【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

文字の大きさ
69 / 147
9.面倒臭い快感

しおりを挟む

「わかってるのに、龍也を突き放したの?」

『……』

 イライラする。

 あきらさえ、素直になって龍也を受けれたら、私の好きな二人が幸せになれるのに。

「そこまで龍也が好きなのに、他の男と結婚なんて出来るの?」

『…………』

 ムカムカする。

 子供が持てない、ただその一つの為だけに幸せを拒絶するなんて。

「あきら! いつまで悲劇のヒロインぶってんのよ!!」

『千尋にはわかんないでしょ!』

 久し振りに、聞いた。

 あきらの感情的な声。

『結婚もしない、子供もいらない千尋には、わからない!!』

 大学時代はよく、麻衣がダメ男に泣かされると、あきらが一番怒ってた。

 さなえが麻衣に寄り添い、私はダメ男に引っ掛かる麻衣を諭し、あきらは今にも男を殴りに行きそうな剣幕で怒ってた。そんなあきらを龍也がなだめ、その隙に本当に男を殴りに行こうとする大和と陸を私が止める。

 そんな七人。

 卒業して、大和とさなえの結婚式で再会して、ちょっと老けたけど変わらない七人の関係が心地良かった。

 あきらが、昔のように怒ったり笑ったりしなくなったのは、子供が産めなくなってから。

 結婚話まで出ていた元カレと酷い別れ方をして、龍也に慰められてから。

 人生を諦めたように、冷めた表情かおをするようになった。

 そんなあきらが、叫んだ。

 心の底から。

『甘ったれるな!』と言ってやりたくて息を吸い込んだ時、比呂の手に肩を掴まれた。

 はっきりとは聞こえなくても、何となく会話の内容はわかったようで、軽く首を振った。

 感情的になるな、と言いたいのだろう。

 私はスマホを耳から離し、素早く深呼吸をした。

「わからないわよ。私はあきらじゃないもの。だけど、龍也とあきらが本気でお互いを大事に想ってることは、わかる。絶対、龍也以外の男とは幸せになれないのに、それを認めて龍也を受け入れないあきらがバカなことも、わかる」

『ふ……っ』

 泣いているのを気づかれまいと、声を押し殺す息遣いが聞こえた。

 こんなこと、私に言われなくても、あきらはよくわかっているはずだ。それでも、私があきらと龍也に幸せになって欲しいと願っているとわかっていて電話をかけてきたのは、慰めて欲しいからなのか、ただ話を聞いて欲しかっただけなのか。それとも、バカなことをしているとなじって欲しいからなのか。



 私の反応なんて、それこそわかりきってるだろうに……。



「明日、龍也がぽっくり死んじゃっても後悔しない?」

「はっ!?」

 今まで黙っていた比呂が、甲高い声を出して、慌てて手で口を押えた。

 傷ついている友達になんてことを言うのだと、思っているのだろう。

 私は、次に私が何を言うのかと緊張している比呂を横目に、続けた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

最後の女

蒲公英
恋愛
若すぎる妻を娶ったおっさんと、おっさんに嫁いだ若すぎる妻。夫婦らしくなるまでを、あれこれと。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...