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5.知らなかったでしょう?
3
「聞いて欲しかったの?」
ふふっと笑いながら、ぬるくなったコーヒーに口をつける。
「考えもしなかった」
「なにを?」
「お母さんがそんなことを気にするなんて」
「……?」
今度は夫がコーヒーをすする。
それから、頷くように小さく頭を下げた。
「ごめん」
「……なにが?」
「色々、無神経……だった」
「だから、なに――」
「――初めてのデートとか、プレゼントとか、その――」
ああ、なるほど。
「――色々、気が利かなくて……」
娘から聞いたのだろう。
自分が妻にとってハジメテの男だということを。
正確には、『お父さんてお母さんの初カレなんでしょ~』とか言われただけだろうが、必然的に辿り着く。
私は言わなかった。
煩わしいと思われたくなかったから。
元カノのようにお似合いにはなれなくても、せめて隣にいて恥ずかしくないよう、邪魔にならないように頑張った。
だが、今更だ。
十七年も一緒にいて、二人の子供までいるのに。
「十七年前のことなんて、憶えてないのが普通だよ」
「けど――」
「――和葉に呆れられた?」
「え……。あ、うん」
「男の子はどうしてるのかしらね、あの宿題」
由輝の時にあんな質問はされたことがない。
いや、宿題はあった。
由輝は確か――。
原稿用紙五行分の手紙だ。
産んで育ててくれた感謝と、お陰でこんなに大きくなりました、みたいな手紙。
男の子と女の子じゃ、こうも違うのね……。
「和葉も中学生か……」
なに、ということもなく言葉が漏れた。
「ちょっと……感傷的になってるのかもね」
子供の成長は嬉しい。
同時に、自分の老いを思い知らされる。
『私も年を取るはずよね~』というやつだ。
私が今、その時なのだろう。
子育てはまだまだ途中だけれど、手のかかる時期を終え、ふと自分に目を向けた時、自分を見ているはずなのに、夫と元カノが並ぶ姿に見えた。
あの頃、憧れていた元カノには遠く及ばない容姿、キャリア。
夫はさほど変わらないのに、私は随分変わってしまった。
それでも、子育てを理由に出来ていればまだ救われた。
けれど、もう、言い訳出来ない。
子供に手がかかるから自分のことは後回し、なんて言えるほど子供に手はかからない。
お金に余裕がないからなんて、毎日遅くまで働いている夫に言えるはずがない。
そうやって思いつく言い訳を消去法で少なくしていけば、何も残らなかった。
結局、甘えだ。
ふふっと笑いながら、ぬるくなったコーヒーに口をつける。
「考えもしなかった」
「なにを?」
「お母さんがそんなことを気にするなんて」
「……?」
今度は夫がコーヒーをすする。
それから、頷くように小さく頭を下げた。
「ごめん」
「……なにが?」
「色々、無神経……だった」
「だから、なに――」
「――初めてのデートとか、プレゼントとか、その――」
ああ、なるほど。
「――色々、気が利かなくて……」
娘から聞いたのだろう。
自分が妻にとってハジメテの男だということを。
正確には、『お父さんてお母さんの初カレなんでしょ~』とか言われただけだろうが、必然的に辿り着く。
私は言わなかった。
煩わしいと思われたくなかったから。
元カノのようにお似合いにはなれなくても、せめて隣にいて恥ずかしくないよう、邪魔にならないように頑張った。
だが、今更だ。
十七年も一緒にいて、二人の子供までいるのに。
「十七年前のことなんて、憶えてないのが普通だよ」
「けど――」
「――和葉に呆れられた?」
「え……。あ、うん」
「男の子はどうしてるのかしらね、あの宿題」
由輝の時にあんな質問はされたことがない。
いや、宿題はあった。
由輝は確か――。
原稿用紙五行分の手紙だ。
産んで育ててくれた感謝と、お陰でこんなに大きくなりました、みたいな手紙。
男の子と女の子じゃ、こうも違うのね……。
「和葉も中学生か……」
なに、ということもなく言葉が漏れた。
「ちょっと……感傷的になってるのかもね」
子供の成長は嬉しい。
同時に、自分の老いを思い知らされる。
『私も年を取るはずよね~』というやつだ。
私が今、その時なのだろう。
子育てはまだまだ途中だけれど、手のかかる時期を終え、ふと自分に目を向けた時、自分を見ているはずなのに、夫と元カノが並ぶ姿に見えた。
あの頃、憧れていた元カノには遠く及ばない容姿、キャリア。
夫はさほど変わらないのに、私は随分変わってしまった。
それでも、子育てを理由に出来ていればまだ救われた。
けれど、もう、言い訳出来ない。
子供に手がかかるから自分のことは後回し、なんて言えるほど子供に手はかからない。
お金に余裕がないからなんて、毎日遅くまで働いている夫に言えるはずがない。
そうやって思いつく言い訳を消去法で少なくしていけば、何も残らなかった。
結局、甘えだ。
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