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9.面倒臭い快感
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しおりを挟む「龍也のことだから、今わの際にあきらの名前を呼びそう」
『……』
「あきらの本心を聞けずに死ぬなんて、死にきれなくて化けて出るかもね」
『何が言いたいのよ……』
声から察するに、私の突拍子もない話の流れに、あきらの涙も止まったよう。
「龍也が成仏できるかどうかは、あきら次第ってことよ!」
『意味わかんないから!』
「後悔するなってこと! 後は自分で考えろ、バカあきら!!」
あきらが言い返す前に、私は電話を切ってスマホをテーブルに置いた。
「お前、泣いてる友達になんつーことを……」
「いいのよ! あんなわからずやの頑固者!」
私は目の前のカップに手を伸ばし、温かいコーヒーを一口飲んで、ふうっと息を吐いた。
「龍也が幸せにしてくれるって言ってんのに、ぐちゃぐちゃ言い訳してさ! いつか龍也が後悔するかもなんて、考えたってわかるわけないじゃない!」
もう一口コーヒーを飲んで、カップをテーブルに置き、ドカッとソファにお尻からダイブした。
「酔わせて婚姻届けにサインさせてやろうか」
「いくら友達でも、犯罪はやめとけ。つーかお前、ぽっくり死ぬネタ、好きだな」
「は?」
「俺にも言ったじゃん。『明日ぽっくり死んだら、保険金は奥さんのモノになるけどいいのか』って」
「ああ……」
「誰かいたのか? 後悔したままぽっくり死んじゃった人」
『あの人と同じお墓に入りたかった』
ずっと忘れていた声が、耳の奥によみがえる。
『あの人の妻になりたかった――』
背筋がゾクッと寒くなる。
「とにかく、人生何があるかわからないんだから! 龍也があんなに想ってくれてるんだから、あきらは龍也を信じればいいのよ!」
「その言葉、誰かそっくりお前に言ってくんないかね」
「はぁ?」
興奮気味に比呂の首根っこを掴む勢いで迫ると、チュッと音を立ててキスをされた。
「俺が幸せにするって言ってんのに、指輪してなきゃとかぐちゃぐちゃ言ってんのは、どこの誰だろうな? こんなに愛してんのに、信じてくんないのは?」
急に真顔で見下ろされ、思わず身体を引く。が、腰をホールドされて引き寄せられる結果となった。
「けど、そうだな。わからずやの頑固者は、酔わせて婚姻届けにサインさせるくらいがちょうどいいのか」
首筋に顔を埋め、唇を押し付けられる。
「つけちゃ――」
「お前がぐちゃぐちゃ言わずに俺を受け入れたら、お前の友達もそうするんじゃね?」
キスマークをつけられるのかと思ったら、舌先が触れてチロチロと行ったり来たり。
息がかかってくすぐったい。
「なんでよ」
「なんとなく」
「うわ。テキトー」
「ちょうどいいだろ。ぐちゃぐちゃ考え過ぎるお前らには」
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