マイダンジョン育成中

どらいあい

文字の大きさ
78 / 100

第78話

しおりを挟む
「この島がそんな小さな島だったなんて、信じられませんね…」

「そこからコツコツと? すごいですね」

「ダンジョンを育てるとか…なんか壮大な計画ですね」

 三者三様の意見だ。
 そりゃそうだろうね。

「そんな感じで今後もこのダンジョンがどんな風に成長していくのか私には分からないことが多くてね、人手は多いに越したこともないんだ」

 私の説明に彼女たちは多少なりとも納得してくれたのだろう、その後は彼女たちの話に基本的に耳を傾けるだけの私だ。

 モフリンベアーはやはりモフモフで可愛いだとか野菜の精霊たちもよく見てみると可愛いとか、後あのシャチたちに乗っかって海を渡ったりできたりしないのだろうかと響はすごいこと言っていたな。

 その後は個人の自由時間ということになり、私はワゴン車の方で横になることにした。
 アヤメは一応彼女たちの方をチラチラと見ながら何をしているのかを私の隣の 座って話をしてくる。

 さゆりは一人で椅子に座って読書をしているらしい。
 響は砂浜でランニングを。
 アズサは持ってきた弓を使って弓道の練習をしているそうだ。

 そんな時間を過ごすことしばらく、午後の三時過ぎくらいだろうか。
 ちょっとした息抜きのつもりがだいぶ長めに休憩をとってしまったな。
 ただもうここから仕事だなんだという気分でもない。

「アヤメ、もうダンジョンの仕事は終わりって言ったし、後はもう帰る時間も自由って事で」

「オ~ケ~じゃあ帰りたい時間に帰っていいって言ってこようかしらね」

 正直ほとんど最初から自由時間だったような気がしないでもないけど、まあいいか。

「頼むよ」
「分かったわ~」

 アヤメがワゴン車から降りる。
 私は降りない。

「ってわけでここから後は夜遅くならないうちに帰りなさいよ~」

「わっわかりました……」

「それじゃあもう一回ダンジョンの方に行ってもモフリンベアーを探してきてもいいかしら?」

「別にいいんじゃないかしら、アズサどうする?」

「う~ん今日はダンジョンであんまり働かなかったし一河さんたちが新しく買ったて言う家の方の掃除でもしていいですかアヤメさん?」

「アズサは真面目ね~別にいいんじゃない?」

 そんな会話が聞こえてきた。
 家の掃除と言っても私とハルカである程度はしたし、後は箒で掃き掃除くらいしかないと思うけど。

 そのくらいなら別にいいかな。
 私はその辺りの指示をアヤメに任せることにした。
 何かいい感じにしてくれるだろ。

 そして彼女たちが各々自由に別行動を開始したタイミングで私もワゴン車から降りる。
 そして海の方へと向かった。
 波の音を聞きながら静かにリラックスする。

 あくまで個人的な話だがこの小さな過ぎず、大きすぎない感じの波の音というのがリラックスには大事なのだと思う。
 
「一河さん、何をしてるんですか?」

「紺野さん?」

 現れたのさゆりである。
 一応彼女たちのことは名字でさん付けをしている。
 それはアラサーのおじさんに呼び捨てとかくん付けとかされるのを嫌がる可能性を考慮しての配慮だ。

 そう言うのを嫌う子は嫌うって言う話を聞いたことがあったからね。
 正直さん付けをしても苗字で呼ばれるだけでもあっても嫌だって人もいたりするのかな。

 さすがにそういうレベルの子となると、ここでは面倒を見きれないので彼女たちはそんなことはないだろうと思いたい私だ。

「どうかしたのかい?」

「いえっただ本当にこのダンジョンは面白いと思って、一河さんはどうしてこんなダンジョンが作ろうと思ったんですか?」

  どうしても何も勝手にこんなダンジョンになってるだけなんですけど…。

「私はどんなダンジョンを作ろうかって考えて今の形になったわけじゃないんだ、だからその質問には答えられないかな…」

「そうなんですか」

「…けど今のこのダンジョンも悪くないとは思ってくれるのなら嬉しいな。少なくとも私もハルカもアヤメも自分なりに頑張って今のダンジョンにまで育てたからね」

「確かに私もこののどかな雰囲気のダンジョン好きですよ。まさかダンジョンの中で読書できる日が来るなんて思いませんでしたから」

 私もダンジョンで読書をする君を見た時は普通に驚いたよ?
 若い子は状況に順応する能力が高いなって思った。

 今度は私も何かしら本を持ってこっちで読んでみるか。
 おしゃれな本なんて持ってないからマンガかラノベとかになっちゃうけど。
 そういうのもいいよね。

「以前ハルカさんに聞いたんですが、このダンジョンの在り方は一河さんの性格が影響してるって聞いたことがあります」

「うん、なんかそうらしいよ? 正直私にはどこら辺がそうなのかよく分からないんだけどね…」

「そうですか? この海もあの森も火山 も、もしかしたら一河さんのことをかなり体現してるのかもしれないですよ」

「そうかな…」

「おそらく……ですけど」

 たわいない話をさゆりとしている。
 初対面の時はちょっとぶっきらぼうだった彼女ともこんな風に普通に会話ができるくらいには距離感が近くなったのかもしれないな。

 そんなことを考えているとアヤメがこちらの方にやってきた。

「ヒロキ君~」

「どうしたんだ?」

「なんか~新居の方に侵入者が現れてアズサが捕まったみたいなんだけど~?」

 何ですと?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

処理中です...