ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 15*過去

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「私と蓮兄の関係を……悟之さんは知らなかったの。だから、私が彼のシステムを破ったと知って、怒ったわ。『どうして裏切ったんだ』って」

「裏切る?」

「システムが悟之さんのものだと気づいた時、私はそのシステムを破らずに蓮兄に推薦することも出来たのよ。少しの改良で文句なしのシステムになる、って」

「けど、お前はそうしなかった」

「どう言い繕っても、あのシステムに一千万の価値はなかったし、蓮兄に嘘をつけるほど悟之さんに気持ちはなかった」

 圭の鼓動が少し跳ねた。

「大吾も関わっていたのか?」

「大吾は悟之さんを手伝っていたの。だけど、それが私のプログラムだとは知らなかった。純粋に、悟之さんのプログラムだと思っていたらしいわ。悟之さんがシステムを一千万でSIINAに売ろうとしていたことも知らなかったし。だから、悟之さんのしたことを知って、ショックを受けていたし怒っていた。私には謝ってくれた」

 大吾が私の言葉を信じ、味方をしてくれたことが救いだった。

 結果として、それが悟之さんの怒りを助長させたのだけれど。

「悟之さんがSIINAをクラッキングして極秘情報の売買なんてことをしたのは、私への復讐なのかもしれない――」

 私を抱く圭の手に力がこもる。

「もし、そうだとしても、悪いのは伊織じゃないだろ」

 圭の言葉に、ほんの少し心が軽くなった。

「木島に……会うんだろ」

「え?」

「この前の大吾との電話でそう言ってたろう? しかも、木島の協力者だと知って笠原さんに近づいた」

「圭」

「行くなって言っても、行くんだろうな」

 返事の代わりに、キス。

「一人はダメだ」

「人の多い場所で会うから大丈夫」

「俺も行っちゃダメか?」

 見上げると、圭は酷く心配そうに私を見ていた。唇が軽く触れる。

「大丈夫だから……」

 今度は唇が深く重なる。

「ダメだな……」と、圭がため息交じりに言った。

「木島の顔を見たら、じっとしていられる気がしない」

 いつも私が圭の彼女たちに嫉妬していたから、圭に嫉妬してもらえるのは心地いい。

「私は……どうかな……」

「ん?」

「正直、悟之さんを説得出来る自信なんてないから……」

「SIINAから手を引くように?」

「そう……なるのかな……」

『悟之は逮捕されるの?』

 そう言って涙を流す笠原さんの姿が思い出された。



 悟之さんに会って、何を言うつもり……?



 四年も前に別れた、自分を裏切ったセフレに罪を咎められて、悟之さんが改心するとは思えない。

 良くも悪くも、私は悟之さんをよく知っている。

『逮捕』という現実が、胸を締め付ける。

 逃げ、だとわかっていても、今は忘れたかった。

「圭……」

 今は圭の熱だけを感じていたかった。

「抱いて……?」

 今は悦びだけを知っていたかった。
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