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第十六章:破滅の妖精たち

16-12最強

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「あたしはエルハイミさんより『最強』!!」


 ルラがチートスキル「最強」を発動させた。
 しかも対象者がエルハイミさん。
 
 途端に爆風のような存在感の嵐が吹き荒れる。

 
「ルラ!」

「はぁっ!」


 私の叫びなんかすぐに吹き飛ばされルラは何とエルハイミさんに殴りかかる。


「きゃっ、ですわ!」

 しかしエルハイミさんの目の前で見えないうっすらと輝く壁にその拳は止められるも、エルハイミさんはその壁事吹き飛ばされる。


「エルハイミ!」

「お母様!!」

「あらあら~本体がですわぁ~」

「凄いですわね、私を吹き飛ばすだなんてですわ」


 その様子を見ていたシェルさんもコクさんも残りの二人のエルハイミさんも驚く。
 そしてそんな中、吹き飛ばされたエルハイミさんにルラは更に追い打ちをかける。


「いけない、エルハイミですわっ!」

「戻りますわ、エルハイミっ!」


 こっちに残っていた二人のエルハイミさんは姿を揺らがせ消える。
 と、吹き飛ばされていたエルハイミさんがくるりと体制を整えて地面に着地する。


「はぁっ!!」

「くぅ~っ! ルラ、やめるのですわぁっ!!」


 ルラは立て続けにエルハイミさんに攻撃を入れる。
 それは一瞬姿を現したと思うとまたすぐ姿を消して、そしてまた違う所で姿を現す。

 あちらこちらで何かが殴られる音や地面が割れたりとかしているけど、どうやらエルハイミさんにルラが攻撃をしていてそれをエルハイミさんが何とか防御している様だ。


「だめ、動きが速すぎて追えない!」

「お母様に匹敵、いや上回る攻撃をするとは!」


 シェルさんもコクさんもそのあまりの攻防の凄さに身動きできずに見ているだけだった。
 こんなの誰だって手出しなんかできない。
 私もただルラにやめるように叫ぶだけだった。


「ルラっ! もう止めて!! エルハイミさんは!!」


「ふふふ、はははははは、あーっはっはっはっはっはっはっ! いいぞルラ、やっちゃえルラ! もう何でもいい、とにかく女神を倒してしまえっ!!」

 アリーリヤはその光景を見ながら笑っている。
 正気に戻った私は焦っている。


「どうしたら止められるの!?」

「あ~、あれはだめだわ。あたしと同じかそれよりちょっと強いなら経験の差で何とかいなせたけど、エルハイミ母さんレベルじゃ次元が違い過ぎる。シェル、コク下手に手を出すと死ぬよ?」

 後ろから赤竜がそんな事を言ってくる。
 シェルさんもコクさんもその光景を見ながら身動き一つできない。

 一体どうしたら?

 と、上空でそれは爆発の如く広がる。


 どっかぁ~んッ!!


 まるで爆弾が爆発したかのように爆炎が広がる。
 そしてその中から体に煙をまといルラが地面に落ちて来る。


「ルラ!」


 叫ぶ私にルラはくるくると体を回して地面に着地する。
 そして空を見上げると爆炎が収まったその中に全身に金色の鎧をまとったエルハイミさんがいた。

「まさかこのオリハルコンの鎧を使う羽目になるとは思いませんでしたわ。でもこの鎧でも長く持ちませんわね? どうしましょうですわ」

「まだまだぁっ! あたしは『最強』!!」

 ルラは完全武装のエルハイミさんに対して地面を蹴って飛び上がる。
 それをエルハイミさんは手に持つ剣を振ると光の衝撃波がルラを襲う。


「くっ!」


 どっかーんっ!


 ルラは防御するけどその衝撃波がルラにぶつかって爆発する。
 驚く私にルラはまたくるくる回って地面に着地する。


「ずるいぞ飛び道具なんて! それに空飛んでるのも反則だよ!!」

「いやいや、あなたは私より強いのですからまっとうにぶつかってしまったら私がやられてしまいますわ。ここは大人の対応をさせていただきますわ。それでルラ、私とお話しませんかしら?」

 エルハイミさんは上空でそう言ってにっこりと笑う。
 いや、大人の対応って言ってもそれって敵わないから勝負から距離を取って逃げてるんじゃ……

「ずっるぅ~いぃ! あたし頭悪いから殴り合いじゃなきゃエルハイミさんに勝てないじゃん! お話じゃ勝負にならないよ!!」

「う~んとは言え、ルラは私を倒して何がしたいのですの?」

「エルハイミさん倒せばイリカが気持ちいい事してくれるの!」

「気持ちい事ですの? それって何なのですの?」


 いや、こら、ここでそんん恥ずかしい事言うつもり!?
 ルラに大人の階段上っちゃったそんな恥ずかしい事を言わせるだなんていくら経験豊富のエルハミさんでも酷すぎる!


「イリカがしてくれる気持ちいい事はね……」

「わーわーわーっ! ルラ、いくらなんでもそれ言っちゃダメぇっ! そんなエッチなことぉっ!!」

 思わず妹の為に大声で手を振りながらそれを遮断しようとするも、素直なルラはそのエッチな事を言ってしまう。


「足裏按摩だよ!」

「はいっ?」


 焦ってルラの声を遮ろうとした私は思わずルラを見る。
 いや、だって、イリカと裸で気持ちいことされたって……

「いやぁ~ルラさんにお風呂上りに足裏按摩してあげたらはまってしまうんですよ~。あ、私これでも按摩師の免許もってるんですよ? 凄いでしょう??」

 縄に縛られていたイリカが説明の補足する。
 みんなイリカとルラを交互に見てから私を見る。
 
 思わず固まる私。


「あ、足裏按摩?」

「うん、足裏按摩! すっごい気持ちいいんだよ、それに終わった後体が軽くなるしね!」


 目を輝かせてそう言うルラ。
 思わず真っ赤になる私。
 
 だって、裸で気持ちいい事って言ったら……


「う~ん、でしたら私が足裏按摩できるスペシャリストの娘たちを呼びますから落ち着いてお話しましょうですわ?」

「うっ、足裏按摩のスペシャリスト……」

 いやそこに反応するのか―ぃいっ!

 でもルラがエルハイミさんの提案に興味を引かれる。
 私は思わずここぞとばかりにルラの説得を始める。


「ルラ、ここでエルハイミさんと喧嘩しても仕方ないよ! とりあえず足裏按摩しながら話を聞いてみようよ、私も一緒にするから!」

「ううぅ、お姉ちゃんも一緒? ううぅ~ん……」

「あらそうですわ、そう言えばルラもなんか状態が異常ですわ。はい、これでいいですわ~」


 言いながらエルハイミさんは手を振ると赤と黒の瞳の色のルラが深い緑色のルラの瞳の色に変わる。
 それと同時に何かに気付いたように周りをきょろきょろと見始めるルラ。


「あ、あれ??」




 この瞬間ルラも私同様正常に戻るのだった。

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