続・最後の男

深冬 芽以

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3 誰もが持つ裏の顔

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「で、荻野さんは隼と谷君にチョコを渡したのかしら」

「さあ? 私が見ていた限り、そんなチャンスはなかったと思いますけど」

「ま、来たら聞いてみましょ」と、凪子さんがちょっと意地悪な顔で笑った。

 凪子さんと千堂課長の年の差は八歳。私と智也は二歳。

 そう、たった二歳なのだ。

 なのに、凪子さんのように堂々としていられない。

「あの、もう一つ、聞いてもいいですか?」

「なに?」

「千堂課長と付き合うの、不安とかないですか?」

「そりゃ、あるでしょ」

 即答されたことに、驚いた。

「けど、悩んでてもどうしようもないことだし」

 ごもっとも。

「なら、現在いまを楽しもうと思うのよ」

 そう言って微笑む凪子さんに、私は自分を重ねた。

 目に見えるものが全てではない。

 自信満々に見える凪子さんにも不安があって、それを見せないようにしているだけ。

 その証拠に、凪子さんは私も一緒に食事をしようと言って、もちろん私は遠慮したけれど、千堂課長が来るまで粘り続けた。

 私と凪子さんの攻防を見て、千堂課長は苦笑いをした。

「すみません、付き合わせてしまって」

 凪子さんに押し切られる形で、私は千堂課長とソファに座っていた。ダイニングテーブルの準備が出来るまで、待っていてほしいと言われて。

「私の方こそ、すみません。もっと早く帰っていたら良かったのに……」

「変なところで、気にしぃなんですよね。凪さん」

「え?」

「一年もこの部屋に呼んでもらえなかったのも、自分の方が収入があるからいいところに住んでるのを、俺が気にするんじゃないかとか気にしてたみたいだし」

 千堂課長がカレーを盛り付ける凪子さんを眺めて言った。とても愛おしそうに。

「今も、手料理なんて初めてだから、照れ臭いんだと思います」

「可愛いですね」

「本人は認めませんけど」

 カーテンがないと、夜の闇が間近に感じられる。微かに、白いものが浮かんでいるのが見えた。

 今朝の天気予報で、十八時以降雪が降り始める、と言っていた眼鏡をかけた予報士の姿を思い出した。

 今は二十時十分前。確かに十八時以降だ。

「堀藤さんも気になりますか? 恋人が年下なこと」

「気になるのは、恋人が年下なことじゃなく、恋人より年上なこと、ですね」

「同じでしょう?」

「全然違いますよ。年下だから子供っぽくて嫌だとか、私は母親じゃないのよ! っていうのと、こんなおばさんはいつか愛想を尽かされちゃうんだろうな、っていうのとでは」

「……凪さんもそう思ってるんですかね」

 私は、千堂課長の不安を垣間見た気がした。

 凪子さんを不安にしている、ことが千堂課長の不安。
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