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第十五章:動く世界
15-13長話
しおりを挟む貿易都市サフェリナを襲って占領したのは何とデルバ村のコルネル長老たちだった。
「で、一体どう言う事なんですか?」
『まあ話せば長くなるだに……』
ルラにぶっ飛ばされて負けを認めたオーガの皆さんは大人しくそこに腰を下ろし、コルネル長老の話が始まる。
それはお年寄り特有の長丁場になるとは流石に私もこの時は思いもしなかった。
『あれはリルの嬢ちゃんたちがいきなりイリカさと喧嘩別れした後だったがに……』
そう切り出してコルネル長老は話を始めた。
あの後、私たちは港町を目指しずかずかと先に進んだのだけど、コルネル長老たちはいきなり私たちが行ってしまい困惑していたという。
人の姿をしていた時から良くしてもらっていたコルネル長老たちには申し訳なかったけど、あの時イリカがジュメルと知って、しかも七大使徒の一人と知ってもの凄く裏切られた気分だった。
確かにジュメルとしての活動はしてなく、お休み中とかふざけた事言ってたけど相手はあのジュメル。
面倒この上ない連中だった。
なのであの時は怒り任せに皆さんと離れたけど、その後にイリカがコルネル長老たちに話を持ち掛けた。
それは魔王様の意志で巨人族の再封印をしたけどコルネルさんたちの封印は解けた。
再び人の姿にはなれないとなると、今までのようにガーリーの村とかの交易も難しくなる。
勿論間にイリカが入って交渉するという手段がなくはないが、イリカはもうじき村を出る羽目になるだろうと言い出したらしい。
コルネル長老たちは何処へ行くのか聞くと、魔王様に仇なす存在と対決する為に動き出さなければならないと言う事だ。
人の良いコルネル長老たちだ、魔王様に仇なす存在を許すわけにはいかずイリカに協力すると言う事になったらしい。
ただ、オーガの姿で動き回るわけにはいかずあのひょうたんの封印は魔物であれば吸い込んで運べると言う事からコルネル長老たちはそれを承諾してイリカと一緒に行動をする事となった。
だから水上都市スィーフで見かけられたあの魔物以外の魔物も忽然と消えたわけか……
そして水上都市スィーフで太古の魔物を仲間に加え魔王様に仇なすものを退治に北上をしてここ貿易都市サフェリナに着いた時に、いきなり現れた仲間と言う女性からイリカは新たな力を受け取ったらしい。
その力は膨大なもので、同じくひょうたんの中にいたコルネル長老たちにも影響が行って、今まで以上に力がみなぎっていたとか。
確かにやたらと筋肉増強された姿ではあったけど、それは多分あの連結型魔晶石核のおかげだろう。
そしてその仲間とか言う女性から「双子のエルフが仇なすものを倒す手段になりうる」という事を聞き、イリカはここサフェリナで私たちをおびき寄せる事にしたという。
つまり、女魔導士はあのイリカと言う事になる。
そしていきなり現れた女性はアリーリヤ。
二人ともジュメルの人間で顔見知りと言う事である。
「イリカがこの件の首謀者という訳ですね?」
『さあなぁ、儂等はイリカと約束して魔王様に仇なす奴を退治出来れば良いと思っているだがに』
コルネル長老は途中何度も同じような話を繰り返しながらもやっとここまで話を進めてくれた。
「冗談じゃないわ! 魔王って言ったら伝説の名も無き勇者の少女と相打ちになって、女神様がその魂を安らかな世界に導いたって話じゃない! 魔王はもういない、それに魔王に敵対してるって事はそれは女神様って事でしょ? 女神様に何するつもりよ!?」
話を聞いていたヤリスがいきなり覚醒状態で詰め寄って来る。
相当興奮していたみたいで、同調まで出来ていてその気迫ときたら。
『なんげ、魔王様は不死身だがや。いつかきっとまた儂らの前にそのお姿を見せてくれるだに。問題は魔王様に仇なすとか言うその女神の方が問題だに!!』
「ふざけるな! あれ程慈悲深き女神様の何処が問題なのよ!!」
そう言ってヤリスはコルネル長老の胸元を掴む。
「どうどう、ヤリス落ち着いてくださいってば! コルネル長老も落ち着いてくださいってば!」
どうもいけない。
自分の信じる者、守りたいモノが関わると理性的にならなくなる時がある。
でもそれは誤解であり、話し合って冷静になってお互いを理解し合えれば誤解も解ける。
「とにかくコルネル長老は私とルラが来たんだからイリカの場所へ私たちと一緒に行きましょう。そしてこのサフェリナを解放してください。ヤリスも、この後すぐにでも広場に行ってユカ父さんたちに合流しなきゃ!!」
私が間に入ってヤリスの手を押さえ、コルネル長老の胸ぐらを離させる。
「でもリル……」
「今重要なのはジュメルのイリカを止める事でしょ?」
私はヤリスにそう言うと、まだ何か言いたげだけどその手を離す。
「分かった。広場に急ごう」
「コルネル長老たちも他のオーガの皆さんたちを止めて広場へ。私とルラの双子のエルフが来たんだから目的は達成しましたよね?」
『……まあ、そうだがに。目的は達成したがや…… 誰か伝令だがや! すぐに全員広場に集まるだがや!!』
コルネル長老はそう言ってすぐに他のオーガの人を伝令で行かせる。
私たちもすぐにリーダーにそのむねを話して他の場所で戦っている皆さんを広場へと向かわせてもらう。
そしてみんなして広場に移動しようとしたその時だった。
どっがぁーんッ!!
「お姉ちゃん!」
「リル、広場の方よ!!」
「ユカ父さん、アイザックさん!!」
大きな音が広場の方からして私たちは誰となく走り出すのだった。
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