ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 20*誓い

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 懸命に平然を装っていたが、内心は有り得ない速さで心臓が走っていた。

 咲さんに言われてから、『誠意』とは何かを考えて、考えて、この場を選んだ。

 俺たちはずっと家の中では一番近くて、外では一番遠かった。

 だから、その頃の俺たちを知っている同級生みんなの前で、プロポーズすることにした。

 周囲に認められることで、俺たちが不釣り合いだなんて不安を拭ってやりたかった。



 いや、俺の不安を拭いたかった――。



 もう、置き去りにされたくない。

 だから、必死の思いで言った。

「全力で! 幸せにするから――!!」

 必死過ぎて、緊張し過ぎて、泣きそうだった。

「それは、嫌」

 伊織の言葉に、視界が歪む。

 俺を見る伊織の顔が、涙で揺れた。

 無意識に噛んでいた下唇が痛い。

「一緒に幸せになるんでしょう?」

 伊織の指が俺の唇に触れる。噛むのをやめると、余計に痛みが増した。

「私も……圭と結婚したい――」

 伊織の瞳に涙が浮かぶ。ゆっくりと雫が頬を伝う。

「おめでとう! 圭!!」

 あづみが拍手をくれた。

 二日前、俺はあづみに同級生みんなを集めて欲しいと頼んだ。伊織にプロポーズしたいことも話した。

 あづみは二つ返事で協力してくれた。

「何だよ、芹沢! 泣いてんのか!?」

本気マジかよ……。カッコ良すぎだろ」

 茶化す声など全く気にならなかった。伊織を抱き寄せ、キスをする。

 伊織がキスから逃れようともがいても、俺は放さなかった。

 再び、静寂。

 失礼します、と声が聞こえて襖が開く。みんなが店員の顔を見た瞬間、唇を離した。

 店員が注文したものを置いて、襖を閉めた。

 再び、みんなの視線が俺たちに集まる。

 伊織は恥ずかしそうにうつむいてしまった。

「で? 公開プロポーズするために俺たちを集めたのか?」

 長谷川が聞いた。

 高校時代、一番仲が良かった。

『お前、本命がいるだろ』

 初めて伊織を抱いた何日か前、そう言われたのをはっきりと覚えている。

 俺がどれだけ女を替えても何も言わなかった長谷川が、その時一度だけあからさまに軽蔑の眼差しで言った。

『虚しくなんねーの?』

 虚しいに決まっている。

 誰を抱いていても、想うのは伊織のこと。

 伊織はどんな風に乱れるんだろう。

 伊織はどこが感じるんだろう。

 伊織はどんな風に啼くんだろう。



 確かめてみたい――――。



『じゃあ、伊織が相手してよ』

 ほんの少しの冗談と、かなりの本気を込めた言葉は、長谷川に後押しされたようなもんだ。

 あれから、俺と伊織は動き出した。

「俺らを証人にして泣き落としとか、必死過ぎだろ」と言って、長谷川が笑った。

「もちろん、結婚式には呼んでもらえるんだろうな?」

「ご祝儀、たっぷりヨロシク」と、冗談めかす。

「スピーチ、させろよ? 今日のこと暴露してやる」

「あーーー。やっぱお前ら呼ばない」

 部屋中に笑いが溢れる。

「指輪! 見せて!!」
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