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復讐の果てに

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「……何があったんだ。」
 
 レインがアルフレッドが心配だと駆け出して行き、敵が居なくなってから少し。
 犠牲者も多数出た我々はなんとかその場を離脱し、俺だけでアルフレッドとレインがいるであろうここへ戻って来た。
 その場所に近付くにつれ、死体の数が増えていっていた。
 
「っ!レイン!」
 
 すると、眼の前にレインが倒れていた。
 傷は無く、外傷は全く見受けられなかった。
 が、レインの倒れている地面には血が広がっていた。
 レインの着ている服も血で汚れている。
 一見、レインが傷付き倒れているように見えた。
 
「一体何が……。」
「……どうやら、ケリはついたようですね。」
「……シャルか。……俺を殺すか?仕損じていた俺を。」
 
 背後にシャルが現れる。
 彼女も満身創痍だ。
 俺もだが。
 
「……いいえ。ここであなたを殺しても意味がありません。私は万全な状態の副隊長と戦いたいので。」
「そうか。それはありがたいことだ。」
 
 辺りを見渡す。
 すると、更に死体の多くなっている場所があった。
 ……あの先にいるかもしれない。
 
「アルフレッド!」
 
 呼びかけてみる。
 が、返事は無い。
 
「彼が負けた可能性は?」
「……ある。記憶を失い、手に入れたスキルを忘れていたら負ける可能性はある。」
 
 そのまま歩みを進める。
 すると、家の壁にもたれかかっている死体を見つける。
 
「シャイン……。死んだか。」
「なら、彼は生きていますね。……いえ、相討ちもありえますか。」
 
 すると、足音が聞こえた。
 そちらに振り向く。
 そこには、全身傷だらけのアルフレッドがいた。
 目は虚ろで、足元もおぼつかない。
 もはや立っているのがやっとといった様子だ。
 
「……私を殺すか?父を殺した私を。復讐を果たすのか?」
「……。」
 
 しかし、アルフレッドは答えない。
 ……いや、もはや喋ることすら忘れたのか。
 
「アルフレッド!俺が分かるか!?お前の名は!?」
「……。」
 
 すると、アルフレッドが倒れた。
 
「アルフレッド!」
 
 すぐに近くに寄る。
 近くで見れば見るほどよく分かる。
 アルフレッドの体は、もはや生きているのが不思議な程の状態だ。
 
「スキル『回復』を使えば良かったのに……。何故……。忘れていたのか?」
(……主様は最後に力を振り絞ってレインさんに使いました。)
 
 アルフレッドを抱き抱えたからか、ナイフの声が聞こえてくる。
 
(もはや立っているのがやっとの状態でシャインを殺し、おぼつかない足取りでレインさんの元に戻りました。)
 
 その時はまだ意識があったのか。
 
(いえ、意識は殆どありませんでした。ですが、懐にあった手紙を読んで、そう動いたのです。)
「手紙?……そうか。」
 
 アルフレッドが握っていた手紙を読む。
 血で滲んでいるが、読める。
 成る程。
 記憶を無くす前に書いたのか。
 アルフレッドに包帯を巻き、応急処置をする。
 そして、手紙を懐にしまった。
 
「……お前はアルフレッドを殺すのか?」 
「……いえ、その状態の彼は死んだも同然です。私達はここでおさらばしましょうかね。」
 
 生き残った仲間も少ないだろう。
 もはや再起は不可能と言える。
 
「……なぁ、俺達と共に来ないか。殺し合っていたとはいえ、魔王軍に未来は無い。それはわかってるだろ?命を無駄にすることは無いぞ。」
「……そうでしょうね。でも、私達の居場所はあそこですので。」
「……そうか。」
 
 ならば、無理強いはしない。
 
「では、さようなら。副隊長。また会うことがあれば、その時はよろしくお願いします。」
「あぁ。受けて立とう。」
 
 シャルは音もなく消えていく。
 元々彼女は忠誠心はなかった。
 現役の頃、俺達を殺そうとしたのも野心あっての事だろう。
 国のために命を燃やすような奴ではない。
 無駄死にはしないだろう。
 
「さて、帰るか。アルフレッド。皆が待ってる。」
 
 意識を失い、眠っているアルフレッドを抱えて皆の待つ場所へと戻る。
 レインも無事。
 アルフレッドも無事。
 死傷者も出したが、スロール殿達の兵も居る。
 バインド殿の所へ戻ろう。
 そして、始まるのだ。
 革命が。
 
 
 
 
 
 旅をした。
 始まりは只の復讐だった。
 気が付けば全ての事に復讐が関係していたと思う。
 レインさんとの出会いも、グロールさんとの出会いも。
 復讐を始めなければ無かった事だ。
 俺は恵まれていたのだろう。
 これまで歩んで来た人生は楽なものでは無かったが、そのお陰で出会えた人達が居る。
 だから、必ず守る。
 それだけの力がお前にはある。
 今お前は矢を受け、記憶が無くなってきているだろう。
 でも、お前ならば戦うはずだ。
 大事な人を守るために。
 でも忘れるな。
 お前を守るために戦う人もいる。
 彼女はお前を守り、傷つくだろう。
 何があっても彼女を守れ。
 それがお前に出来る最後の恩返しだ。
 大丈夫。
 いつかはまた、皆で楽しく過ごせるさ。
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