【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

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6.決意

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 その週の五日間。

 昼少し前に、美幸は来た。

 何度言っても、俺の携帯は鳴らさずに、会社の受付を通して俺を呼び出した。

 ただ、向かい合って、黙って飯を食うだけ。

 味気ないのを通り越して、吐き気がした。

 他の男への復讐の道具にされるのは、気に入らない。本当に、気に入らない。

 でも、それ以上に、千尋が何の反応も示さないことが、更に気に入らなかった。

 駆け引きのつもりだった。

 千尋と付き合い始めてから、五日間続けて彼女の家に行かなかったのは、初めてだった。

 ウザがられるくらい入り浸っていたから。

 千尋の家は居心地がいい。

 口で何と言おうと、ちゃんと俺の分の飯も用意してくれて、セックスの相手もしてくれる。千尋も俺との生活を気に入っているんだと思っていた。

 美幸と会うことに無関心を装っていても、本心では嫌がってくれていると思っていた。実際、電話では言ってくれた。

『好きよ。奥さんを抱いたらムスコを再起不能にしてやりたいと思うくらいには』

 少々過激な表現だが、要するに、自分以外の女を抱くのは許さない、という千尋なりの嫉妬と独占欲だと、俺は解釈した。

 俺のパーカーが布団の中にあったのも、そう思った理由の一つ。

 帰る時、俺は確かに自分の箱にパーカーをしまった。出しっ放しにして帰ると、千尋がうるさいから。それが、布団の中で丸まっていた。

 俺のパーカーを着たのだろうか。

 抱き締めたのだろうか。

 どちらにしても、パーカーは柔らかく、皺になっていた。



 今頃、また、俺のパーカーを着てたりするのかな……。



 本当にそうだろうか。



 案外、俺との関係が終わると思って、捨てられてたり……?



 情けない。

 美幸のことで妬かせて、会いに行かないことで焦らして、本音を引き出すつもりが、不安になったのも忍耐を強いられたのも、俺の方。

 一人でいると、良からぬことばかり考えてしまう。

 仕事の話だと分かっているのに、パーテーション越しに千尋と長谷部課長の声が聞こえると、気になって堪らなかった。



 俺と別れて、長谷部課長ともう一度、なんてことには……。



 いや、待て。

 千尋は左手の薬指に指輪をしていなければ興味がないはず。

 独身の長谷部課長は対象外だ。



 ん?

 だが、そもそも、どうして千尋は結婚指輪にこだわる?



 千尋がなぜ、既婚者ばかりと関係を持つのか、聞いたことはなかった。

『指輪をしていない男には、感じないの』 

 そんなのは、俺を本気にさせないための方便だと思っていた。

 だが、離婚間際の長谷部課長とも関係があったとなると、本当の事なのかもしれない。
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