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第十四章:脈動

14-13因果応報タルトの逆襲

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 ソルミナ教授の所で甘味を堪能して家に戻る。


「あらお帰り、今日は遅かったわね?」

「ただいま戻りました、マーヤ母さん」

「ただいま~」

 家に戻り、マーヤ母さんに帰って来た事を伝えて洗面上で手洗いうがい、顔を洗う。
 部屋に戻り、家着に着替え夕食の手伝いに行くと……


「お芋ですか?」

「うん、紅芋って言うのよね。甘くておいしいわよ? リルはお芋好きだったわよね??」


 マーヤ母さんはそう言って大量の紅芋を処理している。
 こんなに沢山の紅芋どうしたんだろう?


「こんなに沢山どうしたんですか?」

「前にリルがお芋好きだって言ってたからユカが内緒でお芋の栽培させてたのよ。で、先日収穫していいころ合いに成熟したので持ってきてもらったの」

 マーヤ母さんはにこにこしながらそう言う。
 言うのだけど……


「いや、好きって言いましたけどこの量は何なんですか?」

「色々作ってあげるわよ~」


 台所に麻袋で山となっている。
 いや、その大半を芋で埋め尽くされている!?


「わぁ~、お芋だぁ~」

「ルラもお芋好き?」

「うん好きだよ~」

 ルラもやって来て台所を覗いてそんな事を言っているけど、いくら好きだからってこれはちょっと多すぎる。
 そしてマーヤ母さんの手元には紅芋を使った料理が沢山。

 もうね、紅芋の煮漬けた物から紅芋のてんぷら、紅芋の混ぜご飯に紅芋の大学芋。
 さらにふかしたものや紅芋のポテトサラダまである。


「お母さん頑張っちゃったぁ~♪」

「いや、嬉しいのは嬉しいんですけど……」

 しまった。
 ソルミナ教授の所で食べた果物とスイーツがお腹の中でヤバい主張をしている。

 しかしマーヤ母さんのあの笑顔。
 そしてきっとユカ父さんも帰って来てドヤ顔するに決まっている。


「お、お姉ちゃんちょっと……」

 珍しくルラが小声で私を呼ぶ。
 私は呼ばれてルラの所へ行くと、こそっとルラは言う。

「マーヤ母さん頑張って沢山作ってくれたよね? でもさっきソルミナ教授の所で甘いモノ沢山食べちゃったからあたし……」

「みなまで言わないでいいわよ、私だっておんなじよ……」

 まずい。
 せっかく用意してもらったのにお腹がいっぱいでほとんど食べられないだなんて絶対に言えない。


「ただいま戻りました」

 私とルラがコソコソとそんな事を話していると玄関からユカ父さんの声が聞こえた。
 
 非常にまずい。
 ユカ父さんの事だから絶対に真っ直ぐここ台所へ来る。
 そして紅芋を見てドヤ顔するはず。


「お姉ちゃん、どうしよう!?」

「くっ、こうなったら最後の手段よ。もったいないけどユカ父さんとユカ母さんのせっかくの思いを無駄には出来ないわ。ごめんなさいアニシス様! 私とルラの胃の中身を『消し去る』!!」


 私は最後の手段とばかりに、チートスキル消し去るを使う。
 途端に満腹気味だったお腹の中身が無くなってお腹が空いて来た。


「お姉ちゃん、これなら!」

「うん、これで食べられるね!!」


 私とルラは小さくガッツポーズを取ってやって来たユカ父さんを出迎える。


「お帰りなさい、ユカ父さん」

「お帰り~ユカ父さん~」

「ぐっ、ユカ母さんでもいいのですよ…… ただいま戻りました。みんな台所にいると言う事は届きましたか」


 玄関の方へ顔を出しユカ父さんを出迎える。
 ユカ父さんはそのまま台所まで来て、運び込まれた紅芋を見て満足そうにする。

「既にマーヤから聞いていると思いますが、紅芋の栽培に成功しました。確かリルは芋が好きでしたね? 思う存分食べると好いでしょう」

 
 ドヤっ!


 腰に手を当てそう言い切るユカ父さん。
 はいはい分かってますよ。


「ありがとうございます、ユカ父さん! 私お芋大好きなんですよね~」

「あたしも~」


 私とルラがそう言うとユカ父さんは更にそのあまり大きく無い胸を張り反り返り気味で言う。

「あちらの世界にいた時に沖縄で手に入れたものです。こちらの世界でも似たものはありますが流石に品種改良したものは出来が違う。さあ、マーヤ夕食にしましょう!」

「はいはい、ユカったらはしゃいじゃって。さ、二人とも手伝ってね」

 マーヤ母さんは笑いながらそう言う。
 私とルラは早速これらのおかずを居間のちゃぶ台の上に運ぶのだった。


 * * *


「ふむ、なかなかの美味でした。紅芋もさることながらマーヤの料理も良かったです」

「お粗末様でした。みんなたくさん食べてくれてお母さん嬉しいわぁ~」


 お皿を片付けるのを手伝いながら、マーヤ母さんはお茶を入れてくれる。
 私もルラも結構といっぱい食べた。
 
 まあ、お腹の中身がすっからかんになったのだから逆にお腹が空いてたくさん食べられたのだけど。
 


「ふふふふふっ、リルにルラ。これで終わりではありませんよ?」

「そうね、見よう見まねで作ってみたけどうまく行ったもんね」


 お皿をかたずけ、お茶をみんなですすっていたらユカ父さんが突然そんな事を言い出す。
 そしてマーヤ母さんと頷きあってからマーヤ母さんは台所へ行く。

 一体何なのだろうと思ったらマーヤ母さんはお盆に大きな紅芋タルトを持って来た!!


「げっ! タ、タルトぉ!?」

「お、お姉ちゃん、あれって……」


 思わず私もルラも青ざめる。
 フルーツタルトはたくさん食べて来た。
 そしてミニタルトも。

 そしてここへきてマーヤ母さんが大きな紅芋タルトを持って来た!!


「以前エルハイミに言ってあちらの世界のお料理レシピの本を取り寄せたのです。あちらの言語はマーヤには分からないので翻訳するのに時間がかかりましたがやっと翻訳が終わりこうしてあちらの技法を習得できました。マーヤ出来栄えは?」

「完璧よ! この本に書いてある通りやったら美味しく出来たわ!! さあユカ、その沖縄とかで食べたという洋菓子とこれがどれ程再現できたか試すわよ!! あ、リルもルラも紅芋タルト好きかしら?」

 にっこりと笑うマーヤ母さんに額に脂汗をびっしりと書きながら私とルラは無言でこくこくと首を縦に振る。
 マーヤ母さんはその紅芋タルトを切り分け、大きめなのを私とルラに手渡してきた。


「それではいただきましょう! ぱくっ!! うぅ~ん、まさしくあの紅芋タルトです!!」

「本当? 良かったぁ~。さ、リルもルラも遠慮なく食べてね♪」


「……は、はい」

「うん……」



 喜ぶ二人を目の前に私とルラは紅芋タルトを食べ始めるのだった。




















 ……いや、紅芋タルトちゃんと美味しかったわよ?

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