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隣国の王子
101:加護と魅了・1
しおりを挟むルイと義兄と俺の
話し合いは、まとめると。
互いの今の状態を
軽く自己紹介っぽく説明して
今後の互いの関係性の確認と。
あとは俺の加護と
紫の瞳の魔力を一緒に調べよう、
と約束して終わった。
と言っても、
紫の瞳の魔力に関しては
ルイがずっと調べていて
わからなったのに
すぐにわかるとは思えない。
ただ、隣国の書物と
この国の書物では
書かれていることが
違うだろうし、
俺はなにせ紫の瞳の当事者だ。
何か本人にしか
わからないことが
あるかもしれない、と
ルイが言うので俺は日常で
気になったことを
日記のように書き留める約束をした。
俺はもともと、暇な時に
いろんな考察をノートに
書いていたから、
その流れで書けば負担にならないと思う。
そんな話をして俺たちは
話を終えた。
あとルイからは、
あまり頻繁に
やりとりすると
ティスたち俺の国側の
人間の対応が面倒なので
今後は使い魔を俺の部屋に
行かせて話をするように
するから、部屋に入れてやってくれ、
というような話もあった。
俺としては問題ないし、
大歓迎だ。
義兄もその意見には賛成し、
自分がタウンハウスに
いる時は、同席するから
必ず呼ぶように、と
約束させられる。
義兄も使い魔に興味が
あるのだろう。
かなりの圧で約束させられたしな。
そうして部屋を出て、
ルイは王宮に与えられていると言う
客間へと向かい、
俺と義兄は馬車へと向かう。
義兄はこのまま一緒に
帰宅できるらしい。
馬車まで行くと
「アキ!」と声がした。
振り返ると
ティスが凄いスピードで
走ってくるのが見える。
俺は馬車に乗るのをやめて
ティスが来るのを待った。
「ティス、どうしたの?」
ティスは息を切らして
額には汗を浮かべていた。
「アキが帰るって報告が来たから」
わざわざ見送りに来てくれたのか?
ほんと、いいやつだな。
「ありがとう。
次は、ゆっくりおしゃべりしよう?」
俺がそう言うと、
ティスは俺の両手を取り
ぎゅっと握る。
「絶対。絶対に次は
ゆっくり二人でお茶しようね」
そう言われ、
俺は笑って頷いた。
ティスも王子ということで
権力が付き纏い、
俺と一緒で友だちが
いないからな。
そんな俺に、ルイと言う
友だちがいきなりできたら
そりゃ、不安にもなるだろう。
一人しかいない友達が
離れて行くような気持に
なってしまたのかもしれない。
だから俺はティスの手を
握り返した。
大丈夫だ。
俺たちの友情は絶対だからな。
「次に会う時は
ちゃんとクマさん、
持ってくるからね」
俺が言うとティスは
嬉しそうな顔をした。
クマ、見たがってたもんな。
俺はティスから手を離し、
代わりにティスの頭を撫でた。
子どもをあやす感じになったけど、
俺に縋るようなティスが
可愛く思えたし、
友情はずっと続いているぞ、と
安心させたかったのだ。
「明日は学園に来る?」
俺が聞くと
「……頑張って調整する」
とティスの声は低い。
明日も魔法学の授業があるのだが
これは無理そうだな。
「そう、学園に来れたら
また一緒に魔法学の授業を
受けようね」
俺はそう言って馬車を見た。
御者が頷いて馬車の扉を開けてくれる。
それにしてもティスは
学園に行かなくても
いつもテストの点数は
上位にいるみたいだし、
凄いよな。
学園に行って、
家庭教師もいて、
王子の仕事もしているなんて、
俺は働き過ぎのティスが
心配になってくる。
俺はもう一度ティスの頭を
なでなでして、
「体を壊さないように気を付けて」
と言って、馬車に乗り込んだ。
俺の後にすぐ義兄が
乗り込んで馬車の扉がしまる。
馬車が出発しても
俺は窓を開けてティスに
手を振った。
だってティスがいつまでも
俺の馬車を見てるから。
そんな俺を義兄は見つめ
「無自覚にやってるんだよな」
と小さくため息を付く。
俺はやっぱり意味が分からない。
俺が手を振るのをやめて
義兄を見ると、
義兄は苦笑したが
何も言わなかった。
しばらくすると、
馬車はタウンハウスに着く。
正直、俺は
めちゃくちゃ疲れてた。
色んなことが一気にあったし、
そもそも俺は寝てる時に
叩き起こされて王宮に行ったのだし。
そしてルイと義兄と
話をしたときは、疲れを忘れて
テンションがあがったこともあり。
そして最後は、テンションが
ダダ下がりのこともあり。
体力的なことだけでなく
精神的にも俺は
めちゃくちゃ疲れている。
だがこの後、俺は父と
夕飯を食べねばならない。
そういう約束したからな。
せめて夕飯までは
ゆっくり部屋で休みたい。
と、思っていたのだが。
義兄は俺を部屋の前まで送ると
「兄貴、もう少し
一緒にいてもいい?」
と小声て聞いてくる。
疲れていたけれど。
でも弱っているような
義兄の声に、
俺は拒否などできない。
どうした?
ルイの出現で
急に不安になったか?
俺は義兄の兄だからな。
弱っている弟を邪険にはしないし、
できない。
俺は兄の顔をして
義兄を見る。
「いいよ」
と答えると義兄は
嬉しそうな顔をした。
どうしたのか、と
俺は義兄を見つつ考えた。
義兄の不安そうな顔に、
さっき別れたばかりの
ティスの顔が重なって見える。
そうか。
義兄は急に
同じ前世の記憶を
持っているルイと会って
混乱してる、というか
俺たちだけの『前世の記憶』という
二人だけの秘密みたいなのが
二人だけでなくなったから
寂しく思ったのかもしれない。
それか、ついルイと
前世の会社の話ばかり
してしまったから、
疎外感を感じたとか。
父はいまだに子どもだが、
義兄も時折、
俺の弟になるからな。
ここは頑張って兄として
フォローしておくか。
俺は疲れを隠して
義弟を部屋に招き入れる。
「お茶の準備をしてもらう?」
俺が聞くと、義兄は首を振った。
「さっき飲んだからな」
「そうだね」
俺もクッキーを沢山食べたから
お腹いっぱいだ。
夕飯、ちゃんと食べれるだろうか。
義兄は慣れた調子で
俺のベットに座った。
俺も自分のデスクの椅子に座る。
「なぁ、兄貴。
大丈夫?」
義兄が俺を見ながら言う。
大丈夫じゃないのは、
お前だろ?
俺はそう言いたくて
義兄を見つめ返した。
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ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
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