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8.ジェイドの捜索③
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「とにかく、ジェイドを探す方法を考えて欲しい」
その言葉に、もう一度召喚したらと言った。
驚くしかない。
大勢の魔力が、必要だったのを見てしまったんだ。仲間が巻き込まれた。ジェイドを呼んだら、今度は誰かが犠牲になるかもしれない。
(そんな、簡単に言うなよ)
宰相や神官長が顔を見合わせて考えているみたいだった。
「聖女様。召喚にはリスクが伴います。魔法師達の魔力が整ってからじゃないと途中で、召喚の儀式が保てなくなり、魔法師たちの命に関わりかねません。彼らも大切なんです」
宰相は、言いにくそうだった。
「整うのは、いつですか? いつもでも待っていたらジェイド様が戻って来れる可能性を失うかもしれません。よろしいのですか?」
面々の表情は暗い。皆分かっているのに。簡単に命を差し出せとか言うな。
「確かに」
「可能性で言えばそうだが……」
「だが、魔物が来たら」
それぞれが思うことを述べ始めた。
「私のいた世界は、魔物はいません。まあ、犯罪者はいるので……その場合は捕まえて下さい」
今度はジェイドが、聖女と入れ替わりになったとしたら? この世界を救う人がいなくなるのに。
また誰かが、消えてしまうかも知れないとか……思わないのかな。
結がいなくなって、今度はジェイドがいなくなってる。でも聖女だってなんで?って呟いてたってことは、イレギュラーが起きてるのかも知れない。
もし話が変わってきているのなら、来瀬古書店で、結と俺が関わったから?
それに、彼女も古書店に行ってたとしたら……何かの巡り合わせなのかも知れない。そこはあくまでも想像にすぎないけど。
「聖女様がそう言うのであれば、魔法師たちに十分な休息を。魔法師長、神官長、儀式に必要な物の確認をしたい。アレがどれだけ必要か、今後の問題もあるので」
何が問題になるかは、分からない。簡単な事ではないみたいだ。
それに、いずれ聖女を元の世界へ戻したいのだ。聖女と入れ違いに消えたジェイドを呼び戻せれば、その可能性が見えてくる気がする。多分年齢的に合う人を、聖女の相手に考えてるみたいだ。
でも、彼らは聖女の伴侶になる事を嫌がってた。 弟王子には、婚約者がいた。何かあるのかな?
そして彼らは、ジェイドを奪還すべく二度目の召喚を実行したんだ。
ジェイドは一体誰に呼ばれたのか?あの時の優しい表情が忘れられない。
時々、ふと視線が合った時の優しい笑顔。本当に結じゃないの?
最初の召喚より手際がいい様に思う。探る場所がピンポイントだ。彼と言う目印があるからかもしれない。
糸を手繰り寄せてる、そんな印象。ジェイドの気配を読み取るのは、聖女様の時より早かった。
魔力を極力使わないように出来てるみたいだ。
そして、現れたジェイドの服は、結の服に似ている気がする。量販店の物だから、結だけが着ていた訳じゃないけど。聖女のいた世界に、本当に彼はいたのだ。
歓声があがった。ジェイド自身が聖女の世界に行っていたなら、彼女を元の場所へ戻すことだって出来るはずだ。希望はある。
皆が駆け寄った。倒れていたジェイドを魔法騎士の一人が支え起こした。
エドワード王子も側に来て膝をおり、目線をジェイドに合わせた。
聖女と神官長も近付いてきた。
「エドワード様。ジェイド様で間違い無いですか?綺麗な髪色ですね。日本人はこの色はいないです」
聖女が手を伸ばし、ジェイドの髪に触れようとした瞬間──
バシン!っと音が響いた。
「いたっ」
濃紺の双眸が反応し目が開いた途端に、聖女の手を払いのけた。
「──誰?俺に触って良いのは……」
ジェイドは少し俯いて、掌で口元を押さえて黙ってしまう。
「ジェイド? 大丈夫か? 召喚で取り戻したんだが……治癒師を呼んですぐにジェイドの体調を確認して……」
なんとなく、肩を揺すられて意識が浮上して行く。
もう少しだけ……そう思ってたのに、
「琥珀くん」来瀬さんの声だ。
だんだん、この景色が薄れて行く。
何か、ジェイドが言ったのにその声は結局聞こえない。本を一度閉じる。また続きを読めばいいか。
