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4.女子会
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麻衣の口からそんなことを聞くとは思わず、目をパチクリさせてしまった。
想像して使うって、つまり――。
「抜くのに使うってこと?」
「千尋!」
ストレートな表現に、あきらが慌てて私の口を手で覆った。
このメンバーで話していると、ついオブラートの使い方を忘れてしまう。
いつまでも大学生気分ではいけないとはわかっているけれど、つい。
さなえは思いっきり顔を赤らめて、俯いてしまった。
「わかんないよ? わかんないけど、男の人って……そうなのかも?」
私はあきらの手を払い除けた。
麻衣らしくない言葉の真意が気になる。
「それは、麻衣の経験?」
「経験……っていうか……」
「鶴本くんに言われたの?」
「言われた……というか……」
「もうっ! ハッキリ言っちゃいなさい」
じれったくて、少し強めの口調で言ってしまった。
「鶴本くんが……私の匂いのついたものがあったら、いい夢見れそうだって……言ってた……か……ら……」
「例えば?」
「え?」
「鶴本くんに麻衣の服が欲しいって言われたの?」
麻衣が首を振る。
「じゃあ、なに?」
「シー……――」
聞き取れない。
「なに?」
「シーツ!」
「はっ!?」
シーツ……!?
「麻衣のシーツが欲しいって言ったの? そんなん、使い道は――」
「千尋! 声がデカい!」
そばにいた店員にジロリと見られた。他の客には聞こえてないようだ。
「一昨日、鶴本くん家に泊まったの。シてないよ!?」
いや、シてもいいだろうけど……?
「――けど、シーツは洗っちゃダメだって言われて――」
「使うから?」
「――じゃなくて!」
「ああ。『いい夢』を見れそうだから、だっけ?」
麻衣が頷く。
麻衣は顔が真っ赤。
さなえは深く俯いている。
あきらは……。
意外なことに、あきらまで少し照れ臭そうにしている。と思ったら、次は難しい顔。
龍也と似たようなことがあったか……?
「まあ、確かに『いい夢』だよね」
『ごちそうさま』の代わりに、言った。
みんな、充実した恋愛をしているようで、なにより。
「そうは言うけど!」と、麻衣が目を見開いて私を見た。
「千尋はないの? 寂しい時とか、好きな人の服を抱き締めて眠ったりしちゃうこと!」
「……」
思わず、黙ってしまった。
昨夜、比呂のパーカーを着て眠ったことを思い出し、私まで恥ずかしくなる。
それを誤魔化すように、私は頬杖をついて麻衣に言った。
「試してみる価値はあるかも……ね?」
あきらの視線が気になったが、目は合わせなかった。
「とりあえず、やってみよう! さなえ」
「けど、反応なかったら?」
「それは、その時に考えよ? 美容室に行ってさっぱりしてさ、普段着てるパーカーとかカーディガンとか、うっかり忘れちゃったみたいに置いとくの。次の日にはわかるじゃない? 大和がそれに触れたのか」と、麻衣が言った。
「それか、『パーカー置き忘れた』とか言って、大和の部屋に行っちゃえば? で、くっだらない話でもしてさ」と、あきら。
「そうそう」と、私が頷く。
「ま、とりあえず! 美容室行って、さっぱりしよ。それだけで、気分も変わるよ」
三時間後。
私たちの作戦は、早くも半分が成功した。
あきらが送ったメッセージに既読が付くや否や、有り得ない速さで大和がさなえを迎えに来た。
次の飲み会で二人目の妊娠報告もあるんじゃない!?
きっと、あきらと麻衣もそう思ったはず。
車に乗り込むさなえは、嬉しそうだった。
車を見送った私たち三人は、一仕事を終えた安堵と達成感でいっぱいだった。
何となく、三人してスマホを見て、それから、解散した。
想像して使うって、つまり――。
「抜くのに使うってこと?」
「千尋!」
ストレートな表現に、あきらが慌てて私の口を手で覆った。
このメンバーで話していると、ついオブラートの使い方を忘れてしまう。
いつまでも大学生気分ではいけないとはわかっているけれど、つい。
さなえは思いっきり顔を赤らめて、俯いてしまった。
「わかんないよ? わかんないけど、男の人って……そうなのかも?」
私はあきらの手を払い除けた。
麻衣らしくない言葉の真意が気になる。
「それは、麻衣の経験?」
「経験……っていうか……」
「鶴本くんに言われたの?」
「言われた……というか……」
「もうっ! ハッキリ言っちゃいなさい」
じれったくて、少し強めの口調で言ってしまった。
「鶴本くんが……私の匂いのついたものがあったら、いい夢見れそうだって……言ってた……か……ら……」
「例えば?」
「え?」
「鶴本くんに麻衣の服が欲しいって言われたの?」
麻衣が首を振る。
「じゃあ、なに?」
「シー……――」
聞き取れない。
「なに?」
「シーツ!」
「はっ!?」
シーツ……!?
「麻衣のシーツが欲しいって言ったの? そんなん、使い道は――」
「千尋! 声がデカい!」
そばにいた店員にジロリと見られた。他の客には聞こえてないようだ。
「一昨日、鶴本くん家に泊まったの。シてないよ!?」
いや、シてもいいだろうけど……?
「――けど、シーツは洗っちゃダメだって言われて――」
「使うから?」
「――じゃなくて!」
「ああ。『いい夢』を見れそうだから、だっけ?」
麻衣が頷く。
麻衣は顔が真っ赤。
さなえは深く俯いている。
あきらは……。
意外なことに、あきらまで少し照れ臭そうにしている。と思ったら、次は難しい顔。
龍也と似たようなことがあったか……?
「まあ、確かに『いい夢』だよね」
『ごちそうさま』の代わりに、言った。
みんな、充実した恋愛をしているようで、なにより。
「そうは言うけど!」と、麻衣が目を見開いて私を見た。
「千尋はないの? 寂しい時とか、好きな人の服を抱き締めて眠ったりしちゃうこと!」
「……」
思わず、黙ってしまった。
昨夜、比呂のパーカーを着て眠ったことを思い出し、私まで恥ずかしくなる。
それを誤魔化すように、私は頬杖をついて麻衣に言った。
「試してみる価値はあるかも……ね?」
あきらの視線が気になったが、目は合わせなかった。
「とりあえず、やってみよう! さなえ」
「けど、反応なかったら?」
「それは、その時に考えよ? 美容室に行ってさっぱりしてさ、普段着てるパーカーとかカーディガンとか、うっかり忘れちゃったみたいに置いとくの。次の日にはわかるじゃない? 大和がそれに触れたのか」と、麻衣が言った。
「それか、『パーカー置き忘れた』とか言って、大和の部屋に行っちゃえば? で、くっだらない話でもしてさ」と、あきら。
「そうそう」と、私が頷く。
「ま、とりあえず! 美容室行って、さっぱりしよ。それだけで、気分も変わるよ」
三時間後。
私たちの作戦は、早くも半分が成功した。
あきらが送ったメッセージに既読が付くや否や、有り得ない速さで大和がさなえを迎えに来た。
次の飲み会で二人目の妊娠報告もあるんじゃない!?
きっと、あきらと麻衣もそう思ったはず。
車に乗り込むさなえは、嬉しそうだった。
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何となく、三人してスマホを見て、それから、解散した。
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