12 / 147
2.OLC
4
しおりを挟む
「そういえば、麻衣。あれからどうだ?」
ジョッキ半分のビールを胃に溜めて、陸が聞いた。
「一度打ち合わせで会ったけど、何も言われなかった」と、麻衣。
「ホント、助かったよ」
「何の話だ?」と、大和が聞いた。
「それがさ――」
失礼します、と声が聞こえて、襖が開く。店員が料理を運んできた。
大根サラダとシーザーサラダ、焼き鳥のアラカルトと、チーズの盛り合わせ、フライドポテトと鶏の唐揚げ、たこわさ、エイヒレ……。
ひとまず、テーブルいっぱいに皿が並んだ。
陸がビールを注文する。
私とあきらはサラダを取り分けて麻衣とさなえに回し、麻衣とさなえは揚げ物を取り分けて回してくれた。
「――で? 麻衣がなんだって?」と、大和が途中になった話の続きを催促した。
「顧客に誘われて陸のホテルで食事したの」
麻衣が答えた。
「ちょっとしつこかったから、陸に助けてもらったってだけ」
「陸のホテルって高級いだろ!? そりゃ、男は期待するわ」
「金持ってんのねー」と、私は大根を噛みながら言った。
「好みじゃなかったの?」
「なんか……嫌な予感はしてたんだよね」と、麻衣が空笑いをした。
「もしかして、また?」
「……」
「麻衣ちゃん、何もされなかった!?」と、さなえが心配そうに聞く。
「大丈夫。レストランを出たところで陸に助けてもらったから」
「――ってか、なんでホテルで食事なんかしたのよ。下心ありありじゃない」
「人目があるし……。陸のホテルだったから、大丈夫かなと思って」
麻衣が、えへへ、と笑う。
「いや、大丈夫じゃないだろ」と、大和。
「そうだぞ。俺がいない時だったらどうすんだよ」
「そうなんだけどね?」
「なんかあったの?」と、あきらが聞いた。
「麻衣がそんなあからさまな誘いに乗るなんて、珍しいね」
「……後輩の……挑発に乗っちゃった感じ?」
「後輩?」
「前に言ってた、教育係してやってる奴?」
「そ。生意気なこと言うから、つい……」
「つい、じゃねーだろ。そんな挑発に乗って何かあっても自己責任だぞ」と、陸がきつめに言った。
陸と麻衣は同じ年だからか、大学時代から特別仲がいい。
陸は男運の悪い麻衣を特別心配しているし、麻衣も陸を信頼している。
いつか恋愛関係に発展するのではと思っていたけれど、そうならないまま陸は結婚した。
「とにかく! あの男とはもう会うなよ? ここだけの話、あいつはうちの常連だけど、女はいつも違うし、プロを呼んでることもあるらしい」
「プロ?」と、麻衣が聞いた。
「デリヘル嬢とか?」と、あきらも聞く。
「らしい」
「うわ、最低!」と、さなえ。
「麻衣、ダメだよ。二人きりになっちゃ」と、私。
「うん……」
麻衣が伏目がちに言った。
麻衣は容姿にコンプレックスを持っている。
童顔で背が低く、ぽっちゃり体形で、胸が大きい。初対面では、まず十歳は若く見られる。
そのせいで、大学時代から痴漢されたり、告白されて付き合った男に変態的なプレイを要求されたりして、怖い思いをしてきた。
男の視線が胸に集中するのが嫌で、襟の開いた服は着ない。一人で夜道は歩かない。防犯ブザーや催涙スプレーは必需品。
ジョッキ半分のビールを胃に溜めて、陸が聞いた。
「一度打ち合わせで会ったけど、何も言われなかった」と、麻衣。
「ホント、助かったよ」
「何の話だ?」と、大和が聞いた。
「それがさ――」
失礼します、と声が聞こえて、襖が開く。店員が料理を運んできた。
大根サラダとシーザーサラダ、焼き鳥のアラカルトと、チーズの盛り合わせ、フライドポテトと鶏の唐揚げ、たこわさ、エイヒレ……。
ひとまず、テーブルいっぱいに皿が並んだ。
陸がビールを注文する。
私とあきらはサラダを取り分けて麻衣とさなえに回し、麻衣とさなえは揚げ物を取り分けて回してくれた。
「――で? 麻衣がなんだって?」と、大和が途中になった話の続きを催促した。
「顧客に誘われて陸のホテルで食事したの」
麻衣が答えた。
「ちょっとしつこかったから、陸に助けてもらったってだけ」
「陸のホテルって高級いだろ!? そりゃ、男は期待するわ」
「金持ってんのねー」と、私は大根を噛みながら言った。
「好みじゃなかったの?」
「なんか……嫌な予感はしてたんだよね」と、麻衣が空笑いをした。
「もしかして、また?」
「……」
「麻衣ちゃん、何もされなかった!?」と、さなえが心配そうに聞く。
「大丈夫。レストランを出たところで陸に助けてもらったから」
「――ってか、なんでホテルで食事なんかしたのよ。下心ありありじゃない」
「人目があるし……。陸のホテルだったから、大丈夫かなと思って」
麻衣が、えへへ、と笑う。
「いや、大丈夫じゃないだろ」と、大和。
「そうだぞ。俺がいない時だったらどうすんだよ」
「そうなんだけどね?」
「なんかあったの?」と、あきらが聞いた。
「麻衣がそんなあからさまな誘いに乗るなんて、珍しいね」
「……後輩の……挑発に乗っちゃった感じ?」
「後輩?」
「前に言ってた、教育係してやってる奴?」
「そ。生意気なこと言うから、つい……」
「つい、じゃねーだろ。そんな挑発に乗って何かあっても自己責任だぞ」と、陸がきつめに言った。
陸と麻衣は同じ年だからか、大学時代から特別仲がいい。
陸は男運の悪い麻衣を特別心配しているし、麻衣も陸を信頼している。
いつか恋愛関係に発展するのではと思っていたけれど、そうならないまま陸は結婚した。
「とにかく! あの男とはもう会うなよ? ここだけの話、あいつはうちの常連だけど、女はいつも違うし、プロを呼んでることもあるらしい」
「プロ?」と、麻衣が聞いた。
「デリヘル嬢とか?」と、あきらも聞く。
「らしい」
「うわ、最低!」と、さなえ。
「麻衣、ダメだよ。二人きりになっちゃ」と、私。
「うん……」
麻衣が伏目がちに言った。
麻衣は容姿にコンプレックスを持っている。
童顔で背が低く、ぽっちゃり体形で、胸が大きい。初対面では、まず十歳は若く見られる。
そのせいで、大学時代から痴漢されたり、告白されて付き合った男に変態的なプレイを要求されたりして、怖い思いをしてきた。
男の視線が胸に集中するのが嫌で、襟の開いた服は着ない。一人で夜道は歩かない。防犯ブザーや催涙スプレーは必需品。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる