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無計画なプロポーズ

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 「アーシェリアさん。貴女の言っている好きは愛だとか恋などのそういう好きでは無いでしょう?周囲の人達が勘違いしています。」

 周囲の人に説明するかの様に少し声を大きくするルナス様。だけどそれを聞いて更に「お?誰が誰を好きって?」と野次馬は増える。

 「そういう好きでずっとお話してるのです。
 これは愛だとか恋だとかの好きなんです。なんで好きになったかだって沢山話せます。

 私が魔憑きになり倒れていた時、ルナス様が私を背負って走ってくれました。

 何度も魔祓いを拒否する私に、1ヶ月も毎日、諦めず何度も魔術式を組み直し祓い続けて私を見捨てませんでした。

 魔祓いを嫌がる私を尊重して全ては払わないまま、両親と話す機会を作ってくれました。

 私がお手伝いに伺った時、下手な家事にも文句を言わず、何かすると必ず「ありがとう」って言ってくれるのも好きです。

 普段の仕事熱心な所も素敵なんです!!とてもとても素敵なんです!!大好きなんです!!」

 「「「おおーー!!」」」と歓声が上がる。

 ルナス様は今まで青かった顔を真っ赤にしている。可愛い!だけど負けるものかという意思を感じる。目が潤んでるのに鋭い視線だ。

 「僕は、こんな見た目です。もしそれが恋や愛の好きだとして、僕と結婚を考えられるんですか!?
 モテない僕がそのままお付き合いなんてしたら絶対に結婚を考えてしまいます。
 手に入ってしまった幸せを手離すなんて考えられないんだ。
 結婚を考えられないなら、お試しにとかそんな軽く考える余裕なんて無いんですよ。」



 け、け・・・結婚!?
 それはウェルカムなのですが!?


 「それは、プロポーズ・・・?け、結婚まで考えて下さるんですか!?」


 結婚発言に今度は押せ押せだった私がポッと赤くなる。
 野次馬から
 「プロポーズだ!いけーーにーちゃん」
 「熱烈なアプローチに結婚の話がでたぞ!」
 「男らしく決めるんだ。行けそうだぞー!!」

 と声援が上がる。
 あぁもう・・・言葉を漏らした後。深く被ったフードを取って真っ直ぐ私を見たルナス様は今まで見た中で一番格好いい姿だった。


 「あ、貴方みたいな人が、側で支えてくれて優しくされたら殆どの男は惚れてしまうと思います。もしかしたら僕なんかを受け入れてくれるんじゃないかって何度も愚かな期待をしました。・・・貴女が僕を好きだと言うなら、僕と結婚してください。貴方と軽い気持ちで関わるなんて、もう、僕には出来ない。」



 こ!

 ここ!!

 これは!!

 これはーーーーーーーーー!!


 周囲の野次馬も私の返事を聞き逃すまいと静まり返る。
 私の返事なんて決まってる。だけど緊張で声が上手く出ない。だけどしっかり伝えなくてはと声を必死に絞り出す。


 「はい、喜んで!!私と結婚してください。」


 シン・・・・と静まり返った後、わあぁぁぁぁぁ!!とお祭りのイベントかの様に盛り上がる。

 嬉しい!嬉しくて嬉しくて!!涙が溢れ出た。想いが伝わった。
 ルナス様を見ればポカンとしながら「嘘、本当に?」と呟いている。
 その肩を知らないおっさんやお兄さんが、

 「スゲーぞ!!」
 「やったな!!おめでとう!」
 「お前は全男の希望の星だ!!」

 と叩いてる。

 私は私で、ご婦人や年頃の女の子に、
 
 「貴女の告白、真っ直ぐで良かったわ!」
 「見た目に囚われない真実の愛ね!」

 と言われながら、見た目も「好みのなんだけどなぁ」とは流れ的に言えなかった。


 それから私達は走っていた。


 お使いの品を急いで買えば、皆が祝福してくれてオマケも結婚祝いだと溢れるほど貰い、全てルナス様の魔術でラグラ様のお部屋に送る。

 「急ぎましょう!!この騒ぎでご両親に伝わる前に報告しなくては」と二人で手を繋ぎ走った。
 苦しい息を整えながら走った後。魔術で屋敷まで飛べる事に気がつき二人で焦りすぎだと笑った。


 「お父様!!お母様!!」

 
 魔術で飛んで屋敷に駆け込むと、手を繋いで現れた私達を見て両親は微笑んでくれた。


 「「おめでとう、アーシェリア。」」


 挨拶をしてから、また改めて式の相談に来ますと話せば次はラグラ様に報告だ。

 ラグラ様とご友人のパーティー中のお部屋に伺おうとした時。ルナス様が研究室に寄り道をするという事で付いていった。

 「この勢いで、この人形も父に・・・いや、メメにか。見せようと思うんです。」
 
 そこで見せて貰ったのはメメの好みの30代くらいのセクシー系な女の人の人形だった。
 この光景だけ見たら持ち主を変態かと思う程の人形だ。

 「少し怖いんです。目が見える父が僕を見て顔を歪めたらと思うと。」

 この国で最も醜いと言われる姿だ、私は好きだけど怖いという気持ちもわかる。

 「でも、僕を好きだと言ってくれる君が居てくれるなら。大丈夫な気がするんです。まだ信じきれない弱い僕が居るんですけどね。」
 「弱い所も大好きです。」

 合わせていた視線を外し、下を向いたルナス様は「ありがとう。」と震える声で言ってくれた。
 人形を箱に入れて魔術で軽くするとラグラ様に会いに行く。
 

 少し賑やかなラグラ様の研究室に入るとラグラ様のご友人と楽しくお酒を飲みながら話していた。

 「あぁ、ルナス、この豪華な料理はめでたい事があったという事かな?」

 「はい、お陰さまで。」

 私はそう言うルナス様に寄り添って立つと照れながらも笑顔で返した。


 「結婚を申し込んで受けて貰えました。」
 「結婚まで話がいったのか!!ルナスやったな!!おめでとう!!」
 「もうひとつ良いことがあるかも知れません。メメ次第ですが。」


 話ながら箱の人形をラグラ様の中にいるはずのメメに見せた。

 ラグラ様のご友人達も魔術師なのか人形をまじまじと観察している。

 カタリ

 少しすると箱の中の人形が動き出した。すらりと長い手足に白い肌。おっとり系のセクシーなお姉様という感じの形状だ。継ぎ目も無く動くと本当の人みたい。さっそくネムが憑依して動かしてるのだろう。

 ネムが人形の感触を確かめてからラグラ様に向き合う。

 「どうだい、メメ。目を見えるようにしてくれるかい?」

 すると答える様にラグラ様の右目が光り・・・


 「おお。見えるな。ふむ、メメとは女性の趣味が合いそうだ。」


 ラグラ様がポツリと呟いた。

 ラグラ様のご友人達も「おお!!凄い、見えるのか!!」とラグラ様を囲み「俺がわかるか?」「私も見える?」と次々寄っていく。

 一通り終わるとこちらを見た。
 ルナス様の体がビクリと震えたのが分かると私は手をぎゅっと握る。

 「ルナスだな、アーシェリアさんは話で聞いた以上に美人だな。素晴らしい嫁が出来て良かったじゃないか!!」

 いつもよりテンションの高いラグラ様だけどルナス様を見て態度を変える様子もない。

 「はい。良かったです、本当に。」

 堪えていた物がついに溢れて来ていた。
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