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Mission 9*正体
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しおりを挟む「まず、これだけは言っておくわ。伊織と芹沢くんがSIINAに潜入したのは、全くの偶然だったの」
「偶然?」と、伊織が聞いた。
「そうよ。と言うか、私と蒼がSIINAに関わったのも、偶然なの」
常務が頷く。
「芹沢くん。伊織と椎名社長が兄妹なのは知っているのよね?」
奥さんが俺に視線を向けた。
心なしか、一瞬ドキッとする。常務の奥さんは、これまで俺が付き合ったことのない、自信に満ち溢れた賢い女性で、免疫がなかった。
「あ、はい」
奥さんに見惚れているのがバレないように、俺はコーヒーを口に運んだ。
「椎名社長と私は大学の先輩後輩なの。だから、伊織のことは入社時から先輩の妹として知っていたの。で、先輩からSIINAの問題について相談を受け、私は内情に詳しい伊織を送り込んだ。蒼はそれを何も知らなかったわ」
常務はもう一度、頷いた。
「俺の方は、直近の部下とSIINAの副社長が親戚で、SIINA内の不正を暴きたいと相談を受けた。T&N開発とSIINAは仕事上の繋がりもあることから、俺は芹沢をSIINAに送り込んだ。もちろん、その時点で咲はそれを知らなかった」
「偶然にも伊織と同時入社の人間がいると聞いて、調べたの。で、それが蒼の部下だと知ったってわけ。その時には二人はSIINAに潜入していたんだけど、私と蒼はお互いにSIINAに関わっていると知り、しばらくあなたたちにはお互いの正体を伏せておくことにしたの。念のために言っておくけど、その時点であなたたちが幼馴染だとは知らなかったのよ」
「どうして伏せることにしたんですか?」と、俺は聞いた。
「え?」
「常務と奥さんが――」
常務が軽く右手を上げて言葉を止めた。
「あー、芹沢。堅苦しいから名前で呼べ」
「わかりました。蒼さんと咲さんが知らずにSIINAに関わっていたとしても、それが分かった時点で俺たちを組ませた方が話は早かったでしょう? 幼馴染でなくとも、同じT&Nの社員である以上、どこかで互いを見知っていた可能性もあった。あなた方の知らないところで確執が生まれた可能性もありますよね? 俺たちが互いを疑って潰しあったらどうしてたんです?」
「そうなったら、私たちがその程度だったということよ。ねぇ? 咲さん」
伊織が嫌味たっぷりに咲さんに投げかけた。
「私たちを試したんですよね? 主に、私を」
「白状するわよ。そ。試したの」と、咲さんが開き直った。
「退職願は受理してください」
「伊織?」
伊織と咲さんが、またも無言で睨み合う。
「SIINAを見捨てるの?」
「いいえ。でも、もうあなたの指示には従いません」
「芹沢くんを利用したから? それとも、これ以上利用させないため?」
「……どちらもです」
伊織が、鬼の形相で咲さんを睨みつけた。咲さんは少し申し訳なさそうに、深いため息をつく。
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