【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以

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11.波乱の忘年会

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「酔い潰れて名前を呼んじゃうくらい好きなくせに認めようとしないのは、千尋じゃない」



 私が、いつ、比呂の名前を――。



 思い当たるのは、比呂の奥さんが訪ねてきた後、あきらの部屋で飲んだ時しかない。缶ビール四本程度で寝てしまった。

「聞き間違いじゃない?」

 私はバカにするように鼻で笑った。

「っていうか、自分が素直になれないことに、私を巻き込まないでよ」

「千尋が自分のことを棚に上げて偉そうに――」

「ストップ! もうやめて!!」

 麻衣の制止、ハッとした。

 あきらも。

「何をムキになって張り合ってんのよ! あきらと千尋は相手も事情も違うんだし、どっちが悪いとか偉いとかないよ」

 いつもほわーっとしている麻衣だけれど、急にしっかり者になったりする。そういう時、誰も何も言えなくなる。

「大事なのは後悔しないことでしょ? 龍也の気持ちは報われて欲しいけど、あきらが無理しても幸せじゃないんだし、千尋もそうだよ。『いい男だな』って気持ちは立派な好意だよ。誰彼構わないみたいな言い方しないで!」

 自分のことでもないのに、涙ぐんで力説する麻衣を見ていたら、胸が熱くなった。

 こんな私のことで、こんなにムキになってくれるなんて、嬉しすぎる。

 そう思ったら、素直に言葉が出た。

「ごめん」

「ごめん」

 それはあきらも同じだったようで、言葉がハモる。

「後悔しないこと、か」と、陸が呟く。

「確かにな」

「だな」と、大和。

「じゃあ、地球滅亡の時に麻衣が一緒に居たいのは?」

「え?」

「龍也はあきら、あきらは保留で、千尋は恋人、麻衣は?」

 急に矛先が自分に向いて、麻衣が考え込む。

「年下彼氏?」と、陸が聞く。

「正直に言っていい?」

「ん」

「私は、みんなといたい」

「彼氏は?」

「あ! もちろん彼のことも考えたよ? けど、んー、まだ付き合いも短いし、そこまでは……っていうか、真っ先に浮かんだのはみんなだったっていうか……」

「麻衣って、夢見がちかと思えば、実は誰よりも現実主義だよね」

 だから、ダメ男に引っ掛かるのが不思議だった。

 いや、ある意味当然か。

 ダメ男に甘えられて、自分が支えてあげなきゃ、みたいな母性本能を刺激されるのかもしれない。

「鶴本くん、もっと頑張んなきゃ、だな」と、龍也。

「ま、俺もだけど」

 龍也に見つめられ、あきらがフイッと麻衣に視線を逃がす。



 まったく、中学生の初恋か。



「陸は?」と、聞いた。

「大和とさなえは聞かなくてもわかってるし。陸は?」

「俺は――麻衣」

 大口を開けてトマトとアボガドのブルスケッタを食べる麻衣に、みんなの視線が集まる。

「ん?」

「俺は、麻衣といる」

「ふへっ!?」

 麻衣が両手で口を押えて、鼻から音を発した。

「みーんな相手がいるからな。麻衣が寂しくないように、俺が一緒に居てやるよ」

「はにっ、ふへはら――」

「何言ってんのか、わかんねー」

 陸が大笑いする。

 麻衣が頬を歪ませてブルスケッタを噛む。

「なに、上から目線で言ってんの! 私は寂しくなんか――」

「――俺は寂しいよ」と言ってビールを飲み干し、手を伸ばして私の前にあるボタンを押す。

「だから、一緒に居よう」
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