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第3章
3.ハリスの想い。
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side ハリス・カーマイン宰相閣下
転移したのは、執務室。
「さて、どーするか。」
ドンドンとドアを叩く音が室内に響く。
ドアをノックするのは、アイツだろう。朝方、振り切って置いてきたんだから。
「──ユアンか?」
「はい。カーマイン宰相閣下。入室許可を頂きたく。」
「構わない。」
怒っているか?呆れているか?ユアンを振り回すのも面白いな。
ドアの鍵を魔法で解除する。
「閣下。失礼致します。」
姿勢良く真っ直ぐと俺の前にやって来た。
笑ったら、駄目だな。
「は、何か言いたげだな。文句か?」
「当たり前です。私を置いて2人でとっとと転移して!見られたらどうするんですか?しかも、わざわざ抱きしめて。手を繋ぐとか、衣服を握る程度の接触でも転移は出来ましたよね?」
「そこは、ほら。可愛い弟子に触らないと、ね。」
「子供を捕まえて何やってくれるんですか?仮にも王国の宰相様でしょうが!」
「見た目は似ているが、中身が違うんだよ。レイリアは中身まで可愛いから。」
「それは、サフィア様が弟子の貴方に厳しかっただけでしょう。」
厳しいとかのレベルじゃない。
「俺の師匠は、有無も言わさず転移陣に放り込む人だよ?
転移魔法より強制的な転移陣で感覚を慣らせば、楽勝とか言い出したんだ。
『時間が無いから強制転移ゾクゾクを覚えてよ。』とか口調は優しいが、魔獣のいる森とかに転移させるわ。こっちは魔力が枯渇しそうなのに魔獣相手に魔法無双させられてヤバかった。何度死ぬと思ったことか。」
「あの、方がですか?」
その顔は何だよ。お前も一度やってやろうか?
「飛ばしてやろか?」
首をぶんぶん振るな。
「あの綺麗な顔に騙されるよね。
──『死にたく無かったら、必死になるでしょう?急激に魔法が上手くなるから、楽しいんだよね?』なんて、そりゃもう、傾国の美人に微笑まれれば…逆らえない。俺、この人の為に頑張っちゃおうとか──若気のいたり、黒歴史だ。
変な回復薬を飲まされるし。今でこそ改良したが、当時はリバースものだったんだ。何度も飲まされて…。
あのえげつない魔法書もしかり。暗記して来いって言うんだ…ありえない。」
「あ、ああ。
そいえば、一時期、目の下の隈が酷かった。魔力が異常に増えてましたよね?そのせいで興奮して眠れぬ夜を1人で慰めているのかと。」
そう言う誤解していたのか。そう視線を投げかけると、すまんっと頭を下げて来た。
「本当に全部、レイリアに継がせる為だ。死ぬのを覚悟していたサフィア様に叩き込まれた。俺なら出来るとか。未来視で2人が笑ってたとか。必ず師弟になれるって。こんな可愛い子と触れ合えるよーとかなんとか…」
うわーって顔するなよ。
「ははっ。惚れた弱みか?結構、好きだったろうサフィア様の事。」
「──憧れてたのは確かだ。残される人達への想いの強さを、叶えてあげたいって思っただけかも知れない。
それでも、あんな師弟関係は嫌なんだよ。
1人で全部背負って死を覚悟するとかさ。
そんなんじゃなくて、一緒に生きること探すべきだったんだ。親だから犠牲になる事を選ぶんじゃ無くて。
事実を知った時のレイリアの気持ちに、もっと側で寄り添ってやれる事があったはずなんだ。
あんなに優しく育ったレイリアが、平気な訳ないだろう。サフィア様の犠牲の元に生きている事、喜ぶと思うか?」
「それは、まあ。喜ばないだろうな。」
ほら、お前だってレイリアの泣き顔見たくないだろうが。
「サフィア様の才能を受け継ぐだけじゃなく、直接血も取り込んだ。なら、未来視と過去視は必ずレイリアに現れる。頼まれた通りに過去視の実も飲ませた。
もう、呼水として発動している。全てその通りに進んでいる。それは本当にレイリアの為なのか?そこにレイリアの気持ちはないだろう?」
「だったら、どうするんだ?サフィア様は、未来視によって行動を起こしたんだろ?」
「全てを犠牲にしたサフィア様の願いは、とりあえず聞くけど。その後の対応は、俺のやり方でいくだけだ。」
「つまり、レイリア様の気持ちを優先していくと?」
「セドリックは、レイリアにかなり執着している。アルバートの婚約者の筆頭で良いくらいのレイリアを陛下もそのままにしたのは、2人が婚約するのだと思わせるものだ。だが、レイリアは逃げたいのだろう。理由は、未来視によるものか分からない。」
「結局、お前は…サフィア様の気持ちもレイリア様の気持ちも護ってやりたいんだな。」
ああ、そうだよ。
どんなに、憧れたか。
あの人の為になりたかったか。
ジェイス様を想うあの人の側に居られる事が、どれだけ幸せだったか。
あの人が護ったものを俺が護ってやりたいんだ。
転移したのは、執務室。
「さて、どーするか。」
ドンドンとドアを叩く音が室内に響く。
ドアをノックするのは、アイツだろう。朝方、振り切って置いてきたんだから。
「──ユアンか?」
「はい。カーマイン宰相閣下。入室許可を頂きたく。」
「構わない。」
怒っているか?呆れているか?ユアンを振り回すのも面白いな。
ドアの鍵を魔法で解除する。
「閣下。失礼致します。」
姿勢良く真っ直ぐと俺の前にやって来た。
笑ったら、駄目だな。
「は、何か言いたげだな。文句か?」
「当たり前です。私を置いて2人でとっとと転移して!見られたらどうするんですか?しかも、わざわざ抱きしめて。手を繋ぐとか、衣服を握る程度の接触でも転移は出来ましたよね?」
「そこは、ほら。可愛い弟子に触らないと、ね。」
「子供を捕まえて何やってくれるんですか?仮にも王国の宰相様でしょうが!」
「見た目は似ているが、中身が違うんだよ。レイリアは中身まで可愛いから。」
「それは、サフィア様が弟子の貴方に厳しかっただけでしょう。」
厳しいとかのレベルじゃない。
「俺の師匠は、有無も言わさず転移陣に放り込む人だよ?