ジェイドが言った、その言葉を知るのはずっと先だった。
その言葉に、もう一度召喚したらと言った。
驚くしかない。
大勢の魔力が、必要だったのを見てしまったんだ。仲間が巻き込まれた。ジェイドを呼んだら、今度は誰かが犠牲になるかもしれない。
(そんな、簡単に言うなよ)
宰相や神官長が顔を見合わせて考えているみたいだった。
「聖女様。召喚にはリスクが伴います。魔法師達の魔力が整ってからじゃないと途中で、召喚の儀式が保てなくなり、魔法師たちの命に関わりかねません。彼らも大切なんです」
宰相は、言いにくそうだった。
「整うのは、いつですか? いつもでも待っていたらジェイド様が戻って来れる可能性を失うかもしれません。よろしいのですか?」
面々の表情は暗い。皆分かっているのに。簡単に命を差し出せとか言うな。
「確かに」
「可能性で言えばそうだが……」
「だが、魔物が来たら」
それぞれが思うことを述べ始めた。
「私のいた世界は、魔物はいません。まあ、犯罪者はいるので……その場合は捕まえて下さい」
今度はジェイドが、聖女と入れ替わりになったとしたら? この世界を救う人がいなくなるのに。
また誰かが、消えてしまうかも知れないとか……思わないのかな。
結がいなくなって、今度はジェイドがいなくなってる。でも聖女だってなんで?って呟いてたってことは、イレギュラーが起きてるのかも知れない。
もし話が変わってきているのなら、来瀬古書店で、結と俺が関わったから?
それに、彼女も古書店に行ってたとしたら……何かの巡り合わせなのかも知れない。そこはあくまでも想像にすぎないけど。
「聖女様がそう言うのであれば、魔法師たちに十分な休息を。魔法師長、神官長、儀式に必要な物の確認をしたい。アレがどれだけ必要か、今後の問題もあるので」
何が問題になるかは、分からない。簡単な事ではないみたいだ。
それに、いずれ聖女を元の世界へ戻したいのだ。聖女と入れ違いに消えたジェイドを呼び戻せれば、その可能性が見えてくる気がする。多分年齢的に合う人を、聖女の相手に考えてるみたいだ。
でも、彼らは聖女の伴侶になる事を嫌がってた。 弟王子には、婚約者がいた。何かあるのかな?
そして彼らは、ジェイドを奪還すべく二度目の召喚を実行したんだ。
ジェイドは一体誰に呼ばれたのか?あの時の優しい表情が忘れられない。
時々、ふと視線が合った時の優しい笑顔。本当に結じゃないの?
最初の召喚より手際がいい様に思う。探る場所がピンポイントだ。彼と言う目印があるからかもしれない。
糸を手繰り寄せてる、そんな印象。ジェイドの気配を読み取るのは、聖女様の時より早かった。
魔力を極力使わないように出来てるみたいだ。
そして、現れたジェイドの服は、結の服に似ている気がする。量販店の物だから、結だけが着ていた訳じゃないけど。聖女のいた世界に、本当に彼はいたのだ。
歓声があがった。ジェイド自身が聖女の世界に行っていたなら、彼女を元の場所へ戻すことだって出来るはずだ。希望はある。
皆が駆け寄った。倒れていたジェイドを魔法騎士の一人が支え起こした。
エドワード王子も側に来て膝をおり、目線をジェイドに合わせた。
聖女と神官長も近付いてきた。
「エドワード様。ジェイド様で間違い無いですか?綺麗な髪色ですね。日本人はこの色はいないです」
聖女が手を伸ばし、ジェイドの髪に触れようとした瞬間──
バシン!っと音が響いた。
「いたっ」
濃紺の双眸が反応し目が開いた途端に、聖女の手を払いのけた。
「──誰?俺に触って良いのは……」
ジェイドは少し俯いて、掌で口元を押さえて黙ってしまう。
「ジェイド? 大丈夫か? 召喚で取り戻したんだが……治癒師を呼んですぐにジェイドの体調を確認して……」
なんとなく、肩を揺すられて意識が浮上して行く。
もう少しだけ……そう思ってたのに、
「琥珀くん」来瀬さんの声だ。
だんだん、この景色が薄れて行く。
何か、ジェイドが言ったのにその声は結局聞こえない。本を一度閉じる。また続きを読めばいいか。
ジェイドが言った、その言葉を知るのはずっと先だった。
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