87 / 147
11.波乱の忘年会
8
しおりを挟む
「酔い潰れて名前を呼んじゃうくらい好きなくせに認めようとしないのは、千尋じゃない」
私が、いつ、比呂の名前を――。
思い当たるのは、比呂の奥さんが訪ねてきた後、あきらの部屋で飲んだ時しかない。缶ビール四本程度で寝てしまった。
「聞き間違いじゃない?」
私はバカにするように鼻で笑った。
「っていうか、自分が素直になれないことに、私を巻き込まないでよ」
「千尋が自分のことを棚に上げて偉そうに――」
「ストップ! もうやめて!!」
麻衣の制止、ハッとした。
あきらも。
「何をムキになって張り合ってんのよ! あきらと千尋は相手も事情も違うんだし、どっちが悪いとか偉いとかないよ」
いつもほわーっとしている麻衣だけれど、急にしっかり者になったりする。そういう時、誰も何も言えなくなる。
「大事なのは後悔しないことでしょ? 龍也の気持ちは報われて欲しいけど、あきらが無理しても幸せじゃないんだし、千尋もそうだよ。『いい男だな』って気持ちは立派な好意だよ。誰彼構わないみたいな言い方しないで!」
自分のことでもないのに、涙ぐんで力説する麻衣を見ていたら、胸が熱くなった。
こんな私のことで、こんなにムキになってくれるなんて、嬉しすぎる。
そう思ったら、素直に言葉が出た。
「ごめん」
「ごめん」
それはあきらも同じだったようで、言葉がハモる。
「後悔しないこと、か」と、陸が呟く。
「確かにな」
「だな」と、大和。
「じゃあ、地球滅亡の時に麻衣が一緒に居たいのは?」
「え?」
「龍也はあきら、あきらは保留で、千尋は恋人、麻衣は?」
急に矛先が自分に向いて、麻衣が考え込む。
「年下彼氏?」と、陸が聞く。
「正直に言っていい?」
「ん」
「私は、みんなといたい」
「彼氏は?」
「あ! もちろん彼のことも考えたよ? けど、んー、まだ付き合いも短いし、そこまでは……っていうか、真っ先に浮かんだのはみんなだったっていうか……」
「麻衣って、夢見がちかと思えば、実は誰よりも現実主義だよね」
だから、ダメ男に引っ掛かるのが不思議だった。
いや、ある意味当然か。
ダメ男に甘えられて、自分が支えてあげなきゃ、みたいな母性本能を刺激されるのかもしれない。
「鶴本くん、もっと頑張んなきゃ、だな」と、龍也。
「ま、俺もだけど」
龍也に見つめられ、あきらがフイッと麻衣に視線を逃がす。
まったく、中学生の初恋か。
「陸は?」と、聞いた。
「大和とさなえは聞かなくてもわかってるし。陸は?」
「俺は――麻衣」
大口を開けてトマトとアボガドのブルスケッタを食べる麻衣に、みんなの視線が集まる。
「ん?」
「俺は、麻衣といる」
「ふへっ!?」
麻衣が両手で口を押えて、鼻から音を発した。
「みーんな相手がいるからな。麻衣が寂しくないように、俺が一緒に居てやるよ」
「はにっ、ふへはら――」
「何言ってんのか、わかんねー」
陸が大笑いする。
麻衣が頬を歪ませてブルスケッタを噛む。
「なに、上から目線で言ってんの! 私は寂しくなんか――」
「――俺は寂しいよ」と言ってビールを飲み干し、手を伸ばして私の前にあるボタンを押す。
「だから、一緒に居よう」
私が、いつ、比呂の名前を――。
思い当たるのは、比呂の奥さんが訪ねてきた後、あきらの部屋で飲んだ時しかない。缶ビール四本程度で寝てしまった。
「聞き間違いじゃない?」
私はバカにするように鼻で笑った。
「っていうか、自分が素直になれないことに、私を巻き込まないでよ」
「千尋が自分のことを棚に上げて偉そうに――」
「ストップ! もうやめて!!」
麻衣の制止、ハッとした。
あきらも。
「何をムキになって張り合ってんのよ! あきらと千尋は相手も事情も違うんだし、どっちが悪いとか偉いとかないよ」
いつもほわーっとしている麻衣だけれど、急にしっかり者になったりする。そういう時、誰も何も言えなくなる。
「大事なのは後悔しないことでしょ? 龍也の気持ちは報われて欲しいけど、あきらが無理しても幸せじゃないんだし、千尋もそうだよ。『いい男だな』って気持ちは立派な好意だよ。誰彼構わないみたいな言い方しないで!」
自分のことでもないのに、涙ぐんで力説する麻衣を見ていたら、胸が熱くなった。
こんな私のことで、こんなにムキになってくれるなんて、嬉しすぎる。
そう思ったら、素直に言葉が出た。
「ごめん」
「ごめん」
それはあきらも同じだったようで、言葉がハモる。
「後悔しないこと、か」と、陸が呟く。
「確かにな」
「だな」と、大和。
「じゃあ、地球滅亡の時に麻衣が一緒に居たいのは?」
「え?」
「龍也はあきら、あきらは保留で、千尋は恋人、麻衣は?」
急に矛先が自分に向いて、麻衣が考え込む。
「年下彼氏?」と、陸が聞く。
「正直に言っていい?」
「ん」
「私は、みんなといたい」
「彼氏は?」
「あ! もちろん彼のことも考えたよ? けど、んー、まだ付き合いも短いし、そこまでは……っていうか、真っ先に浮かんだのはみんなだったっていうか……」
「麻衣って、夢見がちかと思えば、実は誰よりも現実主義だよね」
だから、ダメ男に引っ掛かるのが不思議だった。
いや、ある意味当然か。
ダメ男に甘えられて、自分が支えてあげなきゃ、みたいな母性本能を刺激されるのかもしれない。
「鶴本くん、もっと頑張んなきゃ、だな」と、龍也。
「ま、俺もだけど」
龍也に見つめられ、あきらがフイッと麻衣に視線を逃がす。
まったく、中学生の初恋か。
「陸は?」と、聞いた。
「大和とさなえは聞かなくてもわかってるし。陸は?」
「俺は――麻衣」
大口を開けてトマトとアボガドのブルスケッタを食べる麻衣に、みんなの視線が集まる。
「ん?」
「俺は、麻衣といる」
「ふへっ!?」
麻衣が両手で口を押えて、鼻から音を発した。
「みーんな相手がいるからな。麻衣が寂しくないように、俺が一緒に居てやるよ」
「はにっ、ふへはら――」
「何言ってんのか、わかんねー」
陸が大笑いする。
麻衣が頬を歪ませてブルスケッタを噛む。
「なに、上から目線で言ってんの! 私は寂しくなんか――」
「――俺は寂しいよ」と言ってビールを飲み干し、手を伸ばして私の前にあるボタンを押す。
「だから、一緒に居よう」
0
あなたにおすすめの小説
ボクとセンセイの秘密
七町 優
恋愛
高校2年のボクと24歳のセンセイの秘密を描いたストーリーです。
タイトルで分かるとは思うのですが、恋愛ストーリーです。
一応登場人物たちのいる学校は関西という設定です。
なので関西弁での会話が多くなります。
ボクとセンセイの濃いような淡いような恋愛ストーリーをお楽しみください。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる