【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

文字の大きさ
85 / 147
11.波乱の忘年会

しおりを挟む

「セックスはさせんのに、恋人にはならないって? セフレの関係が楽だって奴も多いみたいだけど、そんな感じ?」

 目の前に本人がいると知らないとはいえ、散々な言われように、さすがの私も苦笑いしてしまった。

「違います! 本気の恋愛に臆病なだけです。悪女わるぶってるけど、本当は俺以上に一途で、優しいんです!」



 よくわかってるじゃない。



「龍也にそこまで想われるなんて、幸せだねぇ」と、麻衣は目に涙を溜めて微笑んだ。

 麻衣は時々、泣き上戸になる。

「素直になって、龍也を受け入れてくれるといいね。龍也なら、絶対大事にしてくれるんだから」

「麻衣ひゃん……」

 感極まって、龍也まで涙目。

 やけくそか、あきらはわずかずつ残っている料理を平らげている。



 ホント、素直じゃないんだから……。



 タコのカルパッチョを噛みしめたあきらが顔を上げ、三度目が合う。



 いーこと、思いついた。



 いたずら心に火がつく。



 私が一肌脱いであげましょ。



「龍也、地球滅亡の瞬間、誰と一緒に居たい?」

「あきら!」

 私の問いに、龍也が間髪入れずに答えた。

 スッキリ。

 私以外の三人が、聞き間違いかと目をパチクリさせる。



 さ、あとは――。



 龍也と目が合う。

 ニヤリ、と含みのある笑み。



 私が振らなくても、言うつもりだった――?



「え――、龍也が好きなのって――」

「あきら」

 その声は、力強く、迷いもなくて、酔った弾みには聞こえない。



 龍也も、やるじゃん。



 あきらは目を閉じて、何か祈っているようだ。恐らく、龍也が冗談だと誤魔化してくれることを祈っているのだろう。

 けれど、あきらの祈りも虚しく、龍也は更に言い切った。

「俺、あきらが好きなんです」

「マジで!? お前ら、いつの間にデキてたんだよ! つーか、龍也。まさか大学ん時から好きだったとか言わないよな」と、大和が興奮して言った。

「大学ん時も! 好きだったんです。けど、あきらには恋人がいたから諦めたんですよ。ま、今はもう、諦めるのも諦めましたけど」

「どういう意味だよ?」

「諦めるなんて無理だってわかったんで。もう、死ぬまであきら口説いてようと思って」

「どういう意味だよ?」

「諦めるなんて無理だってわかったんで。もう、死ぬまであきら口説いてようと思って」

 突然の告白と展開に唖然としている私たちを置き去りにして、龍也はあきらの手を握り、みんなに見えるように持ち上げた。

「あきら、早く諦めて結婚して」



 え、プロポーズ!?



「俺は絶対諦めないから、あきらが諦めろ」

 龍也を見つめるあきらの表情を見れば、二人の結婚報告が秒読みなのは明らかだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

処理中です...