278 / 308
愛溢れる世界
228:お茶会準備
しおりを挟む俺は義兄と話した後、
後から帰宅したルイと一緒に
夕食を一緒に食べ、
ゲストハウスで
ティスとのことを白状した。
ルイは驚いた顔をしたが、
「そうか、とうとう……」
と言葉を漏らし、
何故か父親目線で
話をしてきた。
なんか、見守られてたとか?
やめろよ、
親友に恋の行方を
見られてたなんて
恥ずかしすぎるだろ。
でもルイなら絶対に
ニヤニヤした顔で
俺をからかってくると思ったのに。
そんなことは全然なかった。
それこそ、一緒に
父をどう攻略するかを
考えてくれると言う。
しかも
「まぁ、大丈夫だろ。
少し前だけど
言質はとってるし」
と意味不明なことまでいう。
でも俺は前世からルイに
「大丈夫だろ」と言われると
妙に大丈夫かと思ってしまう。
それぐらいルイの能力は
凄いと思ってるから、
変に焦ったりするのは
やめようと思えるようになった。
その代わり、夜寝る前に
ティスが俺に近づいてきた時の
綺麗な顔や、長いまつげや、
唇に感じた熱とか、
そういうのを思い出して
クマを抱き込み、
ベットの上で悶えてしまった。
翌日の朝、目が覚めると
すでに義兄もルイもいなかった。
学校が休みになったので
のんびりしすぎたようだ。
キールに手伝ってもらって
着替えを済ませると
執事のキリアスが
俺の部屋に手紙を持って
部屋に来た。
俺がイスに座ると
すかさずサリーが
手紙を受け取り、
ペーパーナイフを俺に
差し出してくる。
俺はそれを受け取って
手紙を裏返した。
王印が押されていて、
ティスの名前が書いてある。
「ティスから?
手紙なんて珍しい」
というか、
何も無いのに手紙だなんて
初めてじゃないか?
俺が体調を崩した時は
見舞いのカードを貰ったりはしたが、
それ以外は、ほぼ毎日、
とまではいわないが、
かなりの頻度で会っている。
わざわざ手紙を送ってくるなんて。
そう思って開封すると、
招待状が出て来た。
「お茶会の招待状?」
これまた、珍しい。
だって俺とティスは
しょっちゅう会って
お茶会? みたいなことをしている。
なのに、わざわざ
招待状を送ってくるなんて。
俺は首を傾げたが
日付は三日後だった。
「王家の茶会でしたら
きちんとした服装で
出向かねばなりませんね」
なんてキリアスは言うが
ティスとの茶会だぞ?
と言いたくなる。
だが俺がそれを言う前に
キリアスが俺を見た。
「領地にも同じものを届けたと
王家の使者が言っておりました」
え?
は?
なんで?
ティス、俺と父とお茶を飲む気か?
そう思い、
まさか昨日のことか!?
と冷たい汗が出た。
俺、まだ何も作戦をたててないのに。
いや、それよりもティス、
正面突破する気か?
父相手に?
どうしよう。
でもティスが何を考えているのか
わからないのに俺が勝手に
動くのもはばかられる。
「お返事はいかがいたしましょうか」
キリアスが言うので
もちろん行くつもりだが
返事を書く必要があるのかと聞くと、
王家の使者が俺の返事を聞くために
まだタウンハウスにいると言う。
本気か。
俺が寝坊したために
随分と待たせてしまったかもしれない。
というか、そう言う時は
起こしてくれよ。
変に公爵家は
俺ファーストになるから心配だ。
なにせ魔法の呪文があるからな。
何があっても
『アキルティア様のお望みのままに』
の一言ですべてを解決してしまう
魔法の言葉だ。
俺はキリアスに、
お茶会には行くと返事をして
使者の対応を任せる。
キリアスが出て行くと、
サリーが頭を下げて俺を見た。
「それでは3日後のために
領地にお戻りになられるのは
いかがでしょうか」
「は?」
「準備がありますので」
なんの?
ティスとお茶を飲むだけなのに?
俺は首を傾げてしまうが
キールは「では準備を致します」と
俺が返事をする前に
俺のベットからクマを取り上げた。
「アキルティア様はこちらを」
クマを持たされ、
俺は、なんで?と思いつつ
朝食も食べずに馬車に乗せられた。
キリアスがうやうやしく
俺を玄関で見送り、
馬車にキールとサリーが一緒に乗る。
「え? なんで?」
とようやく出せたのは
馬車が出発してからだった。
「えっと、兄様とルイに」
「お二人にはすでに
連絡をしております」
さすが公爵家。
動きが早い。
じゃなくて。
「サリー、なんで領地なの?」
「3日後でしたら
アキルティア様のお洋服を
仕立てることはできませんので。
ただし、領地のお屋敷には
アキルティア様の衣装部屋が
新しく追加され、
奥様や旦那様が日々、
その部屋を充実させていると
聞いております。
今回はその中から
良いものをお選びいたしましょう」
は?
俺は聞いてないけど?
というか、なんだ、その衣裳部屋って。
「僕は何も聞いてないよ?」
「はい。奥様も旦那様も、
アキルティア様がご自身の
お召し物にあまりご興味をお持ちで
ないことには気が付かれておりましたので。
必要になった時に使えば良いと、
日ごろから、アキルティア様の
お洋服を仕立てていらしたようです」
だから俺が知らない服が
たまにクローゼットに入ってたのか。
しかもそれじゃ間に合わないぐらい
大量の服を父が買ってたってことか。
いや、母もか。
部屋を一つ作るぐらい、
俺の知らない服があるんだな?
ちょっと遠い目をしてしまう。
俺は着れたらなんでも構わないので
もちろん、買ってくれるのは嬉しい。
元々、前世の記憶もあり
貧乏性だから、高位貴族が
大量にお金を使うことで
経済を回しているのことも知っているが
自分が使うのは、正直、気が引ける。
だから、自分が知らないところで
大量の服を購入されていたり、
もしかしたら着る機会もなく
サイズアウトしてしまって
破棄になった服もあるのではないかと思うと
心苦しくも思う。
だがサリーはそんな俺の考えを
読んだかのように、
俺が着れなくなった服は
孤児院や教会へ寄付したり
教会のバザーに出してそのお金を
そのまま寄付に回したりと
社会貢献に役立てているので
問題はないと教えてくれた。
なるほど。
でも俺の服って、
やたらとレースがついてたり
ふりふりしてたりすることが
多いんだが、大丈夫だろうか。
貴族ってのはそんなものかと
思っていたが、ティスも
義兄もそんな服を着ているところは
見たことないしな。
ただサリーの話では
貴族から払い下げされた服は
ボタン1つでも高価なものが多いので
服に付いている装飾品はすべて外され
別々に販売されるらしい。
また服をそのまま売ることもあれば
そういった服の生地は
高級品なので、別物にリメイクして
販売することもあらしい。
そう言う意味では
俺の服はかなり役立ってる違いない。
レースだらけで、ふりふり、
キラキラしてるもんな、うん。
俺が納得したあたりで馬車が止まる。
馬車の扉が開くと
なんと、母が直々に出迎えてくれた。
「母様!」
俺が先に下りたキールの手を借り
馬車を下りると、
すぐに母が目に入る。
俺は母に駆け寄った。
「おかえりなさい。
待ってたわ」
ん?
待ってた?
「招待状を貰ってすぐに
侍女たちに準備させたのよ」
なにを?
俺が何かを言う前に
母は言葉をかぶせるようにどんどん俺に話しかけてくる。
「お腹は空いていない?
朝ご飯は食べた?」
「いえ、まだ……」
「そう。
じゃあ摘まめるものを
何か用意させるわね」
摘まめるもの?
朝ご飯じゃなく?
俺の頭の中は疑問だらけだったが
さぁ、さぁ、と押しの強い
母に腕を取られて
俺は早足で領地の屋敷へと足を踏み入れた。
109
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【完結】婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる