嫌われ王子はしてはいけない恋をした。 ~彼と私の1年間~

虹色金魚

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14、嫌われ王子はしてはいけない恋をした。

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「ユノ様、そろそろお時間です。」


「はい。」


 スワニ帝国でメイドに付いてくれたのは、リリアとナーナという女性だ。

 ユノは2人よって、過去最高に美しく婚礼衣装を着せて貰った。

 まず、何らかのいい香りがする湯での湯浴み。(これはスワニ帝国に到着してから毎日続いているヤツだ。)
 今日は特に、メイド2名から容赦なくゴシゴシと洗われるのは勘弁して欲しかった。そして、それが終わったら全身のオイルパック。羞恥心と疲れから気を失った。

 それから少しの間食をして、着付けだ。

 6年前まではお世話されるのは当たり前だったが、今となっては恥ずかしい。

 スワニ帝国にやってきて、ずっと見てきた婚礼衣装だが、やっぱりジャスを思い出してしまう色だ、とユノは思う。

 黒字に青の見事な刺繍が施されたタキシード。

 一度だけ寸法の確認で袖を通したが、ズシッとした重みと滑らかな肌触りで、とてもお金が掛かっていることが分かる。

 ただ、この婚礼衣装の送り主である、結婚相手に当たる人物は、スワニ帝国に到着してからの一週間、ついにユノの元を一度も訪れることはなかった。

 リリアとナーナに「お相手の方に挨拶をさせて頂きたいです。」と申し出ても、「実は皇帝陛下から挨拶の許可を得られてなく、このまま式本番までお待ち下さいませ。お相手様からは、ユノ様におかれましてはゆっくりと過ごしていて欲しい、と承っております。」と、濁されてしまう。

 何故会ったこともない皇帝陛下が挨拶を止めるのか意味が分からないし、何かしてしまったのか、と考えて動揺しても交流がないからさっぱり分からない。

 それとも、会ったこともない皇帝陛下に自国での扱いや、ジャスとのことがバレてしまい、既に嫌われてしまっているのか。


 ……その場合、ジャスは無事なのか……


 心配と不安を感じながら、ユノはため息を堪えてこの日を迎えた。あの離宮にジャスといた時よりも食が細くなってしまい、リリアとナーナが心配してくれているのが伝わってくるが、どうすることもできない。

 つい、心の中にいるジャスに愚痴を溢したくなるが、それもグッと堪える。

 ジャスから最後に貰った白鳥のブローチを撫でるのがいつの間にかユノの癖になっていた。






 食が細くなってしまったユノだが、ありがたいことに体型にはあまり響かず、婚礼衣装はぴったりでユノの美しさを最大限に引き立てた。

 少し長くなっていた美しい銀髪は、複雑に結われて青い宝石を飾り、王族に嫁ぐものの慣例として、青くて薄いベールで大きなエメラルドの瞳を隠す。


 「あの、この白鳥のブローチは……」


 ジャスから、“必ずどんな時も身に付けていて、離したりしてはいけませんよ?”と言われたことを、ユノはあの瞳の青と共に忘れたりすることは出来ない。そしてそれを忠実に守っていた。

 これから王族の男性と結婚するのに、他の男性から貰ったものを身に纏うのはいかがなものか、とユノも考えたが、大切な思い出は譲れなかった。この際タキシードの裏の部分でもいいから付けていたい。


 すると、リリアとナーナは、


「はい、こちらはしっかりとお胸の部分にお付けしましょう。」
「はい。左胸がいいかと思います。」


 と、ユノを見て力強く頷き、


「本当にお美しいですね。」
「私がお付けいたします。」


「手が震えてるわよ、リリア。落ち着いて。」
「はい。」


 と、なんと2人が大いに背中を押してくれた。


 驚いたユノだったが、なるべく平静を装い、ドキドキする胸をどうか気付かれませんように、と願った。





ーーーーーーーーーーーーーーーー






◎リリア&ナーナ→実はメイド件護衛。えげつなく強いらしい。メイドとしての仕事ぶりはとっても真面目で、本来の主人からユノのことをしっかり言い含められてる。本来の主人には口が避けても言えないが、健気なユノが可愛いく、徐々に弱っていく姿に心を痛めている。











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