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第十五章:動く世界

15-30さよなら

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「結界を『消し去る』!!」


 私は学園に張り巡らされている結界を消し去った。
 多分かなり強固なモノなのだろう。
 しかし私のチートスキル「消し去る」には抗えずその結界は簡単に消え去った。

「あたしは『最強』!」

 ルラはスキルを発動させて門を吹き飛ばす。


 どっかーんっ!


 もうもうと土煙が立つけど、その門はあっさりと吹き飛ばされぽっかりと穴が開く。
 私たちはその中に入り周りを見渡す。

 授業中なのかほとんどの学生は見当たらなかった。


「なんなんだお前たちは!」

「こっちだ、こっち! 侵入者だ!!」


 一応学園にも警備がいて門を吹き飛ばされ外部から侵入者が入ってくれば大騒ぎになる。
 でもそんな騒ぎも私とルラがいればすぐ片付く。


「武器を『消し去る』!」

「あたしは『最強』!」


 次々に出て来る警備の人たちの武器を私は消し去り、ルラが当身で気絶させる。


「何面倒な事やってるのよ? こんな連中殺しちゃえばいいじゃない??」

「目的は学園を消し去る事です」

 アリーリヤが不満そうにそう言うも私がそう答えると肩をすくめため息を吐いて何も言わなくなる。

「ルラさんも悪い人たちだから殺しちゃってもいいんですよ?」

「う~ん、でもこの人達見た事あるような人たちだから」

 イリカのそう言われるルラもなんだかんだ言って警備の人たちを気絶させるだけでとどめている。
 本当は消し去っちゃたり殺したりしてもいいんだけど、何故かそれが出来なかった。



「リル、ルラ! 無事だったの!?」

 
 聞こえたその声に振り向くとヤリスがいた。
 急いで来たのだろう、はぁはぁと息が上がっている。
 そっか、ヤリスは無事だったんだ……


「ヤリス出てきたね~。それじゃぁ早速始めようか! あたしは『最強』!!」

「な、ちょっとルラ! どう言う事よ!?」

 私がそんなこと思っているとルラは「対象」をヤリスに変えて飛び掛かる。
 ヤリスは慌てて「同調」をしつつ「覚醒」をする。
 こめかみの上に三つづつトゲのような癖っ毛がぴょこんと生えて、瞳が金色に輝き始める。
 うっすらと体全体も輝いて女神の力を受け継ぐ覚醒者の姿になる。


 がんっ!


「うわっ!」

 ルラが牽制で入れた拳にヤリスは吹き飛ばされる。
 しかし空中で態勢を整え、くるりと宙返りをして地面に着地する。

 あ、今日はピンク色の下着なんだ。
 
 翻る短いスカートの中が見えて私は思わずそんな事を思う。
 しかし着地したヤリスにルラが飛び蹴りを入れる。
 だけどヤリスはそれをぎりぎりでかわすと地面がルラの蹴りで割れてへこむ。


 どっ! 
 どがっ!


