【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

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6.決意

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 結局、惚れたモン負けだ。

 土曜日。

 俺は千尋の部屋を訪れた。

 千尋は寝惚けた顔で、けれど驚いてもいた。

「どうしたの?」

 その問いに、俺は驚くほどショックを受けた。

 俺には『何しに来たの』と聞こえた。

 俺が突然押しかけると、千尋は呆れた顔でため息をつきながら、それでも仕方がないと言わんばかりにドアを大きく開けてくれた。

 けれど、今日の千尋は、自分の身体がぴったりと納まる幅以上、ドアを開けなかった。

 俺が入る隙間などないと、言われている気がした。

 それでも、そのショックを表情に出さないだけのスキルはあって、俺はいつものように笑った。

「どうしたの、はお前だろ。今まで寝てたのか?」

 開けてもらえないドアを、俺は自分でこじ開けた。

「昼飯買って来たから、食おーぜ」

 時間は午前十一時二十分。

 珍しくリビングが散らかっていた。

 テーブルだけでなく、床にまで資料やカタログが散乱している。

「仕事、持ち帰ったのか?」

「うん」

「珍しいな」

「……うん」

 千尋は小さく欠伸をして、その口を手で覆った。俺のパーカーは着ていない。

「ご飯、何?」

「ああ。俺ん家の近くのおむすび屋の弁当」

 千尋の最寄り駅の前には手作り弁当の店とパン屋、コンビニが並んでいて、スーパーは駅の反対側にある。

 俺が千尋を訪ねる時、決まって弁当かパンを買っていた。けれど、食べ慣れている千尋はそれを嫌がり、俺は自分の最寄り駅の近くにある弁当屋で買うようになった。

『おむすび屋』という名前の通り、十何種類の手作りおむすびの店で、総菜も売っている。千尋はそこの、ハラスのおむすびが好きだ。

 千尋は俺の手から袋を受け取ると、中を覗き込んだ。目当ての包みを取り出す。

 散らかったテーブルを片付けることはせずに、俺たちは床に座って、おむすびを食べた。なぜか、背中合わせだった。

「うまいか?」

「うん」

 ソファの上に広げられている図面に目を向けた。それから、床のカタログ。照明やカーテン、建具、壁紙。

「これ、北嶋きたじま邸の内装案か?」

「うん」

 北嶋邸は二世帯住宅。

 一階に夫の両親、二階に新婚夫婦が暮らす。

 一階は夫婦の寝室と、だだっ広いリビングダイニングだけで、かなりシンプル。ご夫婦は仲が良く、起きている時は同じ空間で過ごすから、本棚やご主人の机もリビングに置くのだという。

 ところが、二階の新婚夫婦は、ログハウスのような家にしたいと言う。リビングとダイニングの間に木の丸い柱が欲しいとか、バーベキューが出来るテラスが欲しいとか。

 一先ず、要望を聞いて、俺が設計した。最初は金城かねしろを担当にしたのだが、泣きつかれた。

 その設計書を千尋に渡したのが一昨日の事。

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