転移魔法より強制的な転移陣で感覚を慣らせば、楽勝とか言い出したんだ。
『時間が無いから強制転移ゾクゾクを覚えてよ。』とか口調は優しいが、魔獣のいる森とかに転移させるわ。こっちは魔力が枯渇しそうなのに魔獣相手に魔法無双させられてヤバかった。何度死ぬと思ったことか。」
「あの、方がですか?」
その顔は何だよ。お前も一度やってやろうか?
「飛ばしてやろか?」
首をぶんぶん振るな。
「あの綺麗な顔に騙されるよね。
──『死にたく無かったら、必死になるでしょう?急激に魔法が上手くなるから、楽しいんだよね?』なんて、そりゃもう、傾国の美人に微笑まれれば…逆らえない。俺、この人の為に頑張っちゃおうとか──若気のいたり、黒歴史だ。
変な回復薬を飲まされるし。今でこそ改良したが、当時はリバースものだったんだ。何度も飲まされて…。
あのえげつない魔法書もしかり。暗記して来いって言うんだ…ありえない。」
「あ、ああ。
そいえば、一時期、目の下の隈が酷かった。魔力が異常に増えてましたよね?そのせいで興奮して眠れぬ夜を1人で慰めているのかと。」
そう言う誤解していたのか。そう視線を投げかけると、すまんっと頭を下げて来た。
「本当に全部、レイリアに継がせる為だ。死ぬのを覚悟していたサフィア様に叩き込まれた。俺なら出来るとか。未来視で2人が笑ってたとか。必ず師弟になれるって。こんな可愛い子と触れ合えるよーとかなんとか…」
うわーって顔するなよ。
「ははっ。惚れた弱みか?結構、好きだったろうサフィア様の事。」
「──憧れてたのは確かだ。残される人達への想いの強さを、叶えてあげたいって思っただけかも知れない。
それでも、あんな師弟関係は嫌なんだよ。
1人で全部背負って死を覚悟するとかさ。
そんなんじゃなくて、一緒に生きること探すべきだったんだ。親だから犠牲になる事を選ぶんじゃ無くて。
事実を知った時のレイリアの気持ちに、もっと側で寄り添ってやれる事があったはずなんだ。
あんなに優しく育ったレイリアが、平気な訳ないだろう。サフィア様の犠牲の元に生きている事、喜ぶと思うか?」
「それは、まあ。喜ばないだろうな。」
ほら、お前だってレイリアの泣き顔見たくないだろうが。
「サフィア様の才能を受け継ぐだけじゃなく、直接血も取り込んだ。なら、未来視と過去視は必ずレイリアに現れる。頼まれた通りに過去視の実も飲ませた。
もう、呼水として発動している。全てその通りに進んでいる。それは本当にレイリアの為なのか?そこにレイリアの気持ちはないだろう?」
「だったら、どうするんだ?サフィア様は、未来視によって行動を起こしたんだろ?」
「全てを犠牲にしたサフィア様の願いは、とりあえず聞くけど。その後の対応は、俺のやり方でいくだけだ。」
「つまり、レイリア様の気持ちを優先していくと?」
「セドリックは、レイリアにかなり執着している。アルバートの婚約者の筆頭で良いくらいのレイリアを陛下もそのままにしたのは、2人が婚約するのだと思わせるものだ。だが、レイリアは逃げたいのだろう。理由は、未来視によるものか分からない。」
「結局、お前は…サフィア様の気持ちもレイリア様の気持ちも護ってやりたいんだな。」
ああ、そうだよ。
どんなに、憧れたか。
あの人の為になりたかったか。
ジェイス様を想うあの人の側に居られる事が、どれだけ幸せだったか。
あの人が護ったものを俺が護ってやりたいんだ。
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