「くっ! 危ないわね!! いい加減にしなさいよルラ!!」

「う~ん、避けられちゃったか。でもヤリスとは一度本気でやってみたかったんだよね~。次行くよ!!」

「ルラっ! その首輪、鎖、まだ操られているのね!?」

 ヤリスはそう言いながら上着を脱ぎ棄てる。
 ぶるんと大きな胸が揺れてブラウスとスカートの姿になるけど、今度はちゃんと構えてルラに対峙する。


「ガレント王家のお姫様…… 女神の血を引く覚醒者。でも残念ね。私たちのリルとルラには勝てないわ」

「アリーリヤ! リルとルラを解放しなさいよ、この卑怯者!!」

 アリーリヤは鎖を持ちながらヤリスを見ているとヤリスがそう叫ぶ。

「あら? これはリルとルラの意思よ? ほら」

 そう言ってアリーリヤは鎖を手放す。
 すると鎖は勝手に短くなって私の首輪の近くまで縮んでぶら下がる。


「リル、あなたはどうしたいの?」

「私は…… この学園を消し去る!」


「リルっ!?」


 私の宣言にヤリスは驚きの表情をする。
 だってそうじゃない、この学園が世界の矛盾の一端なんだから。
 エルハイミさんの我が儘を増長させる一端なのだから。


「そう言う事! 行くよヤリス!!」


 言いながらルラがヤリスに飛び掛かる。
 見ればルラも鎖を手放され、私と同じく短い鎖をぶら下げている。

「ちょ、ルラっ! ああっ、もうっ!!」

 ヤリスは飛び掛かって来るルラの拳を捌き防戦をする。
 しかしルラの拳のスピードが上がって、さばききれなくなってくる。


「くっ! このぉ、いい加減にしなさいよ!!」

 
 ばっ!

 とん。


「うーん、良い拳だけどやっぱりだめだね」

 突き出した拳の上にルラは重さを感じさせないかのように乗っている。
 そしてヤリスを見ながら言う。


「本気を出さないと死んじゃうよ? 行くよ、ドラゴン百裂掌!!」


 ばっ!


 ルラはヤリスの拳から飛び上がり腰に拳を溜めたかと思ったら雨あられのような拳を繰り出す。
 それはさながら流星のようにヤリスを襲う。


「わっ、ちょっ! きゃぁっ!!」


 どがががががががががぁっ

 ばきっ!


 流石にこれだけの数を捌き切れずにヤリスはルラに殴られて吹き飛ぶ。
 しかし何とか持ちこたえてその場に起き上がる。 


「くぅう~やってくれたわねルラっ!」

「うん、このくらいで倒れちゃったらつまらないもんね、さあ続きだよ!」

 ヤリスはルラに対して構えを取ってから叫びながら飛び込む。

「はぁっ! 三十六式が一つ、バトルアックス!!」

 ルラの直前でややも飛び上がりくるりと前転をしながら体重の乗った踵落しをしてくる。
 それはまるでバトルアックスを振り下げるかのような重くて強烈な一撃。

「やっとやる気になったね!」

 
 がんっ!


 しかしその強烈な一撃はルラに片手で防がれてしまう。

「必殺ぱーんち!」

 体制の崩れたヤリスにルラは必殺の拳を打ち出すも、ヤリスは空中で器用に体を回転させてひねって逆の足をまるで針のように、突き刺すかのごとく繰り出す。


「三十六式が一つ、レイピア!!」

 
 ざしゅっ!

 きんっ!
 

「うぉっと!」

 その鋭い蹴りはルラのおさげを突き刺し、髪留めを外す。
 流石に避けたせいでルラは一旦やリスから距離を捕るために下がる。

「流石ヤリス、本気になったら凄いね!」

「はぁはぁ、ルラあんたはぁっ!」

 技を出してルラが下がってくれたおかげでヤリスはルラの攻撃を受けずに何とか済んだ。
 しかし空中で無理な体制で技を繰り出したので着地に失敗して地面に転がっている。

 本来なら追撃のチャンスなのだろうけど、ルラはほどけた髪の毛を手で掻き集め、後ろで縛っている。


「ん~、髪留め取れちゃった。ちょっとタンマねヤリス」

「ふざけないで! なんであんたたちがアリーリヤたちに協力しているのよ!?」

 すぐに立ち上がりヤリスはそう叫ぶ。
 しかしその叫びに答えたのは私だった。


「それはこの世界の矛盾を取り払う為よ。エルハイミさんの我が儘にもう振り回されるのはごめんよ」

「リル!?」


 私のその言葉に驚きを隠せいないヤリス。
 でもヤリスは女神であるエルハイミさんを信仰しているから仕方ないか。
 本当の矛盾に気付いていないんだもん。


「ふふふふふふふ、ガレントのお姫様みたいに大切に育てられた人間にはこの世界の本当の矛盾なんて気付かないわよねぇ。でもリルは違う。私にその矛盾を教えられそしてその身をこの私にゆだねたのよ、もうリルは身も心も私のモノよっ!」

