔法のポーチから道具や他の食材を出してちょっと考える。
 開きにされた鯉みたいな魚はやっぱり小骨が多かった。

「これを一つずつ小骨捕っていたらもの凄く時間がかかりそうだなぁ」

 とりあえず開かれたものを更に三枚おろしのように切り分ける。
 そして小骨を出来る限り取ってみるけど、まだまだ多い。
 私は油を準備して周りに片栗粉をつけてその魚を素揚げにする。


 じゅわぁ~


 一般的に小骨が多い魚や小さ目な魚は素揚げとかにするとその骨まで食べられる。
 特にこう言った川魚は小骨が多いのでこの手法は有効的だ。

 じっくりと火を通して表面はカラッと揚げる。

 それを油切りしている間に引っ張り出したピーマン、玉ねぎ、にんじんを切る。
 

「これで準備は良しっと。お次は」

 二品目は魚をお酢に漬ける。
 こうしておくと小骨が柔らかくなるので、ほとんど気にならず食べられる。

 お酢に漬けこんでいる間にもう一品の準備をする。
 切り身の魚を更に包丁で細かくたたき、ミンチ状になるまで細かくとにかく叩く。

 
 だんっ!
 だだんッ!!


 こうする事により小骨を小さく砕き、更にすり鉢でよくする。
 出来上がったすり身に、塩、お酒、生姜、ネギ、と片栗粉少々を入れてよくかき混ぜる。

 沸騰したお湯にスプーンでそれを入れて行き、つみれのようにして行く。
 こっちはこれでしばらく弱火で煮込んでっと。 
 

 ぽちゃん!
 コトコト……


 私はお酢に漬けていた魚の様子を見る。
 指で触って小骨が柔らかくなったのを確認して、お酢をよく拭き取ってから鍋に入れて生姜、長ネギと一緒に煮込み始める。
 ある程度火が通ったら生姜とネギを取り出して、弱火にしてお醤油、お砂糖とお酒、ほんのわずかなごま油を入れて煮汁を魚の上にかけながら煮込んで行く。
 ちょっと大変だけど、ここが重要。
 しばらく煮汁をかけて煮込むとだんだん煮汁が無くなって、魚自体にも色が付いてくる。
 そして頃合いを見てそこにスプーン一杯くらいの蜂蜜を垂らす。
 更に煮込んで煮汁が粘度を増してほとんどなくなった頃に出来あがり。

 良し、うまくできた。

 次に煮込んでおいたつみれを見るとアクが出ている。
 それをお玉で奇麗にすくってやって、煮汁に塩、お酒、生姜に葱、それといりごまを入れる。
 味を確認して、ちょっとお醤油を垂らす。
 これはほとんど隠し味程度。
 これで魚の団子汁出来上がりだ。


「さてと、それじゃあ仕上げは」

 私は言いながら切っておいたピーマン、人参、玉ねぎをさっと油でいためる。
 そしてそこへ揚げておいた魚も一口大に切って投入!
 軽く混ぜたら先に作っておいたお酢と砂糖、ごま油にお酒、しょうゆに片栗粉を水で溶いた煮だれを入れる。


 じゅぅ~!  


 入れた煮だれは片栗粉が入っているのでだんだんとろみが出来て行く。
 そして程よいとろみが出た頃に出来あがり。


「よっし、旨煮の出来上がりっと!」

 
 初めてだけど、この鯉みたいな魚の料理はうまく行ったかな?
 少し不安を抱えながらみんなの前に出す。


「はい、えーと、魚の旨煮と、煮つけ、魚団子汁です。うまくできたかちょっと心配ですけど、どうぞ」

 私がそう言うとみんなは歓声を上げる。


「おいしそう! お姉ちゃん早く食べようよ!」

「へぇ~、魚料理って言うけどこう言うのがあるんだ」

「まあまあ、あのお魚がこんなお料理にですわ!」

「これは美味しそうですね」

「リル、あんたって本当に何者? ほんとに十七歳??」


 ルラはもう既に取り皿とフォークを準備している。
 ヤリスやアニシス様、アイシス様も興味深そうに私が作った料理を見ている。
 ファムさんは私が作った料理を見て驚いていた。


「一応小骨の処理はしてますけど、食べる時は気を付けてくださいね?」

 私はそう言いながらみんなに取り分けのお皿とフォークを手渡す。
 そしてまずは団子汁からよそって食べてみる。


「ふーふー、はむっ! ん、細かくすったからほどんど小骨を感じない。うん、うまく行ったわね。さっぱり気味のスープに生姜とネギが効いているから川魚特有の臭みも消えてるし、すり身にしたからふわふわで魚団子も美味しい」

 これは意外といける。
 ちょっと心配だったけど、臭みもしっかり消えていてふわふわの白身の魚団子が美味しい。


「へぇ~、これは美味しいわね。私これ好きだわ」

 ヤリスはなんかものすごく気に入ったみたいだ。

 
 私は次いで煮物に手を出す。
 良く煮込んであるのでほろりと崩れるように切り取れる。
 見た目もしっかりとテカリがある煮つけ。
 最後にスプーン一杯の蜂蜜がこのテカリを出すのよね~。
 これ、田舎のおばあちゃんの知恵袋なんだけどね。

 取り皿に取った煮つけは本来は海の魚でよくする料理だけど、果たして川魚で何処までうまくできるかな?


「はむっ! ん、これとろ味のある煮汁が絡んで甘じょっぱくて美味しい! うん、海魚とほとんど変わらない。小骨も柔らかくなっているからほとんど気にならない」


 実は魚の煮つけって結構好きだった。
 特にあのとろ~りと粘る煮汁をご飯に付けて食べるのが好きで、生前小さい頃はわざと煮汁だけ残して最後にご飯につけて食べるほどだった。
 生姜が良いアクセントになっていて、臭みも何もしっかりと消えている。

 
「これ、おいしいですわぁ~。こんな料理法があるとは意外ですわぁ~」

 アニシス様は煮つけを口に運びながら片手をほっぺたに付けて喜んでいる。
 好きな人にはたまらないだろうね。


「さてと、中華風のこっちの旨煮はっと」

 私は最後にトロトロのあんに煮込まれた魚の素揚げと野菜をとって口に運ぶ。

「はむっ! んむぅ~! これ行けるぅ!」

 ちょっと心配だったけど、しっかりと油で揚げているから小骨は全く気にならない。
 そして淡白な白身魚でも油で揚げて甘酢の煮込みだれで煮込まれているのでとても美味しい。
 チョイスした人参や玉ねぎ、ピーマンが正しく中華風でいい味を出している。


「これはとても美味しいですね。魚を油で揚げるだけではなく、たれで煮込むとは」

 アイシス様はどうやらこの旨煮が気に入ったみたいだ。
 ちょっと酢豚っぽいけど、酸味が良い感じに油っこさを押さえてくれる。


 と、ここでファムさんがふるふると震えている。

 一体どうしたのだろう?
 まさか喉に魚の小骨が刺さった!?


「リル……」

「ファムさん、まさか小骨が喉にでも刺さりましたか?」


 慌ててファムさんに近寄るといきなりガシッと両肩を掴まれて揺さぶられる。


「リル! この料理のレシピ教えて!! あの魚がこんなに美味しくなるなんて異常よ!! これ、毎日でも食べたいわ!!」

「お、落ちついてください、ファムさん」


 がくがくゆさゆさ!

 
 首がもげるぅっ!
 ファムさんは相当気に入ったか早速メモ用紙を取り出す程だ。

 でもまあ、初めての川魚料理。
 いつもは小魚を塩焼きくらいにしかしないけど、ああいった大きな魚も料理次第では美味しくいただけるものだ。
 ほんとこれで川魚とかも骨が少なければなぁ。



 私はそんな事を思いながらファムさんにこれらのレシピを教えて行くのだった。
  
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