ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 15*過去

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「そう言えば、『ダイゴ』って誰?」

「え?」

「この前、電話してただろ」



 やっぱり、聞いてたんだ。



 今更、隠すつもりはなかった。

「大学の頃の友達」

「今も、親しいんだ?」

 圭が大吾との仲を疑っているのがわかる。

「一番の友達だから。けど、この三年は連絡を取ってなかった。『SK』が悟之さんだとわかって、三年振りに会ったの」

 圭に渡された缶ビールで、逆上せかかった身体を冷ます。

「悟之さんは大学の非常勤講師で、私と大吾は悟之さんの講義を受けていたの。私も大吾も悟之さんのサイバーセキュリティの研究に興味があって、悟之さんの部屋に入り浸ってた。大吾は私と悟之さんの関係を知っていたけど、干渉してこなかった。大吾にも恋人がいたし……」

 言おうか迷って、小声で付け足した。

「男の」

「は?」

 しっかりと聞こえていた。

「大吾は……男でも女でもいいから」

「ああ……」

「で、私と大吾は悟之さんの研究を手伝うようになったの」

「それって、お前が実家に帰らなかった一年間のことか?」

 私は頷いた。

 圭はそれ以上、そのことについて何も言わなかった。

「ちょうどその頃、蓮兄がSIINAを立ち上げるための準備をしていて、私も手伝うことがあったの。しばらく悟之さんと会わない日が続いてたから、私は彼がしていることに気がつかなかった」

 あの頃、ほんの一時でも悟之さんに会っていれば、せめて大吾に会えていれば、気づけたかもしれない。何度も、そう思った。

「SIINAの立ち上げの時、サイバーセキュリティについて蓮兄から仕事を頼まれたの。公募したシステムの性能を確かめて欲しいって。……私は引き受けた」

 あの頃、私が蓮兄の頼みを断っていたら、悟之さんはこんなことをしなかったかもしれない。

「応募のあったセキュリティシステムを破れるかの検証をしたの。その中に……憶えのあるプログラムがあった」

「木島悟之のプログラムか……」

 私は静かに首を振る。



 もし、あれが悟之さんのプログラムなら、どんなに良かったか……。



「私が作ったプログラムだった――」

「え?」

「私のプログラムがネットワークシステム化されて、悟之さんの名前で応募されていたの」

「盗作……か?」

 頷く。

「しかも、悟之さんはそのシステムに一千万円の値をつけていた」

「一千万?」

「そう。でも、そのシステムに一千万の価値はなかった」

「伊織がそれを立証したのか」

 もう一度、頷く。

「じゃあ、伊織は自分のプログラムをクラッキングしたのか?」

「そう……いうことになるかな」

「違うのか?」

「私のプログラムはあくまでも悟之さんのシステムの一部で、プログラム自体も未完成だったの。だから、私がクラッキングしたプログラムは私のであって私のではなかった」

 無意識に、缶がへこむほど強く、缶を握りしめていた。

 圭が私の手から缶を取り上げ、テーブルに置く。

「アイデアを盗まれたってことか?」

 頷こうとした時、圭が私を抱き寄せた。

 圭の胸に身体を預ける。少し駆け足程度の鼓動が耳に響く。
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