 驚きに固まっているヤリスにアリーリヤは更に追い打ちをかけるようにそう言う。
 そしてそれを聞いたヤリスは更に驚愕の表情を浮かべる。


「なっ! そんな、リルが汚された!? リルの初めてが奪われたって言うの!?」

「いや、何ですかそれは…… なんの初めてですか!?」


 おいこらヤリス、なに言い出すのよ?
 私はそんな趣味は無いわよ?
 私は同性に対してそんな事は……


「あ、あれ? 私はなんで…… あ、あれ? アリーリヤとは裸で抱き合って…… あ、あれ?」


「ちっ! リルそんな奴に惑わされないで!! あなたは私に色々と教え込まれて本当の事実に気付いたのよ!! この世界の矛盾を取り払うのでしょ!」

 アリーリヤにそう言われ、私は目的を思い出した。
 そう、全てはこのエルハイミさんの我が儘を壊し、本当の自由を得る為だ。


「もう、お姉ちゃん邪魔しないでよ。あたしがヤリスを倒してこの学園を壊しちゃえばとりあえずは今回の目的は終わりでしょ? そうしたらまたイリカが裸で気持ちいい事してくれるって言ってるんだし、早く片付けようよ!」

「なっ!? ルラまで初めてをもう奪われている!? しかも手籠めにされている!!!?」


 いやだからなんの初めてだぁーっ!?
 何考えているのよヤリスは!?
 
 だぁーっ!

 これだから同性好きのヤリスやアニシス様はだめなんだ。
 いや、これってもしかしてエルハイミさんの血のせい?
  
 だとしたら、そんな血が悪いんじゃない!!


「そうか、そう言う事か…… 私の大切な友達にもエルハイミさんは影響していたんだ。しかもその根幹を狂わすくらいに…… だったらそんな血は消し去ってあげなきゃ、ヤリスの女神の血を『消し去る』!!」


 そうよ、簡単じゃない。
 ヤリスの中に流れているエルハイミさんの血を消し去ってあげればヤリスは普通のまともな女の子に成れる。
 なんで今まで気がつかなかったのだろう?

 私はヤリスに手を向けながら力ある言葉を唱える。
 すると途端にヤリスを包んでいた淡い光が消えてこめかみの上の左右三つずつあるトゲのような癖っ毛が消える。


「え?」


 ヤリスもそれに気付いたかのように自分の身体を見まわす。


「あ~あ、お姉ちゃんヤリスの力を『消し去る』しちゃったんだね? じゃあ『同調』だけしているヤリスなんか全然強くないよ?」

「でもこれでエルハイミさんの呪縛から解き放たれたわよ? ふふふ、ヤリスこれであなたは普通の女の子に成れるんだよ? あ、『同調』は出来るから普通じゃないか。でもこれでエルハイミさんの呪縛からはさよならできたんだよ♪」

 うん、よくやった私。
 えらいぞ私。
 これでヤリスも矛盾に気付いてまっとうな女の子に成れるだろう。


「え? ええ? そんな…… 女神様の力が…… そんなっ!!」

「あーはっはっはっはっはっはっはっ! これは傑作だわ! そうか、リルよくやったわね。これでガレントのお姫様も女神の呪縛から解き放たれて『普通』の女の子に成れたわね、『普通』のねっ!」


 狼狽するヤリスに大笑いをするアリーリヤ。
 そうだよね、これでいいんだよね?

 私はアリーリヤのもとへ行くとアリーリヤは私の首輪からぶら下がっている鎖を握り引き寄せる。
 そしておもむろにヤリスの前で私の唇を奪う。


 ああ、またアリーリヤに気持ちいい事されちゃうんだ……


 私はアリーリヤから口の中にあの薬を入れられてアリーリヤの命令を待つ。

「ふふふふふ、よくできたわリル。ご褒美よ、飲み込みなさい!」

 やっとご褒美がもらえた!
 私は喜びながらこの薬を飲み込む。


 ごくんっ!




 そう、私が私でなくなってゆく快楽に落ちるこの薬を……
